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ロゼットの英名はOncidium
ラン科の多年草。中南米原産。唇弁は主に黄色で、花弁は褐色の模様が入る。切り花または鉢植え用。オンシジウムとも。

友人に頼まれて、洋ランの絵を描いた。薄っぺらい黄色の地に、細かな茶色の斑の入るランだ。
以前にパフィオペディラムという洋ランを描いたが、リアルに描くのに苦労したことを思い出した。友人に「なんでオンシジュームなんだよ……」と聞くと、「この花は女性がスカートを広げて踊る姿に見立てて、『ダンシング レディーオーキッド(Dancing lady orchid)』という、素敵な名前もあるのよ」という返事だった。
あ、そう……と、私は花屋に行って、花付きの良い枝を一本買ってきて、花と画用紙をにらめっこしながら、二日がかりで仕上げた。
絵の出来は別にして、なんでこんなややこしい模様なんだろう……と、神の好みに呆れてしまった。
だが、ランに限らず、なんとも不思議なつくりの花はたくさんある。種による個性といえばそれまでだが、フェンスに絡みつくトケイソウの大型な花などは、まるで宇宙船のようだし、枝葉に触れると嫌なにおいのするカリガネソウの花などは、雄しべと雌しべだけが長く突き出ている。
春の山地の湿地などで見つかる、コチャルメルソウの形には、きっと誰もが声を失う。1㎝にも満たないこの花の不思議なつくりは、人間の思いつきではないに違いない。
大小は別にしても、花はみなひとつひとつが個性的な美しさだが、山地の林のへりなどで見つかるツル性のイケマは、五弁の花がごちゃごちゃ固まって咲き、これなどは神の手抜きに違いない。
私のオンシジュームの絵は、友人が友人の結婚祝いにあげたらしく、後日、私のところへお礼を届けてくれた。
なんと、お金! いやぁ、これはいいや。これなら頼まれたら喜んで描こう。

大柄なトケイソウの花。

雄しべ、雌しべが長く突き出るカリガネソウ。

ぜひ一度は見てほしい、コチャルメルソウ。

ボール状に固まって咲くイケマ。
(BE-PAL 2026年1月号より)







