SDGsとプラ問題の狭間で…枝豆から本当の持続可能性を考えてみた
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    2022.07.21

    SDGsとプラ問題の狭間で…枝豆から本当の持続可能性を考えてみた

    ビールが美味しい季節になってきました!そんなビールに最高のお供といえば「枝豆」です。「とりあえずビール!」と頼んだのち、つまみに枝豆を選択するまでほぼ無意識のルーティンのはずです(笑)。

    そんな枝豆を今年は植えてみようぜ! 最高のビアフレンドを自分たちの手で。そう意気込んで枝豆栽培を進めようとした100%オーガニックの鎌倉野菜を育てる『雨のちハレ、ときどき農業生活』では、一つの壁に当たったことで、深く考えさせられる出来事がありました。

    環境に優しい⽣分解性プラスチックの限界

    この黒マルチは、環境にやさしい生分解性ではない。

    土壌の乾燥や侵食を防止し、地中温度の調節ができたり、雑草を生えにくくさせ、雨などで肥料が流れることを防いだり、病気の伝染を防ぐ効果が期待されるマルチング。上の写真の黒いものがそのマルチングなんですが(通称:黒マルチ)、これまで僕たちは、微⽣物の働きにより最終的には⽔と⼆酸化炭素に分解​される(環境に優しい)⽣分解性プラスチックを使用してきました。

    通常のマルチングの素材であるビニールシートやポリエチレンフィルムに比べて価格が3倍も高いんですけど、「100%オーガニックをうたっているのに、環境に良くないプラを使うわけにはいかないよね」というのが農場主のこだわり。環境負荷を低減させる昨今のSDGs的な流れもあって、使い続けてきました。

    ところが、今回の枝豆栽培では、その⽣分解性プラスチックをやめ、ポリエチレンフィルムを採用することにしたんです。理由は、枝豆が育つよりも先に、⽣分解性プラスチックの黒マルチが分解されてしまい、本来のマルチング機能が損なわれてしまうことがわかったからです。

    環境低減か、持続可能性か

    (1)指で穴を開ける。

    パッケージやストロー、カトラリー、包装紙にトレーなどプラスチック(石油)に由来するものが店頭から次々と消え、さながらプラスチックは悪玉のように扱われていますが、環境負荷を低減させ、未来に向けた持続可能な社会を作るという大命題の前に思考停止気味だった自分がいました。

    でも、今回の枝豆栽培に接してみて、「環境低減と持続可能性が両立しない場合、どっちを優先させるのか?」という問いを突きつけられた気がしています。

    (2)苗をそっと植える。

    「環境にやさしい⽣分解性プラスチックを使えば、農作物の収穫という人間の社会活動の根源に対して持続可能な手段にならない」という問いと「環境には優しくないが、ポリエチレンフィルムを使うと安定した農作物が収穫でき、持続可能な社会の形成に寄与する」という問いです。

    やや極端な話かもしれませんけど、環境負荷を意識するあまり、かえって社会活動に支障をきたすことは、持続可能な社会を作り出すことに意義を見出せるのだろうか?と頭の中をめぐったわけです。

    (3)土をかぶせて軽く抑えれば終了。

    そこで僕たちがたどり着いたのは、「最高のビアフレンドの枝豆を自分たちの手で作る!」ことでした。禅問答のような問いかけに要した時間はコンマ何秒程度でしたが、地球環境を優先して枝豆を諦めることよりも、ビアフレンドを優先する決断をしたのです。

    SDGsに矛盾はないのか?

    枝豆畑の成長が待ち遠しいです。

    2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載され、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標がSDGsですが、中身は17のゴールと169のターゲットから構成されています。

    また、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っていて、発展途上国のみならず、先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり、日本も積極的に取り組んでいるのは多くの人が知ることでしょう。

    増え続ける世界の人口には早晩、食糧問題が起きることが言われています。「貧困をなくし、飢餓をゼロにし、すべての人に健康と福祉を」。これはSDGsが掲げる17のゴールの最初の3つです。そして12番目に「つくる責任 つかう責任」として、持続可能な消費と生産のパターンを確保することがうたわれてもいます。

    枝豆がなくても生きていくことはできますし、プラ悪玉説が極大点に達すれば石油由来の製品はご法度になるのでしょう。キンキンに冷えたビールと共に、茹でたてで塩の効いた枝豆でも食べながら、本当の持続可能な社会って着地点はどこなのか。そんなことを考える夏になるかもしれません。

    私が書きました!
    フリーライター
    山田 洋
    2020年3月から、「ときどき農業生活」を始める。きっかけは「耕作放棄地を農地に再生したい!」と、1200平米ほどの農地を借りた友人のお手伝いから。リモートワークと並行しながら、100%オーガニックの鎌倉野菜を育てるために雑草との格闘を続けている。

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