
日本のアウトドア文化を切り拓いた名車「ジムニー」の歴史
長い戦争の時代が終わり経済復興を目指すなか、必要とされたのは道を選ばず走れ、耐久性とメンテナンス性に優れた四輪駆動車だった。ジムニーは1970年、狭く険しい山岳地域や降雪地帯にも対応する軽4WDとして発売された。
維持費の安い軽規格の「プロの道具」は、スポーティーなデザインを採用することで商用以上の魅力を放ち、自由を愛する若い世代のソト遊びグルマとしても絶大な人気を獲得。以来、ラダーフレーム(※1)や固定軸のサスペンション(※2)、パートタイム4WD(※3)という構成を継承しながら、高速道路の移動や普段使いに適した快適な乗り味に向上している。
商品としての在り方を変えることなく、時代に応じたアップデートを施していく手法は、名品と称される野外道具にも通じる。アウトドアズパーソンの心を惹きつける理由は、そこにある。たとえ険しいフィールドを目指す機会は減っても、溝の深いわだちや大雨でできたぬかるみ、大きな石が転がる川の中流域に遭遇したとき、「プロの道具」の安心感に満たされるのだ。
最新モデルのジムニー ノマドなら、家族や仲間たちとの冒険もしやすい。同乗することでソト遊びの楽しさを体感した若い世代が、次のアウトドア文化を切り拓いていくに違いない。
1970年 初代 LJ10(軽自動車規格)
日本の環境に適した「プロの道具」誕生

全長3mを切る車体に359cc空冷2サイクル2気筒エンジンを搭載。幌型タイプのみで室内は鉄板むき出し。そんな無骨なスタイルが、高度経済成長でレジャーを楽しむようになったユーザーの行動を後押しした。
1972年 初代第2期 LJ20(軽自動車規格)
屋根付きのバンタイプが初登場

新たに水冷2サイクル2気筒エンジンを搭載し、中・低速のトルクが増して登坂性能が向上。水冷エンジンを搭載し、ヒーター能力向上にも寄与している。フルメタルボディのバンタイプも追加された。
1977年 ジムニー8 SJ20(小型車規格)
初の小型車規格

1976年、軽規格変更に対応して550ccエンジンを搭載(SJ10-1型)。翌年には車体も拡幅され、初の小型車登録車(800ccエンジン)「ジムニー8」が登場した。
1981年 2代目 SJ30(軽自動車規格)
フルサイズボディーでソト遊びにも対応

軽自動車規格いっぱいのフルサイズが生む広いキャビン、都会的なスタイリングで幅広い層に支持される。最後の2サイクルエンジン(※4)車として、今なお根強い人気を誇る。
1982年 ジムニー1000 SJ40(小型車規格)
小型車登録の"でっかいジムニー"

小型車クラスに水冷4サイクル1ℓエンジンを搭載したSJ40が登場。優れたオフロード性能から海外市場で人気が高かった輸出モデルを国内で発売したもの。
1986年 2代目第2期 JA71(軽自動車規格)
4サイクル・ターボエンジン搭載!

軽規格のジムニーでは初めて、電子制御燃料噴射及び4サイクル3気筒ターボエンジン(550cc)を搭載。排気量の余裕と5MTの搭載(従来型は4MT)による静粛性が高く評価された。2サイクル車も併売(~1987年)。
1990年 2代目第3期 JA11(軽自動車規格)
新・軽規格にアップデート

軽規格変更で排気量が660ccに拡大されたのに伴い、アップデート。足回りの見直しでオン/オフ共に乗り心地と操縦安定性が向上。アウトドア人気を支える存在に。
1993年 ジムニー1300シエラ JB31(小型車規格)
RVブームを牽引した"シエラ"

国内では一時期途絶えていた小型車登録のジムニーが「ジムニー シエラ」として復活。3AT車も設定され、骨太のフロントグリルガードや大型のフォグランプは、当時高まっていたRVブームを象徴する装備だった。
1998年 3代目 JB23(軽自動車規格)
安全性を高め洗練されたつくりに

17年ぶりの全面改良。丸みを帯びた車体は空力効果及び衝撃吸収構造に優れる。ATは4速となり、さらに広くなった室内と併せて、快適なドライブをサポート。
2018年 4代目 JB64(軽自動車規格)/ジムニーシエラ JB74(小型車規格)
レトロモダンスタイルで新たなファン獲得

歴代モデルのイメージを取り入れてモダンに表現した現行型は、衝突被害軽減ブレーキをはじめ安全技術を搭載。カジュアル化が進む現代のソト遊びに対応した完成度を誇る。ボディーカラーも豊富に。
2025年 ジムニーノマド JC74(小型車規格)
シリーズ初の5ドア車がソト遊びを変える

海外向けに発売されていたジムニー シエラの5ドア版を国内導入する形で登場。全長及びホイールベース(前後車軸間の距離)を340㎜拡大、後部座席の着座位置も後ろに移動。家族での遠出も快適に!




※1:梯子型のフレームで上にボディーが付く。万が一ボディーが破損してもフレームにダメージが及ぶことが少なく、走り続けられる。
※2:左右の車軸が連結されているため対荷重性能に優れるほか、不整地では片輪が凸路面で跳ね上がるともう片輪が押し下げられ、駆動力が効率よく路面に伝わる等の長所がある。
※3:2WD/4WDを手動で切り替える方式で、4WDモードでは4輪に最大限の駆動力が均等に伝わり、不整地での走破性を高める。※4:2工程で1回の爆発を行なう(吸気&圧縮→燃焼&排気)2サイクルエンジンは構造が簡単で軽量、メンテナンスも比較的容易なため、過酷な走行状況では長所となる。
※構成/櫻井 香 写真提供/スズキ
(BE-PAL 2025年7月号より)