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備長炭とはどんな炭?
備長炭のルーツを知れば、備長炭の品質の高さが分かります。まずは備長炭がどのような炭なのか、特徴や成り立ちを見ていきましょう。
ウバメガシから作られる高級な炭
備長炭は品質の高い炭として有名で、代表的な素材はウバメガシという木です。木炭は製造過程における消火方法の違いから黒炭と白炭に分けられ、備長炭は白炭に分類されます。
黒炭は窯を密閉して酸素を遮断することで消火し、白炭は水を含んだ消し灰をかぶせて空気を遮断し消火します。このとき、かぶせた灰によって見た目が白くなることから、白炭と呼ばれているのです。
備長炭は白炭の代表で、燃焼時間が長く火力が安定しているため料理に向いており、プロのシェフからも好まれています。
和歌山県の無形民俗文化財になっている
備長炭は和歌山県発祥といわれています。諸説はあるものの、江戸時代に紀伊国の商人・備中屋長左衛門(びっちゅうやちょうざえもん)がウバメガシから炭を作ったのが始まりとされます。
初めは地元だけで製造・流通していましたが、長左衛門が江戸に持ち込んだところ、炭を扱う職人を中心に大ヒットしました。1974年には和歌山県の無形民俗文化財に指定され、現在も昔とほとんど変わらない製法が継承されています。
備長炭の使い道
備長炭の使い道は、主に以下の通りです。
- 料理の燃料
- 消臭
- カルキの除去
- 湿度調節
火持ちがよく火力調整が簡単な備長炭は料理の燃料に適しており、飲食店で使われるのはもちろん、バーベキューでも活躍します。
備長炭には水道水のカルキや不純物を吸着して除く性質もあり、炊飯や水煮などに入れて調理すれば味がまろやかになります。
また、においの元となる物質を吸収する効果もあるので冷蔵庫・靴箱などの消臭剤にも利用でき、芳香剤の香りが苦手な人にもおすすめです。この機会に、備長炭を生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
奥深い職人技!備長炭の作り方
高級な炭として名高い備長炭は、どのようにして作られるのか見ていきます。備長炭の作り方を通して、江戸時代から伝わる熟練の職人技を紹介します。
伐採・木ごしらえ
まずはウバメガシの木の伐採から始まります。ウバメガシは山の急斜面に生えているケースも多く、木材を手頃なサイズに調節しながら伐採するのは、危険と隣り合わせの作業です。
木材を作業所に運搬した後は、加工しやすいように『木ごしらえ』と呼ばれる成形をします。太い原木をカットしたり、曲がっているものを真っすぐになるようにくさびを打ち込んだりする作業です。細い原木は束にして、窯に入れやすいように並べておきます。
窯詰め・口たき
原木を窯に詰めるのが『窯詰め』、加熱して水分を飛ばす作業が『口たき』です。原木は昔ながらの方法で立ててくべます。
窯詰めは窯を加熱した状態で行う上、水分を含んだ重い原木をくべなければならないため、これもまた重労働です。
口たきは、原木を蒸し焼きにして水分を飛ばす工程です。酸素の多い場所で燃やすと木材はただの灰になってしまいますが、蒸し焼きによって酸素が減った状態で加熱すると火が付かず、一酸化炭素などのガスが抜ける『炭化』が始まります。
炭作りでは炭化が始まったかどうかを煙の色やにおいで判断します。これは職人の経験と勘による部分が大きく、職人自身も言語化が難しいまさに熟練の領域です。
炭化
無事に原木が炭化し始めたら、最低限の空気を送る穴を残して釜の口を閉じてしまいます。炭化の進み具合も煙とにおいで判断し、状態によって釜の空気量を調節します。
