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プラスチックが海を殺す!?近い将来、海中のプラごみが魚の量を超える

2020.07.23

2020年7月1日からプラスチック製の買物袋が有料化されました。過剰なプラスチック使用の削減に向けた取り組みのひとつです。いまや生活には欠かせないプラスチックは、加工も容易で軽くて丈夫。とにかく便利な素材です。でも、なぜ減らさなければならないのか? 日本中の海をシーカヤックで旅し、海辺の暮らしを深く愛するホーボージュンさんがこの問題を取材しました。

浮遊するレジ袋やプラスチックシートをウミガメがクラゲと間違って補食する事故が頻出。プラスチックは消化されずにカメを苦しめる。 ©Troy Mayne/WWF

ウミガメの52%がプラスチックを誤飲

僕は海辺に住んでいて、SUPやカヤックで海を漕ぐのを楽しみにしている。よく漂流ごみを拾うのだが、気がついたことがある。それは「海上のごみは拾えるけど、海中のごみは拾えない」ということだ。ごみも沈んでしまえば視界から消え、なかったことになる。砂浜のレジ袋やペットボトルも波にさらわれるともう誰も気にしない。こうして海中にごみが溢れていく。

2019年5月、鎌倉の海岸にザトウクジラが打ち上げられた。近所だったので僕も見物に出かけたのだが、死骸を調べてみると胃の中から大量のレジ袋やプラスチック製品が出てきたという。日本のはるか沖を回遊する彼らにもそんな影響が及んでいるのはとてもショックだった。

WWF(世界自然保護基金)によると、少なくとも約700種の海洋生物が誤飲などさまざまな被害を受けている。そしてこれは本当に衝撃的な数字なのだが、プラスチックごみを誤飲して体内に取り込んでしまった個体の比率は、ウミガメで52%、海鳥ではなんと90%にのぼる!

「プラスチックは消化されずに生物の胃袋の中に溜まり続けます。そのため満腹であると勘違いしてしまい、食事を取らずに餓死してしまうこともあるんですよ」とWWFジャパン自然保護室の三沢行弘さんは海洋生物への影響を危惧する。

最近こういった海洋プラスチック問題がニュースで取り上げられることが増えてきた。そこで僕は、これを機にいろいろ調べてみることにしたのである。

大量生産されすぎて処理しきれていない

まずはこの問題の大枠となるプラスチックごみの現状を三沢さんに解説してもらった。

「いま世界では年間約4億トンものプラスチックが作られています。これは70年前の200倍という凄まじい増え方で、現代社会はもはやプラスチックなしでは成り立ちません。このなかには建設資材や繊維など長期間使用されるものもありますが、量的に一番多いのがプラ容器や包装で、これらの多くは使い捨てられています」

これには、レジ袋、食品トレー、アイスコーヒーカップ、シャンプー容器等が含まれ、ペットボトルを合わせると、プラごみのじつに5割を占める。

「でも、パッケージ類はリサイクルされてますよね?」

たとえば僕の町では「ペットボトル」「容器・パッケージ」「白色トレイ」「その他プラスチック」は分別するルールで、どの家庭もせっせと分別に協力している。お菓子や食品パッケージにつけられた「プラ」のリサイクルマークに従えば、またプラスチック製品として生まれ変わると(なんとなく)信じていたのだ。

「実はプラごみ全体のうち、製品や原料としてリサイクルされるのは世界では2割弱、日本国内では18%に過ぎないんですよ」

「えっ? たしか政府はプラごみの84%が有効利用されているとイバってましたけど……」

「いやいや、日本で廃棄されるプラスチック全体では、56%をサーマルリサイクル(熱回収)に頼っているんです。これはプラごみを燃やし、その際に出る熱を発電や産業に再利用する処理で、つまりは石油の代わりに(石油由来の)プラスチックを燃やしているに過ぎず、世界ではリサイクルとは呼ばないんです」

さらに衝撃的なのは日本は年間150万トンものプラごみを「リサイクル用原料」として中国等に輸出していたことだ。つまり廃棄物処理を海外に押しつけていたのである……。中国は国内での環境汚染などを理由に去年から禁輸措置をとった。日本国内の廃棄物処理業者では、行き先を失ったプラごみが宙に浮いてしまっている状態だ。

このように拡大し続けるプラスチック生産と廃棄されるゴミの量に各国の処理能力が追いつかずパンクしているのがいま一番の問題なのである。

海岸に打ち上げられたプラごみ。しかしこれは氷山の一角であり、海の中には1億5,000万トンを超えるプラごみが溢れている。 ©Miloos Bicanski/WWF-UK

大量のプラごみが海に流れ込んでいる

こうして世界中に溢れかえったプラごみが河川や海岸から海に流入したり、不法に海洋投棄されている問題を「海洋プラスチック問題」と呼んでいる。2015年の調査によると毎年800万トンのプラごみが海に流入している。これはジャンボジェット5万機分の重さ(!)であり、海にはすでに1億5,000万トンのプラごみが溢れているという。

