プロスキーヤー三浦豪太が語る、自然と街との境界線で冒険を試すことの意義 | 海・川・カヌー 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

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2025.12.28

プロスキーヤー三浦豪太が語る、自然と街との境界線で冒険を試すことの意義

プロスキーヤー三浦豪太が語る、自然と街との境界線で冒険を試すことの意義
【前回までのお話】
低山ながらも切り立つ尾根を持つ八剣山を子供たちと登り……。
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三浦豪太の朝メシ前 第15回 

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プロスキーヤー、冒険家 三浦豪太 (みうらごうた)

1969年神奈川県鎌倉市生まれ。祖父に三浦敬三、父に三浦雄一郎を持つ。父とともに最年少(11歳)でキリマンジャロを登頂。さまざまな海外遠征に同行し現在も続く。モーグルスキー選手として活躍し長野五輪13位、ワールドカップ5位入賞など日本モーグル界を牽引。医学博士の顔も持つ。

アーバンアドベンチャー 〜豊平川大冒険&職務質問〜

2021年8月6日。札幌では東京オリンピック競歩競技が行なわれていた。〝札幌で東京オリンピック〟というのもおかしいが、猛暑の東京を避け、比較的涼しい札幌で開催するのは理にかなっているだろう。しかしそれでもこの時季、札幌ですら連日30度Cを超える真夏日が続いていたのだが。
 
その競歩の号砲が鳴った早朝5時半、僕たちBBF(朝メシ前クラブ)のメンバーは、札幌市の中心部を流れる豊平川の南大橋に集合していた。
 
目的は、僕がずっとやってみたかった「豊平川でのSUP(スタンドアップパドルボード)」だ。
 
SUPとはサーフボードのようなボードに立ち、1本のパドルで左右を交互に漕ぐことで水面を進むウォータースポーツのことで、定山渓の上流あたりではSUPが人気のアクティビティーになっている。
 
だが、僕が狙ったのは上流ではなく、札幌市の核心部。人や車が橋の上を往来している街中でありながら、豊平川本来の野生を感じてみよう! というBBF定番のミスマッチな挑戦である。
 
豊平川は、札幌市民にとって特別な存在だ。市の中心を東西に分け、両岸にはジョギングやサイクリングができる遊歩道が整備されている。休日にはバーベキューをする家族連れも多い。僕の事務所も実家も豊平川の近くにあり、いつもその景色を眺めながら走ったり自転車を漕いだりしてきた。
 
豊平川を下っていくと石狩川に合流し、さらにその下流では広い湿地帯が広がる。そしてその先は広大な海に流れ込むのだが、豊平川が海に繫がっているということを実感するときがある。
 
札幌の中心部でカモメの鳴き声が聞こえることがある。カモメは石狩川から豊平川を伝って街まで来たのだ。
 
また秋になれば、鮭が川を遡上してくる。僕が小学生のころに始まった

「カムバックサーモン運動(1978年に豊平川で開始され、全国へ広まった市民運動)」は今では実を結び、自然回帰した鮭が海から戻ってくるようになった。豊平川は街の中にもいくつか支流があり、ススキノ近くの鴨々川や、平岸の精進川といった小さな川にまで、銀色の背中をした大きな鮭が上がってくるのだから驚きだ。
 
彼ら(鮭)が北太平洋からベーリング海、オホーツク海をめぐり、再び豊平川を通じて街の小さな支流に帰ってくる姿に想いを寄せると、それはまるで奇跡のような出来事に思える。
 
そんな自然と都市が交わる川を、SUPで涼みながら下ってみたい、
と夏の暑いある日に思い立ったのだった。

都会の〝川〟で遊び、冒険するためのルール
 

この招集に応じてくれたのはタンナカ君とS氏、S氏の店で働くケンさんである。僕ら4人はススキノの事務所近くに車を止め、インフレータブル式のSUPを背負って、南大橋まで歩いた。計画は、川の流れに身を任せて下れるところまで行き、最後はジョギングで戻るというシンプルなもの。おおよそ5〜10㎞の行程を想定していた。
 
SUPを膨らませ、いざ川へ。大冒険の始まりだ。普段は山や森の中で自然を感じることが多いけれど、街の中に潜む自然=野生を探すのも僕にとっては同じくらい魅力的だ。
 
日常のすぐ隣にある非日常を感じる瞬間、心が高鳴る。
 
豊平川の流れは思っていたより速い。街中の川としてはかなりの激流といっていい。僕たちは全員ヘルメットとライフジャケットを着け、慎重にボードを進めた。流れに翻弄され、石にぶつかり、立ち上がるのもひと苦労。でもそれが最高に楽しかった。
 
時にはボードから落ち、仰向けで流れに身を任せる。その心地よさと、川面から見上げる札幌の街の景色は新鮮だった。
 
しかし、そんな冒険気分も長くは続かなかった。川沿いの遊歩道に、制服姿のふたり組が見えた。警察官だった。
彼らは川岸から手を振り、「君たち、何をしているの? すぐ上がりなさい!」と叫んでいる。僕たちはSUPを岸に寄せ、渋々上陸した。
 
……職務質問である。
 
岸に上がると、「近隣から通報がありました。川で何をしているんですか?」と眉間に皺を寄せて真顔で問い詰められた。

「SUPです」と僕。
「誰の許可で?」
「え、許可いるんですか?」
「当然必要だろう」
「何の許可ですか?」
「それは……君たちが調べなさい」
 
こうなるともう漫才だ。つまるところ、警官も通報があったから呼び止めただけで、なぜそれが悪いのかもわかっていないようだった。これ以上の押し問答をしても仕方がない。
 
SUPの中止を決めてジョギングしながら車を取りに戻った。わずか40分の大冒険だった。
 
その後、近くのファストフード店で朝食をとりながら反省会。どうにも腑に落ちない僕たちは、札幌河川事務所のウェブサイトを確認してみた。すると、僕たちはそれほど間違ったことをしていないことがわかった。
 
イベントのように川を〝占有〟して使う場合には届け出が必要だが、少人数でのレクリエーション利用で、河川敷を占有しない場合は、特に届出の義務はない。リストには考慮すべき安全装備やマナーが記してあるが、自己責任の上、ウォータースポーツをする分にはまったく問題ないのだ。
 
ただ〝街の川で遊ぶ〟という発想自体が、まだ一般的ではなかっただけなのだろう。
 
今回の反省点はふたつ。事前にもう少し河川のルールを確認しておけば、警官への対処がもっと冷静に対処できただろうということ。もうひとつは時期。オリンピック期間中という特別な期間に早朝から川で騒いでいたら、そりゃ通報もされるということ。国際行事があるときは警備が厳しくなるのは当然だ。
 
あらためて思った。ちょっとした冒険心があれば身近な場所にもあっと驚くような場所がある。目線の先を変え、発想を転換し、それを行動に移すことによって、そこで出会う景色はこれまで見たことがない新鮮なものとなる。
 
同時に豊平川のように都会に流れ込む川は単なる河川ではなく、「自然と人のルールの境界」にある場所だということ。人が住むところにはルールがある。これらのルールは人が快適な暮らしや安全を守るためにある。ルールを無視して行なうと、それはただのならず者である。自然のルールと人のルール、両方知ってこそのアーバンアドベンチャーである。

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豊平川でのSUPといえば……定山渓温泉街あたりが定番だが、BBFの面々はあえて街中で決行した。ここで浮かぶのもオツ。

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写真提供/かわたびほっかいどう事務局

市街地を北へ流れ、石狩川と合流する豊平川(右岸)。

(BE-PAL 2026年1月号より)

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