まるでグッピー!?ヒレが伸長する華麗なメダカたち

2019.03.14

メダカは用水路や水路、稲が伸びている時期なら水田の中など、流れのある水域で生息している小型の淡水魚で、流れがあるところに好んで生活している。メダカの飼育者の中には、「メダカは流れのほとんどない、水深の浅い池沼などで暮らしている」と思われている方も多いようだが、両岸に注水植物が繁茂し、水中には水草が多く生え、流れのあるところがメダカにとっては最適な生息環境だといえる。

メダカの飼育は容易で、小さめの容器でエアーポンプによるエアーレーションなく飼育できる強健性があるため、そう勘違いされがちで、生息地を見たことがない人には、「メダカがエアーレーションをすると疲れて弱ってしまう…」と思われていることもあるようだが、洗濯機の中のような急流が出来る訳ではなく、普通に流れに逆らって泳ぐぐらいのことはメダカにとっては日常だし、天然下のメダカは、流下してくる餌となるものを食べているのである。

これからの季節は屋外でメダカが産卵するシーズンである。成魚だけでなく、稚魚の飼育容器にも、適切なエアーレーションを施すことを試してみていただきたい。

さて、エアーレーションによる水流を好まない改良品種もいる。「スワロー“風雅”」「松井ヒレ長」「メラー」と呼ばれる普通体形のメダカでヒレが伸長する遺伝子を得たメダカたちである。

各ヒレの軟条の一部が突出する「スワロー“風雅”」

スワロー“風雅”と呼ばれるヒレ長メダカの一型は、青森県在住の對馬義人氏が2012年に発見、各ヒレの軟条の一部が突出する特徴を持ったメダカである。オリジナルは楊貴妃、楊貴妃透明鱗タイプであった。グッピーなど卵胎生メダカで知られるスワロータイプと同等の遺伝をするため、スワローの呼称が一般的になっている。“風雅”のブリーダーネームが付けられた楊貴妃透明鱗、楊貴妃体色ベースのスワロータイプは、新たな遺伝子を持った衝撃的な登場をしたメダカであった。それまでのメダカのヒレの変化に関係する遺伝子としては、Da 遺伝子の光体形、em 遺伝子の背ビレ、しりビレの基底が大きくなり、それぞれのヒレが大型になるものが知られていたが、スワロータイプのメダカには新しい遺伝子が関与しているのが確実となった。

このスワロータイプのヒレ長を光体形のメダカに移行させると非常に見応えがある。

光体形のメダカは、背ビレが大きいので、より優雅にヒレ長を楽しむことが出来る。光体形のメダカでスワロータイプのヒレ長にしたものは、“フレアー”と呼んでいる。

各ヒレ全体が大きく伸びる「松井ヒレ長」

“松井ヒレ長”と呼ばれるヒレ長メダカの一型は、熊本県玉名郡長洲町在住の『松井養魚場』松井勝二郎氏が一匹のオスを見つけられ、遺伝を確認、その出現率を固定したものである。尾ビレが扇状に大きく伸長し、背ビレ、しりビレも伸長するメダカのヒレに変化が生じたタイプである。スワローメダカが軟条が櫛状に伸長するのに対し、この“松井ヒレ長”メダカはヒレ全体が大きく伸長する。“松井ヒレ長”メダカのヒレが大きくなる遺伝子は潜性だが子孫に遺伝し、他品種と交配すれば子孫に遺伝する。
初期の“松井ヒレ長”メダカからは、朱赤体色、青、白、透明鱗タイプ、弱光程度の幹之、ブラック、アルビノなどが出ていた。特に“松井ヒレ長”メダカの透明鱗タイプは累代繁殖していても比較的、多く出現する傾向がある。

先週紹介させて頂いた“ブラックダイヤ”も、中里氏の手によって松井ヒレ長化されている。

こちらは、光体形の品種を松井ヒレ長化したもの。このタイプを“半月”と呼ぶ。

上の写真二点は“メラー”と呼ばれる2013 年に広島県廿日市市にある『めだかの館』で突如現れたヒレに変化を持つメダカで、最初から複数の品種で現れた。2013 年、産卵したのは6月頃だといわれ、この時期の気温、天候の変化等は後々、重要になるかも知れない外的要因である。この“メラー”メダカの特徴は、スワローメダカと少し異なり、軟条と軟条をつなぐ膜鰭の発達がところどころ止まり、ヒレの軟条だけが伸長するタイプである。この現象はdf1 という遺伝子の存在が興味深い。df1 は、胚、稚魚の時に背ビレ、しりビレ、尾ビレは一連の膜鰭にならず、膜鰭が波状に切れ込んだり、欠失したりの異常を生じる遺伝子である。しかし、これまでの観察では、df1 は、成魚ではほとんど異常が認められなくなるまでヒレの発達が回復するそうだが、この“メラー”は、成魚でもそのヒレの特徴を残しているのである。一見、スワローメダカと同型のように思われるが、実は違うということを認識しておかれると良い。

ヒレ長の遺伝子は劣性

ヒレが伸長したメダカの原型は2012年から2013年に各地で見出されており、青森、広島、熊本と離れた場所で元親が出現したのである。熱帯魚のグッピーのようなヒレの変化を楽しめるものも、改良メダカの世界には存在することになったのである。このヒレ長系統の飼育には、あまり強い水流は適しておらず、緩やかな水流を作る程度にして飼育を楽しみたい。室内で熱帯魚を飼育するように、水槽で鑑賞することもこのヒレ長メダカには適している。

ヒレ長の血統を用いて、新たな品種をヒレ長化するためには、F1では、ヒレ長の遺伝子は潜性(劣性)なので、F1同士から、あるいはF1と元親を交配して次世代を採る必要がある。最低でも半年かかる作業となるが、今春から始められれば、今年の秋には、あなただけのヒレ長系統を作ることができる。是非ともチャレンジしていただきたい。

 写真・文/森 文俊

この記事をシェアしよう!

関連記事

『 自然観察 』新着ユーザー投稿記事

『 自然観察 』新着ユーザー投稿写真

『 自然観察 』新着編集部記事

おすすめ記事