横浜・たまプラーザでホップを育て、クラフトビール作りに挑む「あおばホップガーデン」の熱意 - 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2025.07.22

    横浜・たまプラーザでホップを育て、クラフトビール作りに挑む「あおばホップガーデン」の熱意

    洗練された街並みと高級住宅街のイメージが強い横浜市たまプラーザ。そんな場所でホップを育て、クラフトビール作りに挑む女性たちがいます。

    ホップ栽培とビール作りを通じ、地域をより良くしたいという彼女たちの熱意。その挑戦を紹介します!

    たまプラーザでホップを栽培する「あおばホップガーデン」のメンバー。
    (左)朝倉亜矢子さん (中央)井口歌子さん (右)村上章子さん

    クラフトビールが広げる豊かな時間

    近年、ブルワリーに併設されたキャンプ場が人気を集めるなど、クラフトビールがキャンパーたちの間で“豊かな時間”を彩る嗜好品として定着しつつある。

    その魅力は、作り手の個性や土地の風土がダイレクトに表れる多様な味わい。そして、香りや色合い、ラベルデザインに至るまで、ふたつとして同じものがないことも人気の理由だろう。現在はクラフトビールを味わうことが、旅のモチベーションになっている人もいるほどだ。

    そんなビールの個性を支える大事な要素が「ホップ」である。独特の苦味と華やかな香りを生み出すこの植物は、ビールづくりに欠かせないものだが、日本で流通するホップの大半は輸入品であり、国産ホップの生産は最盛期から大幅に減少している。

    柳田國男の『遠野物語』で知られる岩手県遠野市は、国産ホップの一大産地として知られている。冷涼な気候と適度な湿度がホップの栽培に適しているためだ。

    駅から少し離れた小さな丘のうえでホップを栽培している。ホップの収穫時期は7月から9月にかけてとのこと。ホップ栽培では、除草や害虫駆除に加え、伸びたつるを紐や支柱に巻きつけて成長を促す「誘引」という作業をこまめにする必要があるとか

    横浜で芽吹いた「あおばホップガーデン」

    一方で、決して気候的に恵まれているとは言えない横浜でも、元気なホップを育てている人がいる。横浜市青葉区・たまプラーザにある「あおばホップガーデン」は、地元ブルワリーと連携し、ホップの栽培からビールづくりまでを手がける。

    都会的な商業施設が立ち並ぶ、たまプラーザ駅から車で10分ほど走ると、畑の広がる長閑な丘陵地帯にたどり着く。あおばホップガーデンの畑はその小さな丘の上にあった。

    見たところ60㎡ほどのコンパクトな畑だが、7月初旬の朝、夏の日差しを浴びてホップは力強く育っていた。

    「現在はアメリカ原産のヴィスタとカスケード、そしてドイツ原産のハラタウを育てています」

    そう話すのは代表の井口歌子さん。
    村上章子さん、朝倉亜矢子さんと共に2023年からホップの栽培に取り組んでいる。

    取材に対応してくれたあおばホップガーデンの井口歌子さん。本業はグラフィックデザイナーだ。
    ホップはアサ科のつる性植物。通常は支柱につたを巻きつけて5メートル以上の高さにまで育つが、こちらの畑では、支柱ではなく、単管パイプで“やぐら”を組んで紐を張り巡らせ、限られたスペースでなるべく収穫量を増やせるよう工夫がされていた。写真は足場に登ってホップを収穫する朝倉さん。
    収穫作業を行う村上さん。ホップ栽培は除草や害虫駆除と共に、伸びたつたを支柱やひもに巻きつけて成長をうながす「誘引(ゆういん)」という作業を頻繁に行う必要があるそう。

    「ビールに使うのは、この毬花(まりはな)です。中を割ると黄金色の粉(ルプリンと呼ばれる)が出てきますが、それがビールの香りと苦味のもとになります」(朝倉さん)

    ホップは株によって雌と雄があり、毬花ができるのは雌株だけなのだとか。いま収穫されたばかりのホップを手に取り、ルプリンの匂いを嗅いで見ると、まさに良く知っているあのビールの鮮烈な香りがした。

    この日は、30分ほどの収穫作業で約200gのホップを収穫。作業が終わったところで、活動の詳細について伺った。

    こちらが雌株の毬花、すなわちホップである。

    ホップとビール、そして“場づくり”

    「私たちはもともと小学校の特別支援学級のママ友だったんです。子どもの送迎などで顔を合わせいるうちに仲良くなったのですが、そのうち子どもの進路のことで共通の不安を抱えていることもあって、一緒に何かできないかという話に進展しました」(井口さん)

