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    2018.12.02

    自然暮らし通信社・ババリーナwebちゃんねる

    新連載スタート! 暴走半島ナチュラルライフ

     ここは房総半島・海沿いの自然に囲まれた一軒家。8年前、私ことババリーナ裕子は、女友人と一緒に手作りでこの家を建てた。現在この場所でドタバタ七転八倒の自然暮らし中。ヘビに追われ、ムカデと戦い、カブトムシに襲撃され、それはスローライフとはほど遠い、暴走半島ナチュラルライフ。

     その暮らしぶりを、現地から配信いたします! 笑いあり感動あり、歌あり踊りあり動画ありライブあり。ババリーナwebちゃんねる、感度良好! 暴走しちゃうよ~ん、覚悟!

    女だけで棟上げ! ノコギリも扱えなかった私が、日々精進を重ね作った家。

    第一回(序章) 火のある暮らし

     我が家には「ペチカ」と呼ばれるロシア製の暖炉がある。友人たちと一個一個レンガを積み上げて作った手作り暖炉だ。シベリアを旅したとき、古式ペチカの構造を研究して設計図から作った。

    火床と前室がある構造で、一番下の空洞は薪の乾燥室。

     ペチカはレンガに蓄熱するタイプの暖炉。なので薪の火が消えても蓄熱温度で室内が暖かい。外気温マイナス1~2度Cで、室温約20度C。隙間だらけの家だけど、夜、薪を数本入れておくだけで朝までポカポカだ。

     さらに特筆すべきは、薪の量の少なさ。西洋の暖炉に比べ、4分の1の量ですむ超省エネ暖炉なのだ。

     暖をとるだけでなく料理や薫製、パンやピザも焼ける。家庭菜園で野菜を栽培し、収穫した野菜はペチカの余熱で乾燥させて保存食に。使った薪灰は天然クレンザーにしたり、家庭菜園の土作りに役立てる。

     この無駄がない、冬暮らしのデザイン。出会ったのは私がまだ自由奔放に世界中を駆け巡っていた頃のことだった。

    ペチカ完成パーティーのときは、ロシア人たちも遊びに来てくれた。やっぱり彼らはペチカがよく似合う。

     私は当時、旅先での興味の矛先が「焚火」に向かっていた。そもそも遊びの中で、森林限界を目指すより足下のちっちゃな出来事の方が気になる性分。旅先で足を止めて、どん欲に見聞きしたのが「燃料薪」についてだ。

     サハラ砂漠での燃料薪は、かつてオアシスだった場所で、砂に埋もれ乾燥した樹木を掘り起こして使っていた。

     樹木の少ないモンゴルでは乾燥した畜糞が燃料。牛の糞は暖房や乳製品の加工に、馬の糞は猟で獣をあぶり出すとき。羊と山羊の糞は、虫除けに使われていた。

     シベリアの着火材は白樺の皮とマツボックリが一般的。そして、ここで出会ったのがペチカである。

     外気温がマイナス60Cになる場所でも暖房はペチカのみ。これがなんとも温かい。しかも西洋の暖炉に比べ、薪の量の少なさにそりゃあもう驚いた。世界中で見てきた焚火の集大成が、ペチカの中にすべて詰まっているように感じた。

    「すごい! 欲しい、この暖炉! …とはいっても日本で売っていないよなぁ。よし、ならば自分で作ればいいんだ!」

     ここから私の自然暮らしがスタートしたのだ。

    ロシアの古式ペチカ。湯も沸かせて、上部はベットにもなる。火が落ちたら、火床は子供のサウナがわりに。無駄がない。

    木は1本では燃えない。火と空気と輻射熱で燃える。薪と薪の間にどのぐらいの間隔が必要か。どのように並べたら火力が上がるか。どんな木が薪に適しているのか。乳製品を煮炊きするときの薪の温度調節や豆の煮方…。私はすべて旅の中で教えてもらった。

     コツコツと溜め込んだ見聞。それが私の「旅土産」。数十年たった今も、世界中から持ち帰った土産はしっかりと、日々の暮らしに息づいている。

     我が家の冬の燃料。火種はマッチ。着火材は乾燥させた竹くずや、ゴミになる柑橘類の皮。火力アップには房総モチノキを使う。

    家の中で毎日、薪をくべてこう思う。

    「火のある暮らしは、時間の流れ方が違う」

    パチパチと薪のはぜる音、炎のゆらぎ、虫の鳴き声、木のきしむ音。風の唸り。

    自然の気配を感じながら、粛々と、ゆったりと1日が終わる。

    この心地よさ…たぶん古代より人間の脳に刻まれた癒しの記憶。

    そう、

    私はまだ、旅の途中にいる。

     

    次回は「玄関を開けたら、サギが死んでいた」です。

    お楽しみに!

    ババリーナ裕子

    かつてサハラ砂漠をラクダで旅し、ネパールでは裸ゾウの操縦をマスター。キューバの革命家の山でキャンプをし、その野性味あふれる旅を本誌で連載。世界中で迫力ある下ネタと、前代未聞のトラブルを巻き起こしながら、どんな窮地に陥ろうとも「あっかんべー」と「お尻ペンペン」だけで乗り越えてきたお気楽な旅人。現在は房総半島の海沿いで、自然暮らしを満喫している。本誌BE-PAL「災害列島を生き抜く力」短期連載中(読んでね)。

    写真/茶山浩

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