そんなことを考えたことはないですか? 本格的な山好きのみなさんには「いやいや、登りの苦労と下りの心地よい疲労感があっての山登りだろうがっ!」と叱られるかもしれませんが。
とにかくストイック感なしで稜線歩きを楽しみたいという夢をかなえてくれるのが、ケーブルカーとかロープウェイといった乗り物ですね。まあ、パスもありますが。
【ドイツ・シュトゥットガルトとその周辺旅vol.5】「ケーブルカー」に「ラック式トラム」!乗り物好きのパラダイスです
どうも。オーストラリア在住ライターの柳沢有紀夫です。近郊から戻り、今回はドイツ南部・シュトゥットガルト市内からお届けします。
ここは乗り物好きにはたまらない街です。【シュトゥットガルトとその周辺旅vol.1】でも書きましたが、地上駅は16番線まで並んでいます。しかもそこで行き止まりになっているというか、列車がシュトゥットガルト駅経由で次の場所に行くにはそこで向きを変えなきゃいけない。ってことで長く停車している列車も多いので、撮り鉄の人たちにとってはパラダイスでしょう。
そしてトラム(路面電車)が街の中心部に来ると、なんと「地下」にもぐるのも、【シュトゥットガルトとその周辺旅vol.1】で書いた通り。
まだあります! なんと郊外ではなく市の中心部に近い場所から乗れる「ケーブルカー」もあれば、傾斜のきつい坂を上り下りするために「すべり止め用歯車のついたトラム」もあるのです。今回はそんな乗り物を楽しみながらの郊外歩きの紹介です。
まずはケーブルカーに乗りましょう。シュトゥットガルト中央駅からトラムで1本、9駅たった15分のSüdheimer Platzという駅で降りて、西に100メートルほど歩きます。ここにトラムの駅と同名のケーブルカーの山麓駅があります。
ケーブルカーっというと原色系の派手な車両が多い中、見た目が強烈に地味です。「世界見た目が地味なケーブルカー大賞」があったらたぶん堂々の1位になるくらい。これには理由があります。
じつはこのケーブルカーは今から100年近く前の1929年、山の上に造成された墓地への行き来のために敷かれたのです。墓地に行くのに派手な色の車両もどうかってことで、この色になりました。
しかも茶色のペンキを塗ったわけではなく、木の色合いをそのまま生かしています。個人的には自然と調和していてすごく素敵だと思います。「世界素敵な色合いのケーブルカー大賞」があったら絶対に投票したいくらいに。…だったら最初に「地味」とか表現するな。笑
山麓駅であるWaldfriedhofまで高低差は87メートル、7キロメートルの旅。乗車時間は4分です。
その山頂駅に到着して1分ほど歩くと墓地になります。案内してくれたガイドさんによると、最近は墓石を建てるよりも樹木葬的なものが多いのだとか。十字架か少ないのはプロテスタントが多いためだそうです。
うわっ、ヨーロッパにもアジサイがある! とビックリしたのですが、よくよく考えれば原産は…ええっと、みなさんどこかわかりますか?
その答えはあとでお知らせするとして「紫陽花」と書いてなぜ「アジサイ」と読むのか。あと「七夕」を「たなばた」もよくよく考えたら難読漢字ですよね。
そしていよいよトレッキングのスタートです!
墓地を少し散策したあと、いよいよトレッキングコースである「ブラウシュトリューンプフラーヴェーク(Blaustrumpflerweg)」に入ります。
地図にある通り、一周できるのですが…それでまたこのあと衝撃のハプニングがっ!
「ブラウシュトリューンプフラーヴェーク」の「ブラウ」は英語で「ブルー」、「シュトリューンプフ」が「ソックス」という意味とのことで、英語のガイドさんは「ブルーソックストレイル」と呼んでいました。
シュトゥットガルト市の25パーセントが森林で、25パーセントが公園を含む緑地。つまり市の半分が自然だそうです。それを聞いたとき「へえ~っ、すげえ!」と素直に感動したのですが、よくよく考えたら国土の約75パーセントが山地である日本ではそういう都市も多いかもしれません。
…はい、すぐに他人にだまされるタイプです。
このトレッキングコースは森の中だけでなく住宅街の中も歩きます。
女性の表情でいちばん好きなのは「ひまわりのような笑顔」です。
そして出会ったのがこの風景!
