創業50年!「モンベル」次なる高みへのSTEPとは? | アウトドアブランド 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2026.01.01

    創業50年!「モンベル」次なる高みへのSTEPとは?

    創業50年!「モンベル」次なる高みへのSTEPとは?
    創業50年、日本のアウトドアを牽引してきたモンベルの今はいかにして在るのか? もうすぐ創刊50年の本誌編集長・沢木が、モンベル辰野会長の経営哲学、理念に迫る!
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    ビーパル45周年記念 特別対談

    株式会社モンベル 辰野 勇会長 × BE-PAL編集長 沢木拓也

    「半世紀ブレずに走り続けてきたから今がある!」

    沢木

    モンベル創業は1975年、ビーパル創刊が1981年。以来およそ半世紀にわたってともにアウトドアの世界を走り続けてきました。辰野さんにとって、どんな50年でしたか。

    50年を振り返ってみて、何か変わったかと考えてみると、何も変わっていないんですよ。先日も山口県で開催された『SEA TO SUMMIT』に参加してきました。朝5時に起きて6時には雨の中の開会式で、「アー・ユー・レディ? イエー!」と声を上げ、参加者のみなさんと和気あいあいと楽しんできました。そんな自分の姿を客観的に見ると、50年前に創業したころと芯の部分は何も変わってないと実感します。

    辰野

    沢木

    変わらないというのは、言い換えればブレないということです。ブレないための努力が必要だったのではないですか?

    努力というのは、自分が好まないことでも一生懸命やれる能力のことだと思うんです。脳科学者の中野信子さんによると、人間は生まれながらにして努力のできる人とできない人がいるんだそうです。では、私はどっちか? 残念ながら努力できない人なんですよ(笑)。努力できる人は、学校なり社会なりが求める正解や与えられた正解に向かって、つらかったり嫌だったりしても一生懸命問題を解こうという努力ができる。私はそういった努力を放棄して生きてきました。その代わりに何をしてきたか? 努力することは放棄して、50年間ずっと自分がやっていることを正解にしてきたんです。格好つけるわけではないけれど、儲かるからやったということはひとつもない。マーケットをリサーチしたコンサルタントが示す正解を目指すなんてビジネスをやったことも一度もない。そういった正解を追いかけることなく、自分で正解を作ってきたんです。

    辰野

    沢木

    自分で正解を作るとは?

    まず、自分が面白いと思ったら、「こんな面白いことがあるよ。この指止まれ」って指を差し出すこと。そうしたら、そう思う人たちが指に止まってきた。最初は動きが鈍い場合でも、続けていると人が集まってきた。要は自分が面白いと感じたこと、つまり自分の「好き」を仕事にし、それが正解になるまで続けてきたんです。

    辰野

    沢木

    ビーパルも「この指とまれ!」でやってきたので、すごく共感します。それに、芯の部分は何も変わっていないというのも同じです。私たちの創刊時のキャッチフレーズは、「自然を手でつかもう。」でした。それからずっと、「自然の中に一緒に入っていこうよ」という気持ちで誌面を作り続けてきました。もちろんギアを紹介したり、新しいコトを紹介したりしますが、ただ流行を追いかけるのではなく、芯になっているのはやはり、「自然っていいよね。楽しいよね。でも、時に怖いよね」というアウトドア観です。そこはブレずにやってこれたかなと思っています。

    50年後のビーパル 50年後のモンベル

    沢木

    これからの50年もブレないようにと思っています。昔からの読者を大切にしながら新しい読者も増やしていくために、変えるべきところは変える必要がありますが、その中でしっかりと私たちの自然への思いを伝えていかなければいけない。そのときに大事なのは、ビーパルは教える側ではなく、読者と一緒に学ぶ側だという立ち位置。初心者のための雑誌でありたいしあるべきというのも、創刊以来ブレていないので、そこも変えてはいけないと考えています。辰野さんは、モンベルのこれからの50年をどのように想像していらっしゃるのですか?

    市場のニーズは変化していきます。50年先のニーズを私が予言するのは無理です。ただ、50年後にもしモンベルという会社が存続しているとしたら、ふたつの条件が必要だということは断言できます。ひとつめの条件は、50年後もモンベルという会社が社会にとって必要とされ続けているかどうか。言い換えると、「使って良かった。これで助かった」とユーザーが思えるようなものをずっと供給し続けているかどうかであり、「みんなでモンベルを応援しよう」といってもらえているかどうか。もうひとつの条件は、事業の採算が取れていること。いくらモンベルが世の中のためになっていたとしても、事業そのものの採算が取れてなかったら、会社は存続しないからです。このふたつの条件は、車の両輪のようにどちらかが欠けても会社は成り立ちません。

