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2026.02.21

【グレートジャーニー】最新章始動! 探検家・関野吉晴さんが新たな旅に踏み出した

【グレートジャーニー】最新章始動! 探検家・関野吉晴さんが新たな旅に踏み出した
半世紀以上探検を続けてきた関野吉晴が新たな旅に踏み出した。待望の新連載、始動!
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グレートジャーニー 最新章〈旧石器時代へ、時を辿る旅〉The Great Journey Latest Chapter

熱帯雨林、砂漠、氷床、北極圏、サバンナ、ツンドラなど地球上のあらゆる土地を歩き、そこに住む人々と深く関わってきた探検家・関野吉晴。今回は旧石器時代という過去まで遡ることによって、地球における人類史、そして生命史までをも繙いていく。旧石器時代さながらの野生世界に身を置くことでタイムスリップする旅、グレートジャーニー最新章が始動する。

関野吉晴 (せきの・よしはる)

1949年東京都生まれ。探検家、医師、武蔵野美術大学名誉教授(文化人類学)。一橋大学在学中に探検部を創設し、アマゾン川源流などでの長期滞在、南米最南端からアフリカまで人類の足跡を遡行する「グレートジャーニー」、日本列島にやってきた人々のルートを辿る「新グレートジャーニー」などの探検を行なう。

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01 石器野吉晴の思いつき

ノンフィクション作家の高野秀行と都内の2時間飲み放題・食べ放題の店で話しているときに、急に話題が変わって、「関野さん、ADHD(多動性注意欠陥障害)ではないですか?」といわれた。

「じつは僕もADHDなんです。いま、それに関連した本を書いているんですが、関野さんもきっとそうだろうと思って」
 
たしかに思い当たることが多々ある。スマートフォン、カメラ、手帳…。人生の時間の3分の1を探し物に費やしているのではないかと思えるほど、モノがすぐに行方不明になる。一方で、何かに夢中になるとそれしか見えなくなる。学生時代、若者を虜にしてしまう本が3冊あると聞き、私も興味をひかれて読んだことがあった。太宰治の『人間失格』、ドストエフスキーの『地下生活者の手記』、ジャンジャック=ルソーの『告白録』。『告白録』は、ルソーが自身の行動を自己分析していくのだが、読み進めると、「これはまさに私のことを書いているのではないか」と思う箇所にぶつかった。

「私には非常に激しい情熱があって、それに搔き立てられている間はまるで手がつけられず、自制心も、体裁も、心配も、礼儀もあったものではない。無恥、厚顔、凶暴、不敵である。恥辱もかまわず、危険も恐れない。心にかかるただ一つの目的を他にしては、宇宙も物のかずではない」
 
20代はアマゾン。30代はアンデス高地、パタゴニア、ギアナ高地。40代はグレートジャーニー、50代は海のグレートジャーニーを含めた新グレートジャーニー。今回はその搔き立てられているものが、マンモスハンターの時代(旧石器時代)へのタイムトラベルである。
 
思い立ったのは2022年の大晦日だった。まずは、青梅で始めてみようと考えた。そこには、東京とは思えないような森が広がっていて、以前から私のさまざまな活動を支援してくれている野口敏宏さんがいるからだ。思い立ったら即体が動いてしまう私は、大晦日の年越し蕎麦を食べるような時間にいきなり野口さんに電話をした。そして、計画の概要を話し、翌日相談しに行っていいかと尋ねた。でも、翌日は元日だ。2日なら空いているというので、元日は自分のやりたいことを書き記し、親しい友人たちに「石器野吉晴」の名で、「新年早々新しいプロジェクトを始めてしまいました」とメールを送った。
 
その冒頭にはこう書いた。

「2023年のチャレンジ──単独で、ナイフもなく、徒手空拳で森に放り出されて、私は生きていけるだろうか? 石器時代へタイムスリップの旅」
 
なぜそんなことを目論んだのか。
 
私は40代半ばから50代半ばにかけて、アフリカで生まれた人類が最も遠くまで達した旅路──アフリカ発シベリア・アラスカ経由南米最南端までのグレートジャーニーを、10年がかりで逆ルートで辿る旅をした。
 
