かほなんの 無人島21日間 サバイバル記録~第1回「夢に見た無人島生活が現実に」
無人島で自給自足をしながら暮らすことを夢みるアイドルの女子が、約6年間、サバイバルの修業を積んできた。身につけたスキルを試すべく、21日間限定で無人島に渡り過ごした記録をレポートする。※この挑戦は、島の管理者の許可を得て行なっています。
さばいどる かほなんとは?
「目標は、いつか無人島を買って、ヤギやニワトリを飼い、自給自足をしながら暮らすこと」
そう話す、さばいどる かほなんとはどんな人物なのか?
「さばいどる」とは、「サバイバル」と「アイドル」の造語。これが、かほなんの肩書きでもある。意味はそのまま、サバイバルするアイドルで「さばいどる」。「かほなん」の「かほ」は本名で、「かほなん」は、そこから派生したニックネームだ。
そんな、かほなんをもっとも身近に感じられるのが『さばいどるチャンネル』というYouTubeチャンネルだ。2022年5月現在、チャンネル登録者数45万4000人超え。釣り、キャンプ、野外料理など、アウトドアで活動する様子を多岐にわたり公開し、多くのファンを魅了している。
そんなかほなんは、岐阜県に生まれ、子供のころには両親とファミリーキャンプに出かけてカレーを作ったり、田舎の家に泊まりに行っては、野草を摘んで食べたり。幼いころのアウトドア体験といえば、その程度の普通の女の子だったという。
ご当地アイドルが無人島生活を目指して修業をスタート
2013年になると、愛知県一宮市をベースにしたご当地アイドルグループ「おーだーめいど138」の一員として、ライブハウスなどに出演するようになった。そして、2016年になり、新たに「サバイどる(これは当時の表記)」としてYouTubeの公開を始めた。
当時は、アウトドアの知識など何もなかったアイドルの女の子が、ヒロシ隊長というキャラクターが出すお題目をひとつひとつクリアしながらアウトドアのスキルを身につけていくというストーリーだった。かほなんは、そんな経験を通して、火のおこし方やナイフの使い方などを失敗しながらも、ひとつひとつ覚えていった。
「私がアウトドアのスキルを磨いているのは、無人島生活を実現する夢をかなえるためです」
雑誌、テレビなどの出演が増え、さばいどるの活動について聞かれると、かほなんは決まってそう答えた。かほなんにとって、無人島暮らしは、ぶれることのない絶対的な目標であり夢なのだ。
ヘビを食べる女としてブレーク
さばいどるチャンネルは、2018年になり、それまでのテレビ番組的な作りから、かほなん自身が撮影、編集まですべてをこなす現在の自撮りスタイルに変更。そこからチャンネル登録者数が急増した。
「振り返ると2018年に公開した、キャンプでマムシを食べる動画が、大きなきっかけになったと思います。当時はそれほどの再生回数ではなかったのですが、後々、その動画を観たテレビや雑誌の制作関係の方からの問い合わせが増え、『ヘビを食べる女』として話題になるようになりましたね」
2019年以降は、媒体露出が増えるたびに、チャンネル登録者数もグングン伸びていった。反面、かほなんのことを知る人が増えることで、活動の場に気を遣うようになった。そこで、自由に使える活動拠点を求め、2019年末に山を購入し、それも話題となった。
「山を買ってすぐに、コロナ禍になり、緊急事態宣言が出ちゃって、ライブ活動が皆無になってしまいました。ならば、今しかできないことをやろうと、山にこもり、1か月近く修業生活をしながら、どんどん動画をアップしました」
逆境にもめげずに目標に向かいスキルアップを加速させたかほなん。ファンからは、「いつ、無人島暮らしを始めるのか」と、期待の声があがるようになった。
拾った竹を柱に生活拠点を組み立てる
