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    2016.01.22

    【SMALL TALK】Vol.2 王舟インタビュー

    b*p

    シンガーソングライターの王舟(おう・しゅう)さんは、2014年にファーストアルバム「Wang」でデビューし、テレビへの楽曲提供やCM歌唱など、活動の幅がどんどん広がっている。その彼が2016年1月20日セカンドアルバム「PICTURE」をリリースした。

    レコーディングからミックスまで、すべてひとり。制作場所も自宅。王舟さんらしさが存分に詰まった宅録音源だ。

    ↑アルバムの3曲目「Mebius」のMVが公開されていますよ!

    「ゆらぎ」を感じる音たちは、シアワセな時間を連れて来てくれる。ふんわりと流れ出てくる幸福な空気に身をゆだねたくなる。そんなやわらかい音を作る王舟さんが、どんな人なのかが気になった。幼少期から現在に至るまで、彼がどんな音楽を聞き、どんな食べ物を好んできたのか。まずは、音楽との出会いの話から。

    最初はギターの速弾きがやりたかったんですよね

     ――王舟さんは、上海生まれなんですよね? 何歳のときに日本にいらしたんですか?

    「小学校3年生のときに栃木県の宇都宮市に移住したんですよ。両親は先に日本で暮らしていて、両親に会う旅行のつもりで日本に来たら、そのまま住むことになって。準備もしていないし、日本に来たのも初めてだし、言葉もしゃべれなかったんで、最初は嫌でした」

    ――日本に来て、とくに驚いたことって何ですか?

    「きれいで、人も少なくて、空気がうまいこと! あと、自動販売機と自動ドアにも驚きました。自動販売機に1000円が飲み込まれていくところなんて、感動しましたよ!」

    ――その当時、上海で流行っていた音楽とか覚えていますか?

    「バラード調の曲がヒットチャートによく入ってたかな。歌謡曲が好きで、よく聞いていましたね」

    ――中国では、バラードブームだったんですね! 日本に来てからはどんな音楽を?

    「初めて買ったCDは、スピッツの『チェリー』。オリコンのチャートとかテレビでやっているのを見たり、歌番組とかを見て影響されていました。あとは、My Little LoverとB’zも好きだったな。音楽好きの友だちと情報交換してコミュニケーションをとっていました」

    ――友だちを作るきっかけづくりに音楽があったんですね。

    「そうですね。音楽とアニメの話で仲良くなれたかも。日本語もアニメで覚えたようなものですしね」

    ――音楽を始めたのは、いつからですか?

    「中学校のときに、友だちの家に遊びに行ったら、ギターを弾いてて。彼が何本もギターを持っていたので、1本借りて自分も弾き始めました。その時借りたのは、フェルナンデスのレスポール。エレキギターから入ったんですよね」

    ――アコースティックギターではないんですね!

    「そうそう。当時、X JAPANとか好きになった時期で、メタルとかの速弾きにあこがれていたんですよ。ギタリストがかっこいいバンドが好きだったんですよね。雑誌で『ギターヒーロ列伝』みたいな特集もやっていて、速弾きならこの人! みたいな。この人かっこいいなって思ってはCDを買ってました。でも、速弾きがうまくいかなくて! エドワード・ヴァン・ヘイレンとかイングヴェイとかもやったんですけど、イングヴェイは速すぎて全然聞き取れない。譜面を見てもわからなくて(笑)」

    ――速弾きの技術は、今の音楽に活かせている部分があったり?

    「まったくないですね(笑)。高校でオアシスを聞いて、アコースティックギターがよくなったんですよ。それまでは単音で曲を弾いてたけど、コードの良さに気づいて。コードを覚えなくちゃいけないことが型にハマっているようで、カッコ悪いなって思ってたんですけど、オアシスで目覚めましたね」

    ――自分のギターはいつ購入されたんですか?

    「高校1年のときに、フェンダーのジャガーを。久しぶりに中国に帰ったときにお年玉が溜まっているよって祖父母にどっさりもらって(笑)。それをギター代にあてました。中学から少しずつ洋楽のビルボードとかにランクインしている、リアルタイムで流行っている音楽を聞くようになっていて。オアシスを好きになってからは、ずっとそればっかり。イギリスのUKロックが好きでしたね。でも、ブリットポップが過ぎたころから好きになって。オアシスの4枚目のアルバムぐらいかな。それから過去を振り返って。60年代のUKロックやレッド・ツェッペリン、ジミヘン、キンクス、ビートルズ、有名なところは大体聞いてました」

    アコースティックギターの良さは、高校の先生に教えてもらいました

    王舟

     ――その頃からミュージシャンになりたいという思いはあったんですか?