ウバメガシの性質上、高温で炭化させると形が崩れてしまう恐れがあるため、1週間ほどかけてゆっくりと炭化を進めるのが特徴です。
口たきと炭化を合わせると約2週間かかります。炭化を待っている間は、次の原木の伐採や木ごしらえを進めて作業の効率化を図っています。
ネラシ・窯出し
炭化が進んだら『ネラシ』によって仕上げます。ネラシとは、原木を高温で熱して炭化していない部分の炭化を進め、炭素の含有率を高める作業です。ネラシに入る目安は、煙の色が無色に近づいたタイミングです。
空気を送る量を徐々に増やし、炭が真っ赤になるまで炭化させます。このときの温度は1,000℃を超えるケースもあり大変な作業です。
最後は窯から取り出し素灰をかけて消火しますが、この消火方法が白炭といわれるゆえんです。窯出しは、ネラシをくり返しながら仕上がった分を少しずつ取り出すため、12時間以上かかる場合もあり職人には体力が求められます。
キャンプやバーベキューにおすすめの備長炭
職人の過酷な作業の結晶である備長炭は、いつもの炭より少し奮発すれば手に入れられます。キャンプやバーベキューにおすすめの備長炭を紹介します。
朝内燃料「土佐備長炭 徳割」
ミシュランの料理人も使っているという、高知県産の備長炭です。素材の香りを余すことなく引き出し、上品で香ばしい焼き上がりが高い評価を得ています。高知県では若手の育成に注力しており、生産量が多い点から高品質な備長炭を低価格で提供しています。
太さ約3.5〜6cm、長さ約14~18cmと短めのため、焼き台のサイズによらず使いやすいのが特徴です。バーベキューのグリルはもちろん、七輪でも使えます。
- 商品名:朝内燃料「土佐備長炭 徳割」
- 公式サイト:商品はこちら
朝内燃料 土佐備長炭 徳割
12kg
豊栄「土佐備長炭」
約1,300℃で炭化した、火持ちのよい備長炭です。着火の難易度は少々高いものの、黒炭や火おこし器を使えばスムーズに着火できるでしょう。
サイズには大きめのバラと通常のバラの2種類あり、内容量も約2kg・5kg・12kgと用途に合わせて選びやすくなっています。使い終わった炭は『火消しつぼ』で消火すると、再利用ができるのでコストパフォーマンスにも優れています。
いきなり強い火力で着火すると爆ぜやすくなるので、徐々に熱していくのが安全に使うポイントです。
- 商品名:豊栄「土佐備長炭」
- 公式:商品はこちら
豊栄 土佐備長炭
短丸500g
杣人「BBQ用備長炭 中5kg」
本場和歌山県から直送のバーベキュー用備長炭です。成形時に出た切れ端など大きさが不ぞろいになっていますが、バーベキューにはぴったりのサイズ感です。コンロの大きさによらず、使いやすいでしょう。
バーベキュー用の備長炭は容量や大きさごとに細かくラインアップが分かれており、人数や使う器具によって選びやすいのもポイントです。
他にも炊飯用や浄水用、風呂用など、目的に合ったサイズと種類の備長炭が販売されています。生活に本場の備長炭を取り入れてみたい人にとってもうれしい商品です。
- 商品名:杣人「BBQ用備長炭 中5kg」
- 公式サイト:商品はこちら
杣人 BBQ用備長炭 中5kg
5kg
まとめ

備長炭は日本が誇る高級な炭であり、江戸時代の紀伊国(和歌山県)が発祥とされています。通常の黒炭と異なり、消し粉をかぶせて消火することから白炭と呼ばれており、火力が高く安定的なのが特徴です。
備長炭の製造工程は、体力と熟練職人の経験が求められる貴重な技術です。そんな備長炭は飲食店でも多く採用されており、バーベキューの燃料にも活躍します。水のカルキを取り除くので、飲料水に入れたり炊飯時に使ったりするとまろやかな味わいになります。
次のバーベキューでは備長炭を取り入れ、ワンランク上の料理を目指してみてはいかがでしょうか。