今を生きるすべての人に必要なことかも…幸せな島暮らしのための「2:6:2の法則」 | 田舎暮らし・移住 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2022.12.23 松鳥むう

    『島の日々をめぐる本』と書かれた冊子が木の机の上におもむろに置いてある

    離島に住む編集者

    「ゆめしま海道」で知られる愛媛県上島町には、7つの有人島が存在する。弓削島、佐島、生名島、岩城島、赤穂根島、高井神島、魚島だ。
    それら島内各所に置いてあるこの冊子。有料のガイドブックかと思いきや、上島町発行で無料というから驚きだ。中を見ても、デザインといい文章といい、そんじょそこらのガイドブックよりもはるかに心に留まる1冊である。

    芝生の↑に置かれた木製ベンチに座る男性(宮畑さん)。後ろには木造の古民家。

    宮畑周平さん。ランドスケープデザイナーの友人に設計施工してもらったという庭にて。

    この冊子の編集を担当したのが弓削島在住の編集者・宮畑周平さん(45歳)だ。島移住する人の場合、今までの仕事から離れて、役場等の行政関係に就職したり、農業、漁業、畜産業に転職したり、アウトドアショップやカフェといった形で起業する人が多い。そんな中、宮畑さんは、東京在住時代から仕事を変えるコトなく編集者だ。編集業以外にも、ライター・カメラマンとして上島町近隣を中心に活動すると同時に、愛媛県からの依頼による地域の事業プロデュースも行っている。

    「地域の問題解決をしていくのも、編集者の仕事とほぼ同じだと思うんです。なので、広い意味での編集者かも」と。

    移住当初は、東京で勤めていた建築関係の編集プロダクションの社長が、移住後の生活を気にして、リモートワークにしてくれたのだという(※コロナ禍よりも、だいぶ前の話)。その仕事と、フリーランスとしての仕事とで島生活を始めたのは10年前だ。

     島暮らしは、つまり「滝行」

    夏みかんが木の机に4つ。「FREE ご自由にどうぞ」と書かれたメモとともに。

    季節になると、あちこちからもらうという柑橘類。コチラは、弓削島(上島町)の某宿にて。

     そもそも、移住したきっかけは「子育てに良い場所」を探していてのコトだった。学生の時から、山も自然も好きな宮畑さんは、東京の街中で子育てをするというコトに、ひっかかりを覚えたのだ。弓削島を訪れたのは、そんな頃。奥さんの父親の実家が、たまたま、弓削島だったからだ。

    「今でもはっきり覚えているんです。弓削島を訪れて散歩していた時に、道端に新鮮な八朔が転がり落ちていたんですよ。まだ、全然食べられるモノが道端に落ちているだなんて、東京じゃ考えられないじゃないですか。それを見た時、ココには都会にない"豊かさ"があると、感じたんです」

    島から見た海の景色。近隣の島々も見える。手前に小さな漁船が一隻浮かんでいる。

    上島町の日常の風景。

    けれど、島暮らしは、豊かで安らぐコトばかりではない。人間が生きて住んでいる限り良くも悪くも"人間関係"というモノが何かしらついてくる。田舎になればなるほど、それは密になる。

    「島暮らしは、滝行みたいなモノです。いろんなコミュニティのいろんな人の声が、滝の水のごとくやって来るんです」

     都会生活では、職場とプライベートの友人ほどの人間関係だけで問題なく暮らしていける。が、島だと、そこに、地域のコミュニティが加わる。集落、青年団、消防団……etc.とにかく幅広い。かつ年齢層も幅広く、価値観もまったく違う人達とのコミュニケーションが必須。それに対応するには、都会生活では使うコトのなかった能力が必然と求められる。自分の中のごく一部の能力だけ使っていれば良かった都会暮らしとは大違いだ。

    「でも、その滝、つまり、いろんな人の声に打たれて良かったって、今は思うんです」

    海を背景に、手前に赤茶色の蛸壺が口をコチラ側に向けてキレイに並べられている。

    上島町の中で唯一の漁師の島。ズラリと並ぶ蛸壺が圧巻。

    そう悟るようになったのは、自分が楽に過ごせる人間関係の法則を編み出したからだという。

    「名付けて"2:6:2の法則"。例えば、自分のまわりに10人いたとします。そのうち2人は自分のコトを好きな人。他の2人は自分のコトを嫌いな人。残り6人はどっちでもない人。このうち、自分のコトを嫌いな2人の声がたくさん聞こえてしまうんです。でも、"自分のコトを嫌いな人のために生きるんじゃない。好いてくれる人を大事に生きよう"って決めたとたん、島暮らしが楽になりました。はじめは、全員に好かれようと思っていて。だから、つらかった」