    「高1ぐらいのときに、友だちがミュージシャンになるぞ! って言ってるのを聞いて、ミュージシャンってなりたいと思ってなれるんだ! って思って。ミュージシャンって、決まった人しかなれないものだと思ってたから。それで、やりたいことも決まってないし、音楽をやるっていう体で実家を出ようと。音楽の専門学校に行くことにしたんですよ」

    ――そこではミュージシャンになる勉強をしたんですか?

    「いや、エンジニアとかPAをやるって言ったほうが親も現実的で安心するかなと思って。でもPAをやりたかったのに、コンポーザー科に入っちゃて。レコーディング専門のPAなのかなぁとか思ってたら、作曲家って意味だったんですよ! それで行かなくなっちゃって、3、4か月で辞めちゃいましたね」

    ――あっという間に辞めたんですね(笑)。ミュージシャン活動はされていたんですか?

    「高校のときに別の高校の女の子をボーカルにしてボサノバっていうか、ポップグループみたいなのをやってました。東京でも2回ぐらいライブしたことあったんですよ」

    ――ボサノバとは、今までの音楽歴を聞くと意外なラインな気がします。

    「そうですよね。たまたま、高校の担任がボサノバを好きな人で、CDとか貸してくれたんですよ」

    ――先生と音楽の話とかされていたんですね。

    「進路相談のときに、音楽の専門学校に行きたいって言ったら、すごく厳しい先生だったのに『先生も声楽隊に参加しててな』って話してくれて(笑)。それも見に行ったりして。ジョアン・ジルベルトのライブにも行きましたよ。80歳で、奇跡の来日って言ってたから観に行ったのに、その後、3年連続で来日したのは驚きましたけど(笑)。その頃は、ヒットチャートとかじゃない音楽が好きになっていたけど、田舎だから周りでそういう音楽を好きな人があんまりいなくて、逆に音楽好きなヤツとはすぐ仲良くなって、その中に先生もいて。掃除をサボってたら、「ちょっとこい!」って声をかけられて、怒られるのかなって思ったら、いきなり「オノヨーコと出会って、ジョンレノンはシアワセだったと思うか? 俺は思わない」って話してきて(笑)。ソロになってからジョンはこうなったとか話してくれて、CDも貸してくれたんですよね。それから、島村楽器オリジナルのジェームスってギターを買ってアコースティックギターで曲を作るようになったんですよ。だから、先生の影響はあるかもしれない」

    ――ボサノババンドの後に別のバンドも組まれていますよね?

    「ロックバンドがやりたくて『AMAZON』ってバンドをやっていました。ただその時は、ベース弾いていた子がギターやりたいって言い出して、僕はベースを弾いいていたんですよ。ベースを弾きながら歌っても、快感がまったく得られなくて、ライブがとにかく乗り気じゃなかった。でも、バンドがやりたかったから5、6年所属していましたね」

    ――王舟名義で曲を作り始めたのは、いつごろから?

    「AMAZONに所属しているときから、アコースティックな音楽を聴き始めていて。宅録で『賛成』というCD-Rを作ったんですよ」

    ――それは、トクマルシューゴさんのイベントで即完したという伝説の!

    「ありがとうございます(笑)。2枚目の『Thailand』を作ったときは、すでにAMAZONを辞めています。それぐらいから、今のバンド形態でライブもするようになりました。25歳ぐらいのときですね。ゆっくりゆっくり、音楽の趣味が変わって、好きになりきったら、その音楽をやるみたいな感じでした」

    アルバムはワンルームでレコーディング

    王舟

    ――セカンドアルバムの『PICTURE』は、なぜひとりでやろうと?

    「ファーストアルバムをバンド編成で出して、それ以来、ひとりで演奏する機会も少なくなっていたんですよ。あとは、みんなでやるとスケジュールを抑えるのが大変で。ひとりでやりたいなぁと思っていたら、レーベルもいいじゃん! って言ってくれて。8か月ぐらいかけて制作しました。曲づくりよりもミックスが大変で、曲は完成していても、そこから演奏の質感を調整したりする作業に時間がかかりました」

    ――ミックスって具体的にどんな作業なんですか?

    「音がぶつかっているところを切ったりとか。例えば、パーンって鳴ったときに、「パ」って音だけがデカくて、「―ん」の部分は小さくなるけど、デカイところを潰すと裏の「―ん」の聞こえ方が変わってくる。それだけだと違いがわからないけど、すべて積み重ねていくと全然違うものになるんです」

    ――その積み重ねが、ふんわりした音を作るんですね。

    「本当は、宅録だとパキっとした音のほうがデジタルで録りやすいんですよ。でも僕は、硬いのが好きじゃなかったから、真空管のプリアンプとかアナログの機材を通したり、スピーカーから出した音をもう一回マイクで拾ったりしています。真空管のアンプは、今回小松音響研究所ってところでオーダーメイドで作ってもらいました」

    ――制作期間は、自宅が機材に埋もれていたんじゃないですか?

