
8月に南仏、アヴィニョンにしばらく滞在してきました。その際、プロヴァンス唯一の自然洞窟「トゥゾン洞窟(Grottes de Thouzon)」が近くにあると聞きつけ、張り切って出かけて来ました!
期待以上に美しかった、繊細な鍾乳石が連なる洞窟をご紹介します。
プロヴァンス唯一の自然洞窟
トゥゾン洞窟があるのは、フランス南部プロヴァンス地方のLe Thor(ル・トール)という街です。アヴィニョンからは、東方面へ約20km、30分弱のドライブです。
この洞窟が形成されたのは、地球上で恐竜が絶滅し、哺乳類が急速に進化し始めた古第三紀、約6千万年前だと考えられています。
トゥゾン洞窟が位置するトゥゾンの丘は、もともと石灰岩の山塊の一部でした。 この地域では、硬くて密度の高いウルゴニアン石灰岩が道路の基礎材として利用されており、この丘はそのための採石場として使われていたそうです。

洞窟は、1902年、石灰岩採掘中の爆発によって偶然発見されました。発見後すぐにその自然美を保つために洞窟が保護されたため、現在も人為的な損傷がほとんどない天然の鍾乳洞を見学することができるんだとか。
2025年の見学は、4月1日から11月2日の間、ガイドツアーに参加することで可能でした。早速、行ってみましょう!
「地底の宝石箱」はマカロニだらけ!
トゥゾン洞窟は、20世紀の半ばから観光地として一般公開されてきたこともあってか、カフェやお土産もの屋さんなどの施設も整っています。
ただ、ガイドツアーは、私の話せないフランス語のみ!英語で書かれた案内書を手渡されました。

内部に入ると……年間を通して気温は常に13C、湿度は98%に保たれていると言うだけあって、ひんやりと涼しいです。長さは約230メートル、というかなり大きな洞窟です。

進んでいく通路は、石灰岩を通って流れ込んだ水が集まり形成した地下河川の跡だそうです。
この鍾乳洞のおもしろいところは、「マカロニ」と呼ばれる鍾乳管がたくさんあること。
マカロニ型鍾乳石と聞いて、マカロニサラダやグラタンに入れるような小さい筒型の鍾乳石を想像したのですが、直径わずか約3mmで、長さが2mにも達することがあるという繊細な鍾乳石なんだとか。

水滴が鍾乳石の中心にある管の中を通って先端から落ちることで炭酸カルシウムが少しずつ沈殿し、細く伸びていくそうです。成長速度は、1cmにつき約100年といわれていて、この洞窟にある全長1.3メートルのマカロニ型鍾乳石は、約1万3千年かけて形成されたと推定されています。

もしこのマカロニの内部にある細い水の通り道が不純物で詰まってしまうと、水は内部ではなく外側を伝って流れるようになります。 するとマカロニの外側に石灰分が付着して太くなり、やがて通常の鍾乳石になってしまう。つまり、ほそーく、ながーく育ったマカロニがあるということは、外的な干渉が少なく、洞窟の保存状態が良いということなんですね。それでこの洞窟が「地底の宝石箱」と称されるようです。

確かに、洞窟の奥の方にある、繊細な鍾乳管で埋め尽くされた「マカロニの部屋」は圧巻です!
しかも、2024年からこの場所でライトショーが行われるようになりました。ここで人工的なショーって必要なの?と思っていましたが、これがなかなか美しく、大変乙なものでした。

マカロニ以外にも、地上から22メートルの天井を抜けて洞窟の中にまで伸びる木の根や今はもう住まないコウモリの糞の化石、わずか約10センチの石灰岩に支えられて石灰岩に支えられて宙吊りになっている250キロの火打石など……見所はたくさんあります。

約45分の「地底6千万年の旅」。ロマンですね。
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