    宮畑さんと同じく、島や田舎に移住して、長年暮らしている人たちは、地域に関わらず、たいてい同じコトを言う。

    「ある時から、嫌われても何を言われてもいいやって思うようになったんです」と。

    悟りぬいた上の鈍感力。繊細な人が多くなったように感じられる現代において、どこへ行っても誰にとっても必要なコトなのかもしれない。

    楽しく生きてこそ、地域は残る

    家々の壁の1~2階までをおもいっきり使い、『キャンディキャンディ』等、漫画からそのまま飛び出してきたかのような壁画が並ぶ

    高井神島(上島町)は、空き家の壁に大御所漫画家の許可を取り、そのイラストを描いて島おこし中!

    "稼ぐ"ではなく"人が幸せに生きる"とはどういうコトかをテーマに、地域を本のように編んでいきたいという宮畑さん。

    「その土地に住んでる人たちが幸せに楽しく過ごしていける地域は、少子高齢化が進んでも残っていくけれど、そうじゃない地域は、廃れていってしまうと思うんです」。

    これは、島暮らしの話だけでは留まらない。各地の伝統行事や郷土食、企業の存続も、形や規模は違えども、同じコトではないだろうか?ただ、そのコトにいち早く気が付けるのは、小さなコミュニティである島ならではなのだろう。

    岩城橋を徒歩で渡り中。青空に橋の白色がまぶしい。

    2022年3月20日に開通した岩城橋。上島町の2島、生名島と岩城島を結ぶ。

    私が、初めて弓削島を訪れた2012年から約10年。その間、移住者は増え続け、一方で、島人の様子も変わって来た。以前は、観光客である私が歩いていても声をかけて来る人は少なかった。が、今は、「どっから来たん?」だけではなく、「今日は、暑いな~」など、一言プラスの会話が付いてくるコトが増えた。それは、きっと、次々とやって来る観光客や移住者と島人との関係がうまくいっているコトを物語っている気がする。

    島の港。桟橋の向こうには小さな坂。その周りは木々が生い茂る。木々の合間に建物が少し見える。

    上島町内の無人島のひとつ「豊島」。ゲルハルト・リヒターの作品が展示されている美術館がある(開館はその都度、期間限定)。

    宮畑さんのように、移住者側が自分にあった島暮らしの仕方を発見していくコトに時間がかかるように、島人がよそから来た人を受け入れるのにも、また、同じくらいの時間が必要なのかもしれない。
    互いのそのペースがほどよくあい、楽しいと感じられたからこそ、上島町の島々は定着している移住者が多いのだろう。

    宮畑さんが、弓削島を含む近隣の地域を編んで行く先には、どんな島々の姿が待っているのか。時折、島へ足を運びつつ、見て聴いて感じるコトが楽しみで仕方ない。

     

    宮畑周平/setohen

    https://www.setohen.com/

     

    私が書きました!
    イラストエッセイスト
    松鳥むう
    滋賀県出身。離島とゲストハウスと滋賀県内の民俗行事をめぐる旅がライフワーク。訪れた日本の島は118島。今までに訪れたゲストハウスは100軒以上。その土地の日常のくらしに、ちょこっとお邪魔させてもらうコトが好き。著書に『島旅ひとりっぷ』(小学館)、『ちょこ旅沖縄+離島かいてーばん』『ちょこ旅小笠原&伊豆諸島かいてーばん』(スタンダーズ)、『ちょこ旅瀬戸内』(アスペクト)、『日本てくてくゲストハウスめぐり』(ダイヤモンド社)、『あちこち島ごはん』(芳文社)、『おばあちゃんとわたし』(方丈社)、『島好き最後の聖地 トカラ列島 秘境さんぽ』(西日本出版社)、『むう風土記』(A&F)等。Podcast&Radiotalk 「松鳥むう」で検索♪ http://muu-m.com/

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