    「最近、機材も小型化していて、ワンルームに住んでいますけど、そのスペース内でできちゃうぐらいしかないんですよ」

    ――王舟さんの音楽の特徴のひとつとして、英語の歌詞があると思うんですが。なぜ、英語を取り入れているんですか?

    「英語って、英語圏の人じゃなくてもしゃべれるからおもしろいなって思って。1回フィルターがかかっているほうが自分の音楽には合っていると思っているんですよね。すぐにわからないぐらいがちょうどいい。英語もとくに勉強しているわけじゃないので、適当に歌っているんですけど(笑)。歌に合うように音選びをしていて。イギリスの曲を聞いていたから、発音がイギリス英語っぽいとは言われたりします。本当は、歌いたいという気持ちは、そんなになくて、歌が入っていなくちゃいけないとは思っていないんです。言葉で伝えるより音で伝えたい思いのほうが強いかもしれないですね。『ゆらぎ』が音楽には、重要なことだと思っていて、僕もそういう音楽を聞いて影響を受けてきたし。音楽をつくるうえで大事にしていることです」

    好きな食べものは油淋鶏です!

    王舟

    ――b*pの9号が食がテーマだったので、最後に好きなゴハンを教えてください。

    「油淋鶏ですね! 昨日食べた東高円寺の『満州王』が最高においしかった。古いお店で、満州の人がやっているみたいでした。あとは春巻き。宇都宮で育ったんですけど、餃子よりはダンゼン春巻き派。親が作ったものがいちばん好きですね。パリパリで、ガッツリ衣っていうよりは、皮が薄めで中身がトロっとしていて」

    ――やっぱり家庭の味は、本場の中華料理なんですね!

    「そうですもないですよ。チンジャオロースとかクックドゥとか使ってたし(笑)。上海では昔ワンタンとかも手作りだったけど、冷凍を食べたら、うまくて! 実家でもそればっかりです(笑)。ただ、日本は出汁文化だから、旨味の概念が強いけど、中国は、それよりも香ばしさを重視している気がする。食べると、立体的な味がするんですよね」

    ――自炊もされるんですか?

    「まったくしないです! 外食ばっかり。家にフライパンも皿もないですね。換気扇のない家だから、電気でお湯を沸かすぐらいです」

    ――外食派の王舟さん、おすすめのお店はありますか?

    「『松屋』の豚バラ生姜焼きとか好き。阿佐ヶ谷に住んでいたときは、『ピッキーヌ』ってタイ料理屋に行ってました。あと、無くなちゃったんだけど、高円寺にあった『香満楼』ってお店がめちゃくちゃおいしくて。その料理長、今は政府の人も泊まるようなホテルで料理長やっているらしいですよ。その人が高円寺で店やって、潰しているってすごいですよね(笑)」

    王舟さんが選ぶ好きな歌声が好きなアーティスト

    ジュディ・シル 『ジュディ・シル』

    「歌い出しの入りと、歌い終わりの声の潜め方がすごいよくて。なめらかなんだけど、タイミングはピッタリ入ってなくて。しゃべっているかのように歌っているように聞こえるんです。丁寧なんだけど、雑な部分もあって、ぬくもりがあるんですよね。歌い終わったあとのフェイドアウトするときにのタイミングとかがすごい個性が出ていて、それが好きです」

    サム・クック 『ライブ・アット・ザ・コパ』

    「とにかく歌声が良すぎて、しかも常に歌っている時は笑顔でみたいな。あれぐらい歌えるなら、僕も歌をメインで曲が作りたい。ソウルって感じるのは、サム・クックなんですよね」

     

    ●王舟 Profile

    王舟

    1984年生まれ。上海出身、栃木育ち。2010年、自主制作CDR「賛成」「Thailand」を発売し、イベントで即完する。2014年、1stアルバム「Wang」でデビュー。7インチシングル「Ward/虹」をリリース。2015年1月20日にセカンドアルバム『PICTURE』を発売し、そのアルバムを引っさげて、2月から全国ツアーも行なう。http://ohshu-info.net/index.html

    ↑セカンドアルバムには『ディスコブラジル』の宅録バージョンも収録!

    GKBR2245

    ◎文=中山夏美 撮影=小倉雄一

     

     

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