実体験をリアルにレポート!大人気マンガ『山と食欲と私』発の登山ガイド本で山デビュー | 本 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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  • 2021.07.31

    実体験をリアルにレポート!大人気マンガ『山と食欲と私』発の登山ガイド本で山デビュー

    夏山シーズン到来!下界がこうも毎日暑いと、少しでも涼しい山に行きたくなりますよね。運動不足解消も兼ねて、山に登りたいと思っている人も多いのでは。

    今すぐにでも飛び出したいのに「山登り」となると、どこの山に何を持って、どんな服装で行けばいいの……?と、そのハードルの高さに最初の一歩でつまずいてはいませんか?
    そんな悩みに応える登山入門者にピッタリの本が発売しました。累計160万部を超える大人気マンガ『山と食欲と私」の主人公・日々野鮎美が案内する登山ガイド本です。その制作秘話について、作者である信濃川日出雄さんにインタビュー。登山デビューを考えているみなさんへのアドバイスをいただきました!

    山に詳しい友達に「教えて」と尋ねるような1冊に

    BE-PAL(以下B):今回発売になった『鮎美ちゃんとはじめる山登り』には、全国から27の山が掲載されていますが、この27座はどのような基準で選んだのですか?

    信濃川日出雄(以下信濃川):企画のコンセプトでいうと『山と食欲と私』を連載している中で、読者の方から「『山食』(以下略)を読んで登山をはじめました」や「これからはじめてみたい」という声が増えてきたんですね。だけど『山食』は、あくまでマンガですしフィクションも混ざっています。初心者が登山のガイドブックとして利用するには危なっかしいところがあって。だからこれをガイドブック代わりに読者の方が登山をはじめたなんて話を聞くのは、僕としてもちょっと怖かったんです。でも、読者の要望も無視したくなかったので、ちゃんとしたガイドブックを企画する必要があると考えました。

    そのときにやはり初心者が参考にしやすいものを作りたいと思ったので、富士山や燕岳は1泊する必要がある山ですが、基本的には日帰りできて気軽に行ける山を選んでいます。最初に登る山としてもおすすめです。

    B:北は北海道から、南は九州まで全国の山が載っていることも印象的でした。

    信濃川:それもちょっとしたこだわりです。自分が住んでいる地域の近い場所からスタートするのがいいと思ったので、各所入れました。どの山も編集に関わってくれた『チーム山食』のメンバーが実際に登って紹介記事を書いているので、現状を反映したリアルなものになっていますよ。鮎美ちゃんに「あそこの山ってどんな山なの?」って聞いたときに、説明してもらっているようなイメージで読めると思います。

     

    B:信濃川さん自身が思い出深い山はどこですか。

    信濃川:富士山ですかね。過去に二度登っているのですが、一度目は吉田ルートで、二度目は富士宮口から登って宝永火口を経由し、御殿場ルートに合流して山頂へ向かうプリンスルートで行きました。
    一度目のほうは、10年以上前に奥さんと登ったんです。富士山に登るためにふたりで道具を揃えて、僕はその道具を使ってその後頻繁に山登りに行くようになりました。二度目は、友人がメンタル的に辛い状況にあったときに富士山に登ってみたらどうかと誘ったんです。富士山って、けっこう過酷だけどその分達成感もあるので、やり遂げたことがプラスに作用してポジティブな気持ちを手に入れてもらえたらいいな、と。結果的には、高山病で辛いシーンもあったんですが、意義深い山行になりました。

    B:富士山の過酷さと達成感は、ほかの山とはまったく違うものがありますよね。本の中で山の紹介だけじゃなく、道具や装備、計画の立て方も紹介されているので、この1冊があれば、とりあえず山に行くために必要な情報は網羅できそうですよね。

    信濃川:そうですね。山登りデビューをするときの最初の1冊にしてほしいと思っています。山の紹介だけでなく、本書の半分は装備や知識の紹介となっていて、この1冊で山の基本は勉強できます。監修は登山ガイドの渡辺佐智さんに入っていただきました。スタートに必要な情報が手に入れば、まずは山に行けるじゃないですか。その第一歩を手助けしたい、というのが本書のコンセプトです。ハードルが高い山登りをスタートするための取っ掛かりになってくれたらいいなと思っています。”ちょっと山に詳しい友達の鮎美ちゃん”に気兼ねなく尋ねるように使ってもらえたらいいですね。ここから山の世界が広がっていったらうれしい。それでどこか山にひとつでも登れたら、さらに自分に必要な情報がわかってくると思うんですよ。そのときは、より詳しい専門書を読めばいいと思うので、その前段階の1冊として役立ててほしいです。

     

