抹茶プリン山!? 伊豆の「大室山」で楽しむお鉢巡りとアーチェリー | 日本の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

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2026.02.14

抹茶プリン山!? 伊豆の「大室山」で楽しむお鉢巡りとアーチェリー 

抹茶プリン山!? 伊豆の「大室山」で楽しむお鉢巡りとアーチェリー 
紺碧の海と、深緑の森。そしてその手前に鎮座する、昔話に出てきそうな形の山。AI?それとも合成写真?と疑いたくなりますが、これは実在する風景です。
この山の名は「大室山(おおむろやま)」。山梨県の丹沢に同名の山がありますが、そちらとは別物。今回ご紹介する大室山は、静岡県伊豆半島の東部にある標高580メートルの山で、国の天然記念物に指定されています。
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まるで「抹茶プリン」。なぜこんな形に?

大室山が誕生したのは約4000年前のこと。伊豆半島の東部には伊豆東部火山群という火山群があり、大室山はその火山群の中で最大の「スコリア丘」です。

スコリアとは、火山から噴出した岩塊のこと。流動性のないスコリアが長期間かけて地表に降り積もると、このようなきれいな円錐台形になるそうです。砂時計の中の砂が、なだらかな角度で積もっていくのと同じ原理ですね。

その鮮やかな緑色と愛らしいフォルムが、日本だけでなく海外の観光客からも大人気。親しみを込めて「抹茶プリン山」とも呼ばれているのだとか。

そんな大室山、単成火山の典型例として国の天然記念物に指定されており、環境保護のため徒歩での登頂は禁止されています。山頂までの移動手段は、スキー場でよく見かけるタイプのリフトのみ。山頂までの約6分の空の旅をどうぞお楽しみください。

地表に近く、山肌がはっきり見えます。

山頂には、直径最大300m、周囲1000m、深さ70mの噴火口跡があり、噴火口跡をぐるりと一周する「お鉢巡り」を楽しめます。

大室山の大きな特徴のひとつに、「周囲に他の山がない」ことが挙げられます。

存在感が際立っていますね。

これは「どの方角を向いても、何も遮るものがない」ということです。つまり、360度、見渡す限り全てが絶景。

西北には富士山や南アルプス。特に、12月頃から5月頃にかけて見ることができる、雪の積もった富士山は、思わず拝み倒したくなるぐらいの美しさ。

東には相模湾や伊豆諸島。天気が良い日にはスカイツリーや房総半島まで見えます。

西方面。富士山がきれいに見えます。
東方面。前方に見えるのは相模湾。

山頂ではこのように遊歩道が設けられているので、お鉢巡りの際に迷うこともありません。山の北側は低く、対角線上にある南側が高くなっています。

適度なアップダウンがあるため、実際に歩いた距離以上の達成感が味わえちゃいます。筆者が大室山を訪れたときには、小学生とおぼしきお子さんが、家族と一緒に無事にお鉢巡りを達成。自分の足で一周歩き終えたその顔には、大きな自信が宿っていました。

上空から見ると、高低差があることがよくわかります。

そして一風変わったアクティビティも。この噴火口跡にお行儀よく設置されているもの……。それはアーチェリーの的です。

それぞれの的に沿って足跡ができています。

「噴火口跡=すりばち」という形状を最大限に活かしたアクティビティかもしれません。すりばち状なので、矢が噴火口跡から外に飛び出すことはなく、初心者(中学生以上)でも楽しめます。弓や矢などの道具類はレンタルできるので、手ぶらでも大丈夫。むしろ、弓具の持ち込みはできないので、是非手ぶらで訪れてください。

春を告げる一大イベント 「抹茶プリン」ができるまで

大室山は、「山」と言われていますが木は生えていません。生えているのは草だけ。伊豆半島は温暖な気候で植物もよく育つはずなのに、なぜ木が生えていないのか……? それはこの山で、700年以上続く伝統行事が行われており、意図的に「生えない」ようにされているからです。

大室山では毎年「山焼き」が行われています。先祖代々から続くこの行事を、地元の人たちが今でも大切に受け継いでいます。

山焼きが行われるのは原則として毎年2月の第二日曜日……なのですが、山焼きの前に雨が降ったり、それまでに降った雪が残っていたり、晴れの日が続いていなかったり、強風が予想されたり……と、さまざまな要素で、山焼きは高い確率で延期されます。

2025年は4年ぶりに予定通りの開催となりましたが、その前に予定通り開催できたのは2021年で、2013年以来8年ぶりだったのだとか。予定通り開催されたのは、13年間でわずか3回!なかなかのレアケースです。

山焼きは第一弾と第二弾に分けて行われ、「お鉢焼き」と言われる第一弾は9時15分から。地元の消防団などによって、大室山の火口部分がたいまつで焼かれます。山の上からもくもくと煙が立ち上る姿は、山焼きを知らない人が見たら「噴火した!逃げろ‼」と声をあげてしまいそうな迫力。お鉢焼きの段階では、見学希望者(通常600人限定)はリフトで山頂に登ることができます。

お鉢焼きが終わったら、ただちにリフトで下山しましょう。そして正午、点火の合図となる10本の花火が打ち上げられ、大室山は外側の山麓からたいまつで点火されます。

標高580メートル、周囲約1000メートルの大室山が、あっという間に炎と煙に包まれていく……その様子はまさに圧巻。観光客の見物エリアまで灰が降ってくることもあるので、マスクは必須アイテムです。目を凝らしてみると、山に住み着いているシカが炎に驚いて逃げていく様子も見られます。

想像していた以上の迫力と火力。

点火から20分ほどで山一面が焼き尽くされて真っ黒に。その見た目は、抹茶プリンというよりも、もはやコーヒープリン(ちなみに冬になると山肌の草が枯れるため、山焼き前の大室山は、「抹茶」ではなく「ほうじ茶」のような色味です)。

この行事が毎年行われているからこそ、大室山には春になるとさまざまな植物が芽吹き、色も姿も美しい「抹茶プリン山」になるわけです。

もし山焼きが延期になった場合、開催が1か月先になることも珍しくありません。訪れた日に無事開催されるかどうかは、運と情報収集能力次第。山焼きをぜひこの目で見てみたい!という方は、「大室山登山リフト」のホームページなどで開催情報を確認することをお忘れなく。

夜の星空も一見の価値あり。

<大室山への交通アクセス>
JR東海道線・新幹線 熱海駅からJR伊東線で伊豆高原駅へ(5駅21分)。伊豆高原駅からバス「高原線」などに乗車(16分)、「シャボテン公園」バス停下車すぐ。
車では熱海駅から約1時間。

市川美奈子さん

台湾在住ライター

静岡県出身。一児の母。民間企業を経て2013年から行政機関で勤務、2023年4月から台湾に駐在。夫を日本に残し、「ワーママ駐在員」として小学生の息子と共に台湾で暮らしている。旅行好き。離島を含む台湾各地を旅して、その土地の歴史と文化とアウトドアを楽しんでいる。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員

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