狩猟女子、畠山千春さんのシェアハウス「いとしまシェアハウス」におじゃましてきました!(詳細はビーパル2014年8月号P93をご覧ください)
場所は福岡県・糸島市、道の終わりの小さな集落にある古民家です。駐車場に大きな柿の木が枝を広げており「邪魔だから剪定しなきゃ」と畠山さん。玄関先には、シェアハウスのメンバーが育てたという、泥つきのジャガイモが置いてあります。すぐに農村らしい生活感が伝わってきました。
ただし、いとしまシェアハウスの面白いところは、そこに感度の高い若者文化がミックスされているところ。取材中に現れたシェアハウス住人の男性は、野良着を着ているけれど、頭はドレッド。どこかおしゃれで、そのまま街中を歩いたとしても違和感なし。「友だちの畑を手伝ってくる」と言い残して出かけていく彼の後ろ姿を見ながら、これまでの田舎暮らしへの固定観念が崩れ去っていくのを感じました。
取材後、畠山さんは「ぜひ見てほしい」と、家のすぐそばにある棚田を案内してくれました。美しい曲線で区切られた田んぼの層。田植え前の水面が夕刻の光を反射し、芸術的な情景を作っています。一つひとつの田んぼすべてに持ち主がいて、丁寧に手入れしていることを思うと、感心を通りこして感動がこみ上げてきます。畠山さんが地元の人たちをリスペクトしているのも納得です。
夕食は「釜揚げ牧のうどん」という、福岡県と佐賀県に20近く店舗をかまえるうどん屋へ連れていってもらいました。そのうどんは、畠山さんたち曰く「増えるうどん」。ふにゃふにゃとやわらかく、すぐに汁を吸います。そして、ふやける。もたもたしていると汁が足りなくなるので、うどんとセットでヤカンに入った汁がついてくるほどです。さぬきうどんのようなコシはまったくありません。
食べたところ、汁のダシがきいていて味はおいしい。しかし食べても食べても減りません……。汁が少なくなったので、なにげなくヤカンから注ぎ足してから、気づきました。増えている――。まるで魔法のようです。いったんふやけ始めると、うどんは口に入れる前に箸でちぎれてしまうほどやわらかくなります。すぐにまた汁がなくなったけれど、これ以上増えるとキリがないので、注ぎ足すのはやめておきました。
福岡の人は、どうしてあんなにやわらかいうどんを好んで食べるのか、関東とは文化の違いを感じます。しかし、そういえば畠山さんもドレッドの彼も関東からの移住者です。福岡に住むと、自然と牧野うどんが好きになるものなのでしょうか。増えるうどん。今度福岡へ行く際は、もっと素早く食べることにしよう。
<文=吉田真緒>