けどここは柵の向こうの私有地なので歩けません。…だったらトップ画像に置くなよって話ですよね。すみません、すみません。
ちなみに丘の上のこの街は高級住宅街だそうで路上駐車されている車はベンツが基本で、ポルシェが少々! 他の車はほとんど見ませんでした。
このシュトゥットガルトはベンツとポルシェの本社があるお膝元です。どちらも博物館があって、その話は同じ小学館でも「@DIME」のサイトで記事にしたので、検索してみてくださいな。
そして今回のトレッキングの終着点はトラムのWielandshohe駅のすぐそばの公園。
そしてこの公園で「なんか知り合いに見られているぞ」という気になって、ふりかえってみたらそこにいたのが…。
ちなみに何を禁止されているのかよくわからなかったけど、たぶんツーショットではないはず。「触るな」か「登るな」だと思います。
「ラック式鉄道」にもう一つのラックがっ!
さて、ここからの帰りは「ツァッケ(Zacke)」の愛称で親しまれているトラムに乗ります。なんと原稿執筆時から140年も前の1884年開通。最初は蒸気機関車が走っていたそうです。
このトラム、「ラック式鉄道」と言って通常の車輪と車輪の間にもう一つ「歯車」がついていて、二本のレールの間にもこの歯車を噛ませるための歯型(つまり凹凸)がついたレールがついている形式。
なぜこんなことをするのかというと、勾配が急な丘を登る際の推進力と下る際の制御力(スピードが出すぎないようすること)を得るため。
さてこのトラム、「ラック式鉄道」以外にもう一つ大きな特徴があります。さきほどの写真のキャプションで「一見普通のトラムですが」と書きましたが…。
これ、なんだかわかりますか? はい、船でも室内席以外に甲板席があるように、風景を存分に楽しむための「アウトドア席」なんです。…というのはウソです。
坂を下る車両では上記のような姿ですが、登るものの多くは下記のような状態。
ここにマウンテンバイクを乗せて登り、あとは楽しく下ることができるのだそうです。無茶苦茶ラクだし、楽しそうですね。
またやりたいことが増えました。シュトゥットガルに戻ってくる理由ができました。
全周踏破を試みるも…
さてツァッケくんで下界に降りてランチを食べたあとは自由行動。で、何をしようかと考えてふと「あっ、さっき歩いてきたブラウシュトリューンプフラーヴェーク(ブルーソックストレイル)って周遊路だってガイドさんが言っていたな」と思いだしました。
そうなると残りも制覇したくなるのが「BE-PALっ子」ってもんです!
で、歩いてみることにしました。でもルートマップみたいなものは見当たらず、グーグルマップにも記載されておらず。挙句の果てには分かれ道の真ん中で「青い靴下」の標識あり。…どっちに行けっていうんだよ! というわけで集合時間の関係から結局途中で断念しました。涙
でも後日気づきましたよ。「オレ、山頂駅でルートマップの写真、撮ってたじゃん!」と。笑
でも結構素晴らしい景色や不思議な光景に出会えたからいいか。
ここを通った日本人はたぶん私が最初だろうなと思うと、まあ「道迷いしも楽し」ですね。山奥ではなく、すぐに住宅街に出られる場所ですし。
あっ、そういえば冒頭のほうで出したクイズ「アジサイの原産地」。答えは日本です! だから「うわっ、ヨーロッパにもアジサイがある!」というのは正しい感想。笑 ちなみに中国からシルクロードを通ってヨーロッパに伝わったというのでずいぶん前の話です。
【柳沢有紀夫の世界は愉快!】シリーズはこちら!
ドイツ観光局