日本列島を縦断する約1万kmの歩き道「ジャパントレイル」プロジェクトの全貌
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    2022.10.16

    日本列島を縦断する約1万kmの歩き道「ジャパントレイル」プロジェクトの全貌

    北海道から沖縄まで既存の歩き道を一本につなぐ「ジャパントレイル」プロジェクトがはじまった。乗り物を捨てた歩き旅は、現代社会においてカルチャーとして根付く可能性を秘めている。そして世界へ向けた日本の広告塔としても期待される。その地を知る最善の方法は、歩くことなのだから。

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    NPO法人日本ロングトレイル協会に加盟しているロングトレイルがこちら。そのすべてがジャパントレイルに含まれることはなく、既存の自然歩道などをとり入れてバランスよく設定される。

    日本津々浦々のトレイルをひとつに歩く旅 「Hiking Nippon」を楽しもう

    ロングトレイルとは、山頂にこだわることなく自然や文化、歴史に触れながら歩くために整備された道のことである。それは、登山道や自然散策路に限らず、林道であったり車道であったり、ときには畦道や牧場だったり、道の種類は問わない。
     
    そんなロングトレイルは日本各地に点在し、「日本ロングトレイル協会」に加盟しているロングトレイル運営団体だけでも国内に約30ある。この加盟トレイルの一部を踏みつつ、既存の歩き道を北海道から沖縄までつなぐ日本列島縦断コースが提唱された。その名もズバリ「JAPAN TRAILJ」。この6月に発表された第一次案ルートの総延長はなんと約1万㎞に及ぶ。第一次案ルートとは、ルートが二股に分かれるエリアもある、という意味だ。ハイカーや地元民、プロジェクトに関わる人々からフィードバックを得て、トレイルの完成度を徐々に高めていく計画だ。いわば、日本最長にして無二のトレイルをみんなで作り上げていこうという壮大な試みである。
     

    JAPAN TRAILのルート設定5か条

    • 日本ロングトレイル協会加盟トレイルなど、既設のトレイルを有効に利用します。
    • 舗装されている国道や県道などは、なるべく通らないようにします。
    • 歴史や文化のある古道・旧街道などを利用します。
    • 可能な限り四季を通じて安全に歩けるルートを選択します。ただし、一部には積雪によって一定期間、通行不能になるルートもあります。
    • 既設の登山道やハイキング道、長距離自然歩道、散策路などを利用します。

     

    ひと筆書きでスルーハイクする猛者はひと握りで、多くの人はセクションに分けて歩くことになるだろう。歩き方は十人十色だ。乗り物を捨てると人に出会う機会が増える。いままで見えなかった世界が見えてくる。歩行スピードは、人間のDNAに刻まれた世界を見る窓だ。また同時に自分と向き合い、考える時間を与えてくれる。歩くことは、その土地を知る最良の手段といわれるが、自分を知る手段でもあるのだ。
     
    疫病、エネルギー問題、地球変動……世界はいま転換期を迎えている。生活にも旅行にも自然を取り入れたい気運が高まっている。まさにいまこの混沌とした日本で生まれるべくして生まれたプロジェクトといえる。
     
    ここでは本誌おすすめの5コースを紹介しよう。

    1.日本一長いコーストトレイル
    みちのく潮風トレイル

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    ©koji iwama

    青森県八戸市から福島県相馬市までの太平洋沿岸をつなぐ総延長1,025㎞の歩き道。小さい湾が複雑に入り込んだリアス海岸や植生豊かな里山、眩しい砂浜といった地形を楽しみながら、みちのくの暮らしや文化、歴史に触れる。東日本大震災の震災遺構として保存された建造物を見ることもでき、次世代へ地震の畏怖を伝えるトレイルでもある。

    2.百名山から百名山へ極上散歩道
    岩手山・八幡平・安比高原50kmトレイル

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    東北を代表する日本百名山の2座、岩手山と八幡平をつないだ通称・裏岩手縦走路。スルーハイクするには稜線に建てられた避難小屋に2泊して歩く山岳トレイルだ。麓の松川温泉などを起点に日帰りセクションハイクも可能。写真のように稜線が真っ赤に染まる紅葉シーズンがおすすめ。火山、湿地、高山植物、山小屋と変化に富んだ極上散歩道。

    3.雨を分ける高原をゆく
    霧ヶ峰・美ヶ原中央分水嶺トレイル

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    日本百名山の2座、霧ヶ峰から美ヶ原へ続く中央分水嶺を歩く全長38㎞の歩き道。5つのセクションに分けられて日帰りハイキングからスルーハイクまで楽しめる。標高1,500mを超える峰々を踏み、比較的アップダウンの少ない平坦なコースだ。八ヶ岳をはじめ南、中央、北それぞれのアルプス山脈を望むことができるパノラマルートとしても人気。

    4.進化するロングトレイルの草分け
    信越トレイル

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    ©Shin-etsu Trail Club

    長野県と新潟県の県境にそびえる斑尾山から関田山脈を経て百名山・苗場山へ続く全長110㎞の歩き道。ボランティアによるトレイル整備など、地元密着型の北米ロングトレイル文化を取り入れたニッポンロングトレイルの草分け的存在だ。美しいブナ林から豪雪地の山村、生態系豊かな里山、花が彩る高層湿原まで日本の原風景に出会える道だ。

    5.海に生きる人々を訪ねて
    広島湾岸トレイル

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    ©Hiroshima Wangan Trail

    瀬戸内海に浮かぶ島々や海とともに発達してきた港町、47の山々を越えて歩く総延長291㎞の道。広島、宮島、瀬戸と3つのエリアに分けられ、好みのトレイルを探す楽しみも。2つの世界遺産、原爆ドームと厳島神社もコースに含まれ、自然や文化のみならず歴史も学べる。トレイルのどこにいても海を望める都市型周回コースである。

    計画から安全な歩行をサポート
    JAPAN TRAILのアプリ

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    国土地理院発行の地形図にルートが表示され、現在地が確認できる専用アプリが登場。旅の計画から現地の安全な歩行までをサポートしてくれる。ルート達成率の表示は、踏破意欲をかき立てる!

    ※JAPAN TRAILのホームページ:https://japantrail.jp
    ※現在、JAPAN TRAILに含まれていない加盟トレイルは、栗駒、茨城県北、南房総、茶の道、ダイヤモンドの5つ。

    伸也

    ※構成/森山伸也

    (BE-PAL 2022年9月号より)

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