私が住んでいる西粟倉村は、2013年に「環境モデル都市」に認定され、再生可能エネルギーによる村のエネルギー自給率を100%にすることを目標にしています。村内で木質バイオマス燃料による熱供給事業を行っている、株式会社sonrakuの半田守さんにお話を伺いました。
きっかけは「百年の森林構想」
西粟倉村は、面積の約95%が森林であり、そのうちの約84%が人工林です。約50年前に、先人が未来の子や孫のために苗木を植え、これまで大切に受け継がれてきた大切な森林という資源を、有効利用しながら次の50年守り続け、立派な百年の森林に育てるという「百年の森林構想」を2008年に掲げました。
人工林は、手入れをせずに放っておくと枝葉が増えすぎて光が地面まで届かなくなります。その結果下草が生えず、土砂災害の原因になります。また、密集しすぎた木々は、成長が遅れ、木材としての価値が低くなります。それらを回避し、より良い森を作るには、適切な間伐をし、光の入る森を維持することが必要です。こうして切り落とされた枝葉や間伐された木は、運送コストがかかる割りに価値が低いため、以前は森にそのまま放置されていました。そんな廃材を資源(木質バイオマス)として熱エネルギーに変える取り組みが始まりました。
「化石燃料」から「木質バイオマス」へ
村には「遊〜とぴあ黄金泉」「国民宿舎あわくら荘」「あわくら温泉元湯」などの温泉施設があり、以前は一年間に約186,000リットルの灯油を燃料にして加熱していました。
この熱エネルギーに木材を利用することで、約1,000立方メートルの山林に切り捨てられている木材が有効活用できる上に、二酸化炭素の排出量を493tも削減することができます。
エネルギーを自分たちで生み出すことによって、環境に良いだけでなく、地域外に流出するお金を抑制し、村の中で経済がまわるという大きなメリットもあります。
地域にはエネルギー会社が必要
株式会社sonrakuは、2014年より西粟倉でエネルギー供給事業を始めました。
C材と呼ばれる、家具や建材には使えない木材を買い取り、薪に加工し、薪ボイラーで燃やした熱を販売しています。
薪割りや、定期的にボイラーに薪を投入しなければならない等、人件費がかかるため、利益より社会的意義の方が高いのが実情だそうですが、近年はようやく利益が出てきているとのこと。今後は、チップでの熱供給事業や発電など、技術的に異なる分野に挑戦したいそうです。
地方創生では、稼げるまちづくりが重要視されがちですが、実際は、出ていくお金を防ぐことの方がよっぽど早いと半田さんは言います。
「例えば人口1万人の町で、エネルギー消費量に年間30億円かかるとします。そのうちの7~8割は燃料代として地域外に流出してしまいますが、流出を5割に抑えるだけで6~9億円のお金が町内に留まることになります。こうして地域にお金を循環させることができる。これがエネルギー事業の面白いところ」と語る半田さん。
このような取り組みに興味のある自治体は最近増えてきているようで、県外からも見学者が訪れます。受け入れ体制もあるのでぜひ問い合わせて見て下さい。
取材協力:株式会社sonraku https://sonraku.jp/
データ類出典:西粟倉村役場公式サイト http://www.vill.nishiawakura.okayama.jp/