その途中、アマゾン、アラスカ、シベリアなどで、昔ながらの暮らしを続ける狩猟採集民をはじめ伝統社会に寄り道をし、交流してきた。そうすることによって、太古の人々に思いを馳せることができると思ったからだ。
 
グレートジャーニーは、旧石器時代の人類の移動・拡散の旅だった。彼らも森の中や河原で、 焚き火を囲みながら、「私たちの先祖はどこからやってきたんだろう」、「私たちは他の動物とどこか違うのだろうか」、「私たちはこれからどこに向かうのだろうか」と、人類の普遍的な問いを語り合っていたことだろう。
 
彼らに思いを馳せるために、私の『グレートジャーニー』では、近代的動力を使わずに、自分の腕力と脚力だけで移動することにした。2002年2月、タンザニアのラエトリに到達するまでさまざまな気づきがあり、充足感もあった。
 
しかし、マンモスハンターに思いを馳せることはできなかった。私の『グレートジャーニー』は結局、現代と同じ鉄器時代の人々を訪ねながらの旅だったからだ。
 
1975年まで、ニューギニアでは鉄を知らず、石器だけで暮らす人々がいた。しかし、今を生きる80億人の中で、石器だけで暮らす人はいない。鉄の世話になっていない人は皆無だろう。アマゾンを空から見て、新しい民族が発見されることがある。その後、研究者や役人が陸路で彼らの村に行くと、必ず、鉄の斧とかナイフがある。本当に必要なものは交易で入っていくのだ。そして、一度でも鉄を使い、その威力を知ってしまうと、二度と鉄のない世界には戻れないのだ。それほど鉄の発見は人類にとって革命的だった。
 
それでは、鉄のなかった時代を生きたマンモスハンターたちに思いを馳せるためにはどうしたらいいのだろうか?
 
アマゾンに暮らすマチゲンガは、ナイフ一本あれば森にある素材で家、服を作り、食料を獲得して生きていける。私も、彼らとの50年以上の交流を経て、鉄のナイフ一本さえあれば、サバイバルできる自信がある。では鉄器なし、石器だけならどうだろう。あえて鉄を使わないルールを課して暮らしてみてはどうだろう。マチゲンガもおそらく未経験のはずだ。そうすることで鉄以前の時代の、太古の人類へ思いを馳せることができるかもしれない。私は居ても立ってもいられなくなった。
 
こうして、私の新たな旅が動き始めた。旅の目的地は旧石器時代。『グレートジャーニー』のように地球上の空間を移動する旅ではなく、時間を遡る旅だ。縄文時代よりさらに古い時代へ遡ってみる、といういわばタイムスリップの旅で、思い切ってマンモスハンターの時代に遡ろうというチャレンジだ。
 
では一体どうやって旧石器時代を目指すのか。
 
まずは石を砕き、打製石器を作るところから始める。その石器で木を切り、植物繊維で紐を撚り、柱や屋根をしつらえ、杉皮や葦、茅萱、ススキ、芝土で屋根を葺き、家を建てる。その家に寝泊まりしながら、水を汲み、木の実や山菜を集め、魚介類を捕り、シカなど獲物を捕獲して黒曜石のナイフで解体し、火をおこし、調理して食べ、排泄する。すべての材料を自然から集め、自分で作れないものは使わない。徒手空拳で暮らしを立てる。
 
近年はDIYがブームだが、私は何も持たずに森に入り、旅としてのDIYをやってみたいのだ。暮らすためには、皿、水筒、罠、食糧を運ぶためのカゴ、敷物、袋、釣り道具、弓矢、魚網などを自然素材だけで作らなければならない。テクノロジーを旧石器時代のレベルに限定し、初期人類のもの作りと狩猟採集生活に挑戦する。
 
2023年1月、東京の青梅の森に土地を借りて旅は始まった。

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東京都青梅市の森に打製石器だけで建てた小屋。この小屋作りから新たなグレートジャーニーが始まった。

構成/鍋田吉郎 撮影/筆者提供

(BE-PAL 2026年2月号より)

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