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炉端焼きとはどんな料理?

炉端焼きは、古くから日本人の生活に寄り添ってきた囲炉裏を利用した、炭火の炎と共に味わう食文化です。まずは、炉端焼きの調理スタイルについて見ていきましょう。
伝統的な炭火調理スタイル
炉端焼きとは、日本の伝統的な囲炉裏(いろり)を囲んで楽しむ炭火焼き料理のスタイルです。
もともと『炉端』という言葉は、囲炉裏の『炉』の端に、人々が集まって食事をする様子から生まれました。魚介類や肉、野菜など旬の食材を、店員が炭火で丁寧に焼き上げ、客席の目の前で提供してくれるのが昔ながらの形です。
一方で、店舗によってスタイルの違いもあります。店員が仕上げる本格的なスタイルのほか、各テーブルに小さな炭火コンロを設け、客自身が好みのタイミングで食材を焼きながら楽しむ『セルフ焼き』形式を採用する店もあります。
炉端焼きの魅力
香りや音まで五感で楽しめる炉端焼きには、ほかの炭火料理にはない特有の魅力があります。バーベキューや浜焼きとどう違うのかを知ることで、その良さがより際立って見えてくるはずです。ここでは、それぞれの違いを比較してみましょう。
炉端焼きとバーベキューの違い
どちらも『炭火焼き料理』ですが、炉端焼きとバーベキューには大きな違いがあります。
バーベキューは、参加者自身が肉を中心に豪快に焼きながら、仲間とわいわい楽しむスタイルが一般的です。大量に焼いてシェアするのが特徴で、食べることと同時に、にぎやかな時間そのものを楽しむレジャーといえます。
一方、炉端焼きは、主に魚介類や野菜を楽しむ調理スタイルで、香り・音・目の前での調理風景までが味わいの一部として捉えられています。
もちろん会話もはずみますが、目的はにぎやかに盛り上がるよりも、素材そのものを粋に味わうことです。バーベキューが開放的な宴ならば、炉端焼きは落ち着いた語らいとぜいたくな食体験だといえるでしょう。
炉端焼きと浜焼きの違い
炉端焼きと似た料理に、『浜焼き』があります。どちらも海鮮を炭火で焼くスタイルですが、成り立ちや楽しみ方は異なります。
浜焼きは、漁港や海辺で水揚げされたばかりの魚介類を、その場で焼いて食べるのが特徴です。漁師町ならではの新鮮さと豪快さが魅力で、屋外の開放的な雰囲気の中で味わえます。
これに対して炉端焼きは、囲炉裏や炭火コンロを使い、室内でじっくりと食材を焼き上げるスタイルです。旬の魚介や野菜を、焼き手が絶妙な火加減で提供するため、繊細な味わいを堪能できます。
浜焼きは漁港グルメとしての新鮮さと豪快さが魅力であり、炉端焼きは炭火の香ばしさと丁寧な味わいが楽しめる料理といえるでしょう。
炉端焼きの発祥とされる名店
日本各地で親しまれる炉端焼きですが、そのルーツには忘れてはならない名店があります。仙台で生まれた元祖の店、海鮮文化が息づく釧路の名店、それぞれの地で育まれた炉端文化をひも解いてみましょう。
宮城県仙台市「郷土酒亭 元祖 炉ばた」
炉端焼きの元祖とされるのが、仙台市国分町にある『郷土酒亭 元祖 炉ばた』です。戦後間もない1950年に開業し、70年以上にわたって日本の炉端文化をけん引してきた老舗です。
店内は古民家風の落ち着いた佇まいで、囲炉裏をコの字型のカウンターで囲んだ空間では、焼き手と客、さらに客同士の交流が自然と生まれます。
約200年の伝統を持つ看板酒『天賞本醸造』は、燗酒を大きなしゃもじに載せて渡される伝統的なスタイルが評判です。料理は季節の魚介や東北の郷土料理を中心に、奥深い味わいを楽しめます。
【公式】郷土酒亭 元祖 炉ばた – 70年の歴史「炉ばた」発祥の店。郷土料理を燗酒で味わう風情ある居酒屋
北海道釧路市「炉ばた」
海鮮炉端の名所として知られるのが、北海道釧路市です。1951年創業の有名店『炉ばた』は、釧路を代表する炉端焼き文化を築き上げてきました。
店構えは、かつて実際に使われていた船番屋を改装したもので、木の温もりあふれるレトロな雰囲気が訪れる人を惹きつけます。
提供されるのは、道東近海で水揚げされた新鮮な魚介です。炭火の扱いに長けた焼き手が、素材の旨味を最大限に引き出すよう絶妙な火加減で焼き上げます。
囲炉裏越しに提供されるそのスタイルは、ライブ感と郷愁を併せ持ち、まさに釧路の食文化を象徴する存在といえるでしょう。