    辰野

    沢木

    社会にとって必要とされているかという視点では、すでにモンベルの活動は多岐にわたっていますよね。

    われわれは社会的使命として、「モンベル 7つのミッション」を掲げています。その7つとは、①自然環境保全意識の醸成、②野外活動を通じて子供たちの生きる力を育む、③健康寿命の増進、④自然災害への対応力、⑤エコツーリズムを通じた地域経済活性化、⑥第一次産業(農林水産業)への支援、⑦高齢者・障害者のバリアフリー。これら7つのミッションをアウトドアビジネスを通じて追求し、より良い社会を実現したいと考えています。

    辰野

    アウトドアは社会の万能薬

    沢木

    日本社会の課題がすべて詰まっていますよね。

    じつはそれぞれの課題は、今の日本では行政が縦割りで対応しています。環境省、厚労省、国交省、農水省…。しかし、縦割りで物事を判断しているからなかなか前へ進まない。そんな縦割りに横串を通せるのがわれわれアウトドアの持っている力なんです。この「7つのミッション」に共感した三重県と2016年に最初に包括連携協定を結び、現在までに約170の産官学のいろいろな団体と包括連携協定を結んできました。これだけの広がりを見せるのは、アウトドアは薬でいうと万能薬だからだと思います。万能薬だから、縦割りの問題に横串を通せるんです。だから、アウトドアは、今地方が抱えている問題に対応していける。たとえば、過疎の問題。モンベルは2025年4月に奈良県黒滝村にモンベルルーム吉野路黒滝店をオープンしました。黒滝村は人口500人あまりの小さな村ですが、本当に一生懸命、「モンベルと一緒にやっていきたい」と思ってくださっている。その期待に応え、モンベルの出店によって村を元気にすることがわれわれのミッションです。

    辰野

    沢木

    ギアの開発の面でも、モンベルは新しい発想で壁に穴をあけているように思います。たとえば、ランドリーサービスを全国展開する株式会社OKULAB(オクラボ)とコラボして2024年に始めた「モンベル撥水コース」。

    撥水剤として使用されるフッ素による水質汚染がわかってきて、日本ではまだ規制はないものの、われわれはいち早くフッ素使用をやめる決断をしました。そして、フッ素を使わずに撥水効果を得られる製品を開発したのですが、フッ素製品にくらべてメンテナンスがより必要になりました。そこで、フッ素フリーのモンベルの撥水剤を使って洗濯ができる「モンベル撥水コース」をオクラボと共同開発し、コインランドリーで手軽にメンテナンスできるようにしたんです。このような他業種との複合的なコラボレーションが、今後増えていくと思います。

    辰野

    沢木

    このコラボレーションのようなチャレンジを創業以来続けていますが、失敗は怖くないのですか?

    失敗という概念がモンベルにはありませんから(笑)。もちろん、うまくいかないことはいっぱいあったし、これからもあると思いますが、それは失敗じゃなくて不都合という概念。不都合であれば、それを是正していけばいつか必ず正解にたどりつきます。1年、2年、3年では無理かもわからないし、相当遠回りもあるかもしれないけれど、好きでやっているんだから直し直し続ける。最初は正解でなくても、無理やり正解にしていくんですよ(笑)。

    辰野

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    カヤック、自転車、登山をつないで山頂に至るSEA TO SUMMITに喜寿を迎えても参加。2025年の皆生・大山大会でパドルを漕ぐ。

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    2025年びわ湖 東近江大会。ゴール地点の雪野山古墳山頂で、参加者に囲まれて笑顔の辰野会長。この後、笛の演奏を披露した。

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    奈良県吉野郡黒滝村の「道の駅 吉野路黒滝」内にオープンしたモンベルルーム。Tシャツ、ボトルなど限定デザインのグッズが多数ある。

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    笑顔だが、じつはこの対談の直前、SEA TO SUMMITで怪我を負っていた。「喜寿過ぎて、生傷絶えない創業者」(辰野勇)

    「“自然を手でつかもう、自然に入っていこうよ”という気持ちで雑誌を作り続けている」(沢木)

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    「与えられた正解を追うのではなく、自分のやっていることを正解にし続けてきた」(辰野)

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    モンベル会長 辰野 勇

    たつの・いさむ 1947年大阪府生まれ。高校卒業後、登山用品店、商社を経て28歳で㈱モンベルを設立。21歳でアイガー北壁を登攀(当時世界最年少)したほか、黒部川カヌー初下降などさまざまな記録を持つ冒険家でもある。

    ※構成/鍋田吉郎 撮影/安田健示

    (BE-PAL 2026年1月号より)

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