ファンのあと押しに応えるように、かほなんは無人島暮らしを決断した。といっても、いきなり無人島を購入して、自給自足を始めるのではなく、21日間限定のいわばお試し版・無人島レンタルチャレンジ生活だ。
「海外のテレビ番組で、『人は水だけで21日間生きていける』という話を聞き、21日間ならなんとかチャレンジできるんじゃないかなって思ったんです」
そこで、かほなんは自らルールを設定。ナイフ、ODシート、釣り具など、サバイバル生活をするうえで最低限必要な装備だけを持ち、21日間限定で、無人島生活を送ることになった。
【無人島21日間 サバイバルルール】
1.日本国憲法、および、関係機関の条例などに違反する行為は禁止とする。
2.すべての生存活動について、ひとりで行なうこととする。
3.持ち物はリュックひとつに装備できるだけのものとする。
4.食料・飲料の持ち込み禁止(原則、現地調達とする)。
☆以下の物は除外(ただし、生存活動には使用しないこと)
•撮影機材、パソコン類、充電設備、メイク道具
「水と食料品は、基本的に現地で調達します。ただし、生きて帰ってくるのはもちろん、アイドルとして、挑戦終了後もすぐに仕事復帰できるように、健康を損なうと判断した場合にのみ、栄養補助食品を補給するのはありとします。このほか、動画制作のために必要な機材と電源は持ち込みますが、それを生存活動には使いません」
2022年5月6日。かほなんは、無人島に向かう漁港にやってきた。もちろん、無人島に渡る定期船はない。島を管理する地域の代表者のサポートで、漁船をチャーター。同時に、島に渡ってからの魚介類の捕獲や、植物の伐採、焚き火など、サバイバル生活をするうえで必要な許可をすべてクリアした。
大きなザックにテントマットや足ひれなどを装着し、船へ積み込んだら出発だ。
5月の強い日差しの下、漁船は無人島へ向かって軽快に走る。ときおりスナメリが水面に顔を出す様子も見える。自然が濃い場所のようだ。島が近づくと、中央に向かって小山のような形が確認でき、その大部分を樹林が覆っている。果たして、水や食料となる資源はあるのか?
「ジャジャーン! 来ました。無人島。来ました~。ここが21日間、お世話になる無人島です。これから探検したり、拠点を作ったりしていきます」
ウグイスの声が響き、浜昼顔の花が咲く小さな浜に荷物をおろすと、すぐにカメラを回し、動画の撮影を開始した。
その後公開された上陸した日の動画には、無数の漂着物が映っている。流木があれば、プラスチック製のゴミも多い。これが無人島の現実だ。映画のように、白い浜、美しいビーチが広がっているわけではなかった。
しかし、かほなんは、そんな現実を気に留めることもなく、拠点づくりに取り掛かった。日が暮れるまでに、拠点を作り、水を探し、食料を調達しなければならないのだから。
拠点はできたが、ここからがほんとうの試練のはじまりだった
かほなんは、近くに落ちていた太い竹を4本拾ってきた。無駄な体力を使わないよう、竹の片側だけを持ち、引きずって拠点に運ぶ。その竹をノコギリで適度な長さにそろえ、4本を上部で組んでクアトロポッドを作る。そこに、持ち込んだ大きなODシートを掛け、上部を紐で縛れば、居住スペースの完成だ。
簡易シェルターの中に荷物を入れたかほなん。
「では、探検に行きますか!」と歩きだした。近くに落ちていたペットボトルを拾い「お宝発見!」。そう、無人島生活では、考え方次第で、ゴミも大切な道具となるのだ。
島の反対側まで歩くと、わずかに水が滴る小さな崖を発見。そこから落ちる水滴を拾ったペットボトルに集め、洗浄後、汲んで持ち帰った。
「半日ぶりに水が見られてうれしかった。これを浄水器で濾過して、煮沸すれば飲み水になります。あとは、食料ですね。何かあるかな…」(次号に続く)
無人島暮らしの第一歩は雨風をしのぐシェルター作りから
雨も風も避けられます
※構成/山本修二 撮影/花岡 凌、桑山寛之、山本修二
(BE-PAL 2022年7月号より)