    B:コロナの感染対策についても触れられていましたが、今の山の状況はどうなんでしょうか。

    信濃川:県外への移動はしづらいので、地元の人が地元の山に登るということが多いようですね。あとは密を避けるためにソロテントが増えているとも聞きます。富士山も山開きをしたので、今年は昨年よりは登る人が増えるのではないでしょうか。
    登山道での感染リスクはあまりないのかもしれないですが、人が集まる山頂は密になりやすいのでマスクの着用は必須。また、すれ違うときに、ハーハーという息が相手にかからないように配慮することも大事だと思っています。混み合うような山では、行列にならないようにお互い距離をとって登る必要もありますよね。

    マンガのエピソードは、実体験をもとにしている

    B:『山と食欲と私』の最新刊も発売されました。今回は四国に初上陸の話でしたが、鮎美ちゃんが登っている山は、すべて信濃川さんも登られているんですか。

    信濃川:ほとんどの山は登っています。僕は北海道在住なのですが、今はコロナ禍でなかなか遠征ができないので、最近は担当編集者に代理で取材に行ってもらったり、友達の山行のエピソードを聞いて参考にすることも。
    そのときに写真を撮ってくるだけじゃなく、何を感じたのかをしつこくインタビューすることを大事にしています。個人として主観的に感じたリアルな部分を鮎美ちゃんのエッセンスにしているので、わりとそこは気をつけて描いています。

    B:だからどのエピソードも「山あるある」というかリアリティがあるんですね。山ごはんもすべて信濃川さんが考えているんですか。

    信濃川:そうですね。実は奥さんのアイデアを採用してるメニューもけっこうあるんですが(笑)、基本的にはほぼ自分で考えています。いちばん大変なことは、料理のディテールよりもどんな登山的工夫があるかということ。登山ならではのアイデアをどうするか毎回頭を捻っています。5~6巻あたりからは山旅マンガとして全国各地に鮎美ちゃんが行っているので、ご当地食材や郷土料理も取り入れていますね。

    B:全国の情報となると、さらにネタ探しが大変そうですよね……。

    信濃川:僕自身が旅を仕事にするということが夢だったので、楽しんでやっていますよ。昔、東京で週刊マンガを連載していたときは、どこにも行けない状態で仕事場に缶詰になるのが辛かったんですね。だから今は夢が実現したので、大変だけどうれしいです!実体験が鮎美ちゃんのエッセンスだから、よりいろいろ体験しないといけないですしね(笑)。遊びに行くと言ったら怒られそうですが、山登りに行って、麓の街を探検したり勉強して、ご当地のおいしいものを食べて、温泉宿で2~3泊しながらそこでデスクワークもしちゃうというのが最近のパターン。毎回ストーリーを作るときはまず文章で書くのですが、その作業は現地で終わらせてきちゃいます。九州のくじゅう連山や四国の石鎚山、中央アルプス、東北車中泊旅、浅間山に行ったときもそうでした。本州から北海道に帰ってくるフェリーの中でお話を作ったりも。自宅に戻ったらすぐ作画に入り、原稿を描き上げたら再び旅へーーー。またコロナが落ち着いたら、そういう生活に戻りたいですよね。

    B:それは楽しそうですね! 鮎美ちゃんはこれからどんな山登りライフになる予定ですか。

    信濃川:次々に難しい山に挑戦して成長を目指すというよりは、その時々で興味を惹かれる全国各地の山にトライしてみるという予定です。作品作りという意味での挑戦は、全国各地さまざまな地域に自分自身で足を運び山に登りながら、いかに連載を継続していくかということですね。8巻の厳冬期八ヶ岳編や、12巻の中央アルプス縦走編のように、もちろんときには鮎美ちゃんなりに背伸びをしたレベルの高い山行に挑む回も描いてみたいです。

    山登りデビューにピッタリな登山ガイド本発売中!

    日本全国からよりすぐりの山、27座を紹介。登山ビギナーでも挑戦しやすい低山から、ちょっとチャレンジ枠の富士山、燕岳も掲載。大人気マンガ『山と食欲と私』の主人公、単独登山女子の日々野鮎美が案内してくれます。
    山行計画や登山装備、服装の選び方のほか、マナー、トラブル対処も説明してくれるので、この1冊で登山の基本が習得できますよ。

    『山と食欲と私』14巻も発売中!

    ワーケーションのため愛媛県松山のゲストハウスに滞在する鮎美が、愛媛県の石鎚山に登りに行くエピソード。今回もおいしそうな山ごはんが盛りだくさんですよ!

    【著者紹介】

    信濃川日出雄さん
    2001年に漫画家デビュー。2015年より「くらげバンチ」にて『山と食欲と私』の連載がスタート。趣味の登山を活かした作風が話題となり、山登り好き以外の読者も多い。アウトドアブランドとのコラボ商品なども多数発売されている。

     

    文・構成=中山夏美

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