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漫画家で天然食材ハンター!? 食べるもののほどんどを”獲る”アキヤマヒデキさんの暮らしに迫る

2021.07.14

食べものは、自然の中から獲ってくるのが基本

漫画家のアキヤマヒデキさんは、20年以上暮らした東京を離れ、10年前に山あいの村にUターン。街まで車で1時間という田舎で、食べもののほとんどを獲って暮らしているという。野菜を作ることはできても食材を「獲ってくる」とは? ただの田舎暮らしとは、ひと味違ったそのライフスタイルについて、話を聞いた。

B:20歳のときに上京されたそうですね。

アキヤマ:はい、その当時は、田舎が嫌だと思っていて、都会に行きたかったんですね。兵庫県が地元なんですがリュックサックを背負って、歩いて上京したんです。東京というところがどれくらい遠くにあるのかを知りたいのもありました。実際、新幹線で行くより歩いて行くほうが宿泊代やらでお金もかかったんですよ(笑)。でも自分の力で東京に行ってやるという親離れの気持ちもあったんだと思います。
東京に着いて、まず周りに山がないことに驚きました。田舎だと少し車で走ればすぐ山にぶつかりますが、東京の都心はどこまで走ってもビルの山。平衡感覚がないというか、バランスをとって立っていられないような不安にかられました。慣れない土地で、言葉もよくわからなくて、何もかも噛み合わないと思っていましたね。
田舎に戻ってきて、何がいいというのがハッキリとはわからないのですが、何もかもやりやすいという感覚があります。歯車がピタっとハマってくるというか、メンタル面での落ち着きを感じますね。いつ死んでも怖くないという安心感もあるんです。

B:今のお住いは街まで車で1時間かかるそうですが、東京はすぐコンビニがあったりと便利な場所です。それでも田舎のほうが安心感がありますか?

アキヤマ:そうですね。便利でも東京で欲しいものはなかなか手に入らない気がしていました。子供の頃から、いろいろなものを獲ることが好きだったのですが、東京ではその行為もやりづらい。できなくはないのでしょうが、田舎ほど自由さはありませんよね。今は、山や川から、食べるものを獲ってきて生活していますが、東京でそれをするのは難しい。漫画の1話でも登場しますが、畑を荒らしにくるイノシシやシカ、アナグマを罠猟で獲ったり、夏は川からウナギやカニにアユにスッポンを、春は山菜、秋はキノコを山から獲ってきています。海の魚を食べたいときは、漁師とシカやイノシシの肉を物々交換することもありますよ。野菜は通年で作っているので、スーパーから食材を買うことはほとんどありません。

B:スーパーで食材を買わないというのはすごいですね。そもそも、食材を獲って生活をしようと思ったのは、なぜですか?

アキヤマ:東京より田舎のほうが支出は少ないですが、どこで暮らすにもある程度お金はかかります。実家に住めば家賃はかからないのですが、それでも生活は苦しい。それでまずは野菜を作ろうと思って、親にも手伝ってもらい畑を耕しました。でもやっぱりタンパク質、肉や魚が食べたいじゃないですか。それであまりお金をかけずに食べられる方法を模索していたときに、猟期であれば農作物を守るための保護柵に引っかかったシカを肉にして食べていいと知りました。コレだ! と思ったのですが、そんなに簡単ではなくて…。ただ駆除されて、そのまま廃棄されるのはもったいないとも思いました。それで次にシカが引っかかったときには、バールで仕留めて…それから解体し、肉にしたんです。

アキヤマ:東京にいた頃に肉屋でさばくのを見ていたことと、絵の勉強をしていたときに人体模型を描いていたので、筋肉のつき方がなんとなくわかって、それをもとに解体しました。初めて食べたシカ肉は、やや血抜きが足りなかったですが、それでもやっぱりおいしかったですね!

B:それから罠猟の免許をとられたんですよね。イノシシを殺すときに、バットで一撃して仕留めているのが衝撃的でした。銃のほうが良さそうにも思うのですが、銃の免許にされなかったのは、理由があるんですか?

アキヤマ:バットで仕留めるのは、ものすごく恐ろしいんです。命がけですよ。でも、それよりも獲りたい衝動が前に出て、いってしまうというのがありますね。それぐらい食べたい欲求が強いんだと思います。罠のワイヤーが切れたら、こちらがイノシシに襲われますからね。それでも罠猟にこだわるのは、肉をおいしくいただくためです。銃で撃ってしまうと血抜きがあまくなってしまうので、罠で獲ったもののほうがおいしいと思うんです。それが大きいですね。
このやり方で、1年を通して自分たちが食べられる分のみならず、おすそ分けできる分の肉も確保できるようになりました。

好きなことばかりして暮らしている

B:狩猟もやるようになって、生活面も安定しましたか?

アキヤマ:そうですね。漫画関係の仕事でしか収入が得られなかったのですが、今は捕まえたイノシシやシカは駆除料が県からもらえたり、血抜き腹抜きしたシカの販売をして収入を得ています。それ以外に、ハチミツ、ウナギ、スッポン、キノコ、山菜も売っていますよ。ナンプラーは販売するのに許可がいらないので、近所の池で獲れた小さいエビや海で獲ったイワシのナンプラーも売っていて、肉醤というイノシシを塩漬けにしたお醤油も人気です。

B:漫画家もやって、食材を獲って、売って、忙しいですね!

アキヤマ:よく締め切りに遅れて怒られています…。自然が相手なので、どうしても今日行かないとダメという日があって、そっちを優先してしまいがちなんですよね。
狩猟採集生活は、やっていてものすごく楽しいんです。田舎に戻ってきてから、好きなことしかやっていません。本来の人間の暮らしに戻った感覚があるんです。食材を自然から獲ってくる人を「天然食材ハンター」といわれたりするんですが、僕はその役目は食べるものを獲るだけではなく自然との繋がりを伝えていくことだとも思っていて。動物にしろ、植物にしろ、命あるもののやり取りは、人間が古来からやり続けていること。その恵みに感謝することを忘れたくはありませんね。

【著者紹介】

アキヤマヒデキさん
子供の頃から生き物を獲るのが好き。上京後、挿絵を描く仕事を経て漫画家に。実体験を題材にしたワイルドライフの漫画『ボクらはみんな生きてゆく!』が話題。現在、第1集が発売中。2021年8月30日に第2集発売予定。

 

構成・文=中山夏美

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