Gasoline
コールマン/ワンマントルランタン
"真夜中の太陽"と称されたまばゆく白い光
コールマンの中型ボディー・ワンマントルモデルの現行バージョン。基本構造は’86年から続くモデル286Aを踏襲するが、定番のグリーンカラーに加え2022年にコールマンレッドが追加された。また火力調整ノブがダイヤル型に、ポンプキャップがメタルに、デカールが「286A」から「Coleman」になり、クラシックな雰囲気がより強まった。
¥19,580
問い合わせ先:コールマン カスタマーサービス TEL:0120-111-957
SPEC
●重量=1.4㎏
●明るさ=130W相当
●タンク容量=590㏄
●燃焼時間=7.5〜15時間
コールマンレッドはアウトドアの象徴だ
数多いアウトドアギアの中でも、これほど長期間にわたって大定番を貫いている製品はないだろう。「赤ランタン」として有名なモデル200Aは1951年から33年間、その後継機種となるモデル286Aとなると’84 年から現在に至るまで、もう40年以上売られているのだ。
しかも頑丈で、故障知らず。僕は1963年製、’91 年製、’93 年製の3台のワンマントルをいまも現役で使っているが、消耗品の交換以外ほぼノーメンテナンスで使えている。工業製品としての完成度がとても高い。
写真は現行品のモデル286Aだ。一昨年から人気のコールマンレッドが追加され、それと同じタイミングで火力調整ダイヤルやポンプカバーも往時のデザインに戻り、とてもクラシックな雰囲気になった。まさに21世紀の赤ランタンだ。コイツがキャンプサイトにいるだけで「古きよき時代」感がグッと高まるのだ。
マントルの空焼きやポンピングなどLEDランタンに比べると手間はかかるが、強烈な明るさと存在感は特別だ。かつて「真夜中の太陽」と称された銘品は、この先もずっと僕らを照らしてくれるだろう。
ここがスゴい!
70年以上変わらない基本構造とデザイン
右が僕の私物の200A(1963年製)で左が現行品。こうして比べてみると質実剛健でシンプルな構造や愛らしいデザインは往時のままなのだ。
マントルの空焼きはランタンの必須作業
マントル(化繊で編まれた網状発光体)には熱に反応して発光する薬品が塗ってあり、事前に燃やして灰化させることで光を拡散するようになる。
ポンピング加圧は点火前の重要儀式
プランジャーポンプを操作して、タンクに内圧をかける作業をポンピングという。この圧力で燃料をジェネレーターに送り込み、気化させるのだ。
ヴェイパラックス/E41SB
Kerosene
燃料調達が簡単で、その光は心に染みる
英国の伝統的なティリーランタンのOEM製造を行なっていたウイリス&ベイツ社が1938年に立ち上げた自社ブランドが「Vapalux」。その最初のモデルがこのE41だ。以来軍用品として発展し、多くのモデルが作られた。2010年に英国軍がLEDランタンに移行したことに伴い廃業したが、ブランドは韓国企業に譲渡され生産を続けている。
¥59,400
問い合わせ先:ファロスインターナショナル TEL:0551(30)9270
SPEC
●重量=1.95㎏
●明るさ=60W相当
●タンク容量=1,000㏄
●燃焼時間:10時間
心まで照らしてくれる柔らかく優しい光
いっぽう、ケロシン(灯油)ランタンも古い歴史を持ち、世界中に多くのファンがいる。1938年に英国のウィリス&ベイツ社が開発した「ヴェイパラックス」もそのひとつ。このE41はそのファーストモデルだ。
ヴェイパラックスにはコールマンにはない魅力がある。そのひとつが燃料代が圧倒的に安いことだ。ホワイトガソリンが今や1ℓ1200円近くするのに比べ、灯油はその10分の1ほどで買える。しかもガソリンスタンドはどこにでもあるから調達も簡単だ。また構造がシンプルで、燃焼音も静か。キャンプの静寂を邪魔しないのがいい。
もちろん弱点もある。灯油は沸点が250℃と高いので点火前にまずはヴァポライザー(燃料気化管)をアルコールで予熱する必要がある。これを「めんどくさい」ととるか「儀式として楽しむ」かは使い手次第。僕はもちろん楽しんでいる。
太陽が西の水平線に沈み、空が茜色から群青色へと移り変わるころ、僕はお気に入りのランタンに火を灯し、長い野宿の夜に思いを馳せる。こんな瞬間に自分のそばにいてほしいと感じる道具こそが、真のアウトドアギアだと僕は思うのだ。
ここがスゴい!
佇まいが美しいステンレスボディー
このモデルは頑丈で耐蝕性の高いステンレス製。ほかに伝統的なポリッシュブラス製もある。シンプルで流麗な佇まいには思わずため息が漏れる。
プレヒートにはアルコールを使用
灯油ランタンは燃料を気化させるヴァポライザーをあらかじめ熱しておく必要がある。まずはプレヒートカップにアルコールを満たして火を付ける。
着火タイミングは経験とコツが必要
アルコール燃料でヴァポライザーを予熱しているところ。十分に暖まったタイミングでポンピングすると灯油が気化・膨張し、噴出して着火する。
私が書きました! ホーボージュン
大海原から6000m峰まで世界中の大自然を旅する全天候型アウトドアライター。X(旧Twitter)アカウントは@hobojun。
※撮影/中村文隆
(BE-PAL 2024年8月号より)