そして2050年には、海中のプラスチックの総量が海にいるすべての魚の量を超えるかもしれないという怖ろしい試算が報告された。

「プラスチックは、極めて頑丈で安定した構造のため、数百年間も分解されずに残るといわれています」と話すのは、生物海洋学者で海洋プラスチック研究者の中嶋亮太博士(JAMSTEC研究員)。

「これがいったん海底に沈んでしまうと紫外線や熱の影響を受けないため、何世紀にも渡って存在し続ける可能性があります」

たとえばペットボトルは400年も分解されずに残るというデータもあるくらいだ。つまり僕らが死んだ後も海洋を漂い、生き物を苦しめ続けるのだ。

「その解決のためには現在の大量消費、なかでも使い捨てプラスチックの使用を大幅に減らすことが大切なんですね」

中嶋さんは研究のかたわら、自身のウェブサイト(『プラなし生活』 https://lessplasticlife.com/)を立ち上げ、プラスチックをなるべく使わないライフスタイルの提案もしている。じつは日本はひとりあたりの使い捨てプラスチック消費量が世界第2位という〝使い捨て大国〟だ。まずはここを改めるところから始めたい。

そして最近取りざたされているのが「マイクロプラスチック」の問題だ。

直径5mm以下がマイクロプラスチック。海岸のプラごみをよく見ると、粉砕されて細かくなった粒子が溢れているのがわかる。

もはや待ったなし! 海がプラスチックで埋め尽くされる

マイクロプラスチックとは直径5㎜以下の微細なプラスチック粒子のことで、細かいモノは顕微鏡で見るほど小さい。その成り立ちには大きくふたつあり、ひとつは海に流れ出たプラごみが紫外線や摩擦によって砕け、小さくなったもの。そしてもうひとつは、研磨剤に含まれるビーズや洗濯時に抜け落ちた糸くずなどが、下水処理施設を通過して海へと入るものだ。

こういった微粒子は海流に乗って世界中に拡散し、日本の周辺海域は世界平均値の27倍という「超濃厚なプラスチックのスープ」になってしまっている。また最新調査によると、水深1万mのマリアナ海溝の海底生物の腸からもマイクロプラスチックが検出されるなど、その拡散ぶりが懸念されているのだ。

マイクロプラスチックの最大の問題点は、動物プランクトンや小魚が餌と間違えて食べ、海の食物連鎖に組み込まれてしまうことだ。プラスチック自体の毒性はもちろんだが、より深刻なのは、プラスチックにはPCBなどの有害化学物質を吸着する性質があること。海中の毒を集め、それが魚介類を経て濃縮され、最終的には人間の口に入る危険性がある。

「こういったマイクロプラスチックの中にはフリースから抜け落ちた糸くずや、風化した化学繊維の生地も含まれます。私たちはいまその調査に乗り出しているところです」と、話すのはパタゴニア日本支社の篠 健司さん。

日本企業の取り組みは非常に遅れているが、欧米のアウトドアブランドはいち早く対策を講じ、未来に向けての改善に動いている。パタゴニア、アークテリクス、REI、MECなどは海洋環境保護団体「オーシャンワイズ」に委託し、使用する生地や繊維の環境への影響調査と研究を行なっている。

同社はアークテリクスなどアウトドアメーカー数社と環境団体に調査を委託、カナダのバンクーバー湾の研究拠点で洗濯によってどの程度の繊維が流出するのかや、ウェアの生地を海水や紫外線に晒し続けることでどのくらいの破壊が進むのかなどの研究をしている。

「微細な糸くずがどんな影響を人間や生物に与えるのか、詳しくはわかっていませんが、アウトドア産業が化繊に依存しているのは事実なので、調査は将来の製品開発に生かす予定です」

オーシャンワイズのラボではアウトドアウェアに使われるさまざまな生地を紫外線や海水に1年間晒し変化を調査している。

では、僕らアウトドアズマンができることはなんだろう?

「洗濯の際に目の細かい洗濯ネットを使うことで、フリースなどのシェディング(抜け落ち)が流出することを防げます。下水処理場でのフィルタリングには限界があるので、これはとても効果的なことです」

同社のウェブサイトや直営店ではモノフィラメント(長繊維)を使った洗濯ネットを販売していて、非常に好評だという。

「そしてこれはきれい好きな日本人にはちょっとハードルが高いですけど、あんまり洗濯をしないこと、そして質の高い製品を選ぶことです(笑)。フリースはそんなに汚れるものじゃありません。シーズンの終わりに一度洗えば十分。ダートバッグらしく暮らしましょう(笑)」

ダートバッグというのは“なにかに夢中なヤツ”というスラングだ。泥だらけになって地球と遊び、おおらかに暮らすことが一番エコなのかもしれない。

 

※構成/ホーボージュン 

※この記事は、2019年BE-PAL9月号と10月号に掲載されたものを再掲載しています。

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