    じつは筆者の息子も特別支援学校の小学部に通っており、将来に対しての不安はとても共感できる。とくに学校を卒業した後の進路だ。就職しようと思っても、一般企業へ就職できる障がい者は、限られたごく一部に過ぎないのが実状だからである。

    多くはA型またはB型就労移行支援事業所に入所して働くことになるが、その賃金(工賃)は一般企業に比べてはるかに安く、事業所自体も経営難で廃業してしまうことも多い。

    収穫したホップは選別し、その日のうちに真空パック。2㎏ほどあれば、小ロットでのクラフトビールの製造が可能になるという。

    「以前からそれぞれで野菜を作ったりしていたので、畑を活用することで誰もが当たり前に楽しく暮らせる居場所作りができないかなという話になったんです。

    ちょうど同じ青葉区で生産した小麦で地産地消に取り組む「横浜あおば小麦プロジェクト」の存在もあり、私たちはホップを育てて、地元産のクラフトビールを作ったら面白いんじゃないかと盛り上がったんです。みんなビールが大好きだったので、異論は一切出ませんでした(笑)」(村上さん)

    インタビュー中に出していただいたこのドリンクは炭酸水に採れたてのホップを入れたもの。つまりビールの香りがする水。とても美味しいうえ、仕事中でも背徳感なく飲めるのが素晴らしい(笑)。今後は、ビールだけでなく、ホップを活用したノンアルコールドリンクやアイスクリーム、地域の野菜と組み合わせたカレーなど、食を通じた多角的な商品展開も考えているという。

    こうして、それぞれの得意分野を活かしてビール作りが始まった。グラフィックデザイナーの井口さんはラベルのデザイン、ライター経験のある村上さんは商品の㏚、園芸に詳しい朝倉さんは栽培の舵取り役として。

    2023年はベランダのプランターで試験栽培を行い、翌年から畑に6本の苗を植えて本格的に取り組み始めた。決してホップの栽培に向いているとはいえない横浜の気候だが、土が良かったのか想像していた以上によく育っているという。

    ホップはキュウリやナスといった野菜などと違い、加工しなければ商品にできない。そしてビールとして商品化するには多くの工程が必要である。だからこそ多様な働き手が活躍できる場になる可能性があると井口さんは言う。

    「おいしいビールは『場』を生むものだと思います。障がいの有無に関係なく、多くの人を引き寄せる力がある。そしてビールづくりには、畑仕事、ホップの選別、ラベルに絵を描くなど、さまざまな工程があり、子どもたちも巻き込めるアクションがたくさんあります。

    いまは誰もが安心して暮らせる『ノーマライゼーション』を目指しながら、持続可能な事業へ発展させることが大きな課題です。ホップ作りと場作りを進め、地域とつながりながら、地産地消に取り組んでいきたいと考えています」(井口さん)

    「ホップのはなし」は川崎市麻生区にあるクラフトビール醸造所、ペコラビールとコラボレーションで誕生したオリジナル商品。一般的なクラフトビールには乾燥後にすり潰して圧縮したペレットホップが用いられるが、こちらは収穫したままのフレッシュホップを仕上げに加えているので、青々と新鮮な香りが楽しめるのが特徴。ラベルは井口さんがデザインしたものだ。

    あおばホップガーデンのホップは、近隣のブルワリーの協力により、オリジナルクラフトビールとして商品化されている。今シーズンも、たまプラーザ周辺の飲食店や、イベントで提供するために準備を進めているという。

    いま進めているプロジェクトは「横浜あおば小麦」と都筑区の小規模ブルワリー「ミツメビール醸造所」とのコラボによる地産地消ビールの開発だ。こちらはかねてからの念願が叶い、フレッシュホップのみを使ったものだとか。楽しみだ。

    ホップとビール、そしてビール作りを通じて、誰もが笑顔で過ごせる場づくり。手探りで始まった、あおばホップガーデンの挑戦はまだまだこれから。ぜひ注目してほしい!

    あおばホップガーデン

    佐藤 旅宇

    フリーランスの雑誌編集&ライター

    自転車、オートバイ、車など、自由に移動できる乗り物が大好きな雑誌編集者&ライター。独身時代はキャンプをしながら日本中を走り回っていたが、現在は3人の子どもたちと、年に1度のロングトリップと週末のデイキャンプが趣味。知的障がい児を育てる父親でもあり、インクルーシブな社会の実現に向けてインスタグラム等で発信を行っている。

    Instagram : https://www.instagram.com/ryolingstones/

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