炉端焼きにおすすめの食材3選

素材の旨味を最大限に引き出すのが、炭火です。だからこそ、炉端焼きでは食材選びが楽しみの一つです。定番の魚から旬の貝、そして野菜まで、炭火でこそ輝くおすすめ食材を紹介します。
炭火焼でうま味が凝縮「ホッケ」
炉端焼きの定番といえば『ホッケ』です。北海道を代表する魚で、身がふっくらと厚く食べ応えがあります。炭火で焼くことで脂がじんわりとにじみ出し、香ばしさと旨味が一層引き立ちます。
中火でまず身の方から丁寧に焼き、全体がきつね色になったら、ひっくり返して皮目を焼くことがポイントです。
最後に、皮がパリッとするまでじっくり焼けば完成です。外は香ばしく、中はしっとりとジューシーに仕上がり、白ごはんにもお酒にも相性抜群な一品となります。
下ごしらえが肝心「ホタテ」
北海道の炉端焼きで外せないのが『ホタテ』です。殻ごと焼くことで、うま味が逃げずにぎゅっと凝縮され、貝柱はプリプリ、貝ひもは香ばしく仕上がります。
ただし、おいしく焼くには下ごしらえが重要です。あらかじめ身を殻から外しておけば、殻の上で身だけひっくり返せばよいので、だしをこぼす心配が少なくなるでしょう。
網をしっかり熱してから強火で一気に焼き上げ、9割ほど火が通ったら食べ頃です。しょうゆを垂らすと香ばしさが増し、バターを加えれば濃厚でコクのある味わいになります。
食感の違いを楽しむ「ヤマイモ」
魚介だけでなく、野菜も炉端焼きに欠かせません。特におすすめなのが、『ヤマイモ(長芋)』です。
皮をむいて約2cmの輪切りにし、炭火で焼くと、シンプルながら奥深い味わいが楽しめます。さっと焼けばシャキっとサクサク、じっくり火を通せばホクホクとした甘みが引き立ち、同じ素材でも調理時間で表情が変わるのが魅力です。
味付けはバターしょうゆやポン酢がおすすめで、お酒との相性も抜群です。海鮮に加えて野菜を取り入れることで、炉端焼きの楽しみが一層広がるでしょう。
セルフ炉端焼きに!おすすめグリル2選
「自宅やアウトドアでも炉端焼きを味わいたい!」という人は少なくありません。そんな願いをかなえてくれるのが、炉端焼き風の卓上グリルや専用器具です。ここでは、おすすめのグリルを二つ取り上げ、それぞれの特徴を紹介します。
ロゴス「LOGOS 卓上炉端グリルM」
本格的な炭火の味わいを楽しみたいなら、ロゴスの『LOGOS 卓上炉端グリルM』がおすすめです。
卓上でも使える横長デザインで、省スペースながら複数の食材を一度に焼ける実用性が魅力です。囲炉裏を囲むように座って、まさにお店さながらの炉端焼き体験ができます。
最大の特徴は、火床を左右にスライドできる仕組みです。焼いている途中でも炭を簡単に継ぎ足せるので、火力を落とさずに焼き続けられます。
炭火による香ばしさとジューシーさは格別で、屋内はもちろんキャンプや庭先で、自分たちだけの炉端焼きを味わいたい人にぴったりの一台です。
ロゴス LOGOS 卓上炉端グリルM
サイズ:約幅50×奥行23.5×高さ18cm 重量:約2.4kg
IWATANI「カセットガス炉ばた焼器”炙りやII”」
手軽さを求めるなら、IWATANIの『カセットガス炉ばた焼器”炙りやII”』が一押しです。炭を使わず、手軽にセットできるカセットガス式なので、火起こしの手間がありません。
赤熱させた輻射板の熱で食材を焼くため、火力が安定しており、焼きムラが少ないのも魅力です。ダイヤル操作で火力調整も自在にできるので、食材に合ったベストな火加減で調理できます。
時短と手軽さを両立しながら、雰囲気ある炉端焼きを楽しめる、アウトドアユーザー必携の一台といえるでしょう。
IWATANI カセットガス炉ばた焼器”炙りやII”
サイズ:40.9×21.4×13.4cm 重量:約2.4kg
まとめ
炉端焼きの魅力は、炭火の上で食材がじゅうじゅうと音を立て、香ばしい匂いが広がる瞬間といった『体験そのもの』にあります。口に運べば、海鮮や野菜の旨味が炭火によってぎゅっと凝縮されていることが分かります。
バーベキューのようなにぎやかさも楽しいですが、静かに語らいながら、旬の恵みを一品ずつ丁寧に味わえる炉端焼きのぜいたくさも捨てがたいものです。
釧路や仙台の老舗を訪れるのも、自宅やアウトドアで気軽に再現するのもよいでしょう。「次はどんな食材を炭火にのせようか」というワクワクを感じながら過ごせるのが、炉端焼きの真骨頂です。