山歩きを楽しめて、その先に温泉があれば、ソロ活にも気合が入るというもの。そこで秘湯探検家の渡辺裕美さんが、激推しのスポットをご紹介!
私がガイドします! 秘湯探検家 渡辺裕美
秘湯や野湯にひとりで行くのが大好きな秘湯探検家。これまで巡った温泉は国内外ふくめ2,500か所以上。著書に『絶景温泉ひとり旅 そろそろソロ秘湯』(小学館)など。
行ってきたのは……白馬鑓温泉(長野県)
徒歩約4時間20分
難易度 ★★★★
●コースタイム:約4時間20分/猿倉荘(20分)-鑓温泉登山口(2時間)-小日向コル(40分)-サンジロ(30分)-杓子沢(30分)-鑓温泉下(20分)-鑓温泉小屋
●アクセス:JR大糸線白馬駅から猿倉登山口まではバスで27分。
楽しく歩けて至福に浸れる「ソロ秘湯ハイク」のススメ
人の往来もほぼない地にひっそりと湧く「秘湯」。そんな秘密の場所を目的地とするハイキングは、自分だけが目にする景色や珍しい植物とも出合え、道中も大いに楽しめる。もちろん、最後は新鮮な湯に浸って心身をリフレッシュ。更にソロ旅なら、自分を解放させる瞬間を見出しやすい。そんな「秘湯ハイク」の格好のシーズンが、登山道の雪が解ける夏だ。中でもお薦めしたいのが、白馬鑓ヶ岳の中腹に湧き、高山植物の宝庫「白馬鑓温泉」を目指すコース。
白馬連峰は、夏でも豊富な残雪があるエリア。雪どけと同時に、一斉に咲き誇る高山植物の可憐さは目を見張るものがある。地元のガイドさんもたくさんいるので、山登りに自信のない方や女性同士でも一緒に登ってもらうことができ、安心だ。
標高2100mまで登り、露天風呂から爽快な青空と山の稜線ビューを楽しみたいなら、現地にお昼までに到着したい。逆算すると、朝5時半に登山口を出発するのが理想。登山口から徒歩2時間までは登りが続き、ハァハァいいながら休憩スポット小日向コルへ到着。平場でザックを下ろして、至福のお弁当タイムを♪
コルから更に歩み進めると、サンジロを過ぎたあたりから、視界が開け景色は一気に北アルプスらしくなる。
このハイクでも最高の絶景ポイントのひとつだ。「日本じゃないみたい!」。目の前に広がる稜線と雪渓が残るストライプの山肌は、まるでスイス! そして、クライマックスは鑓温泉下から小屋までの登りを飾るお花畑だ。オレンジ、黄色、白、紫……カラフルな高山植物が咲き誇り、「見て見て! 私が一番綺麗でしょ」、なんて、花たちの声が聞こえてきそう。疲れを癒やしてくれる。
登山開始から4時間半。息使いが荒くなってきたころ、前方に石で組まれた露天風呂が見えてきた。「着いたー! 憧れの白馬鑓温泉」。山の斜面にへばりつくように設置された露天風呂からは、雲海や尾根まで見下ろせる。まさしく〝天空の露天風呂〟と呼ぶにふさわしいロケーションに心が躍る。炭酸水素塩泉のつるつるした肌触りも気持ち良く、思わずひと言。「あ~、幸せ♡」。
この夏、爽快なハイクと露天風呂で感動の汗を流してみてほしい。
Start!
05:30
装備を万全にして登山道へ
「猿倉荘」で装備の確認を済ませ、徒歩約20分、白馬鑓ヶ岳の登山口へ到着。飲料水、行動食、お弁当、防寒着、レインウェア、タオル、ストックなどを忘れずに。
07:30
ミズバショウの群生地で休憩
そろそろ2時間。平場の小日向コルは美しいミズバショウが咲く最高の休憩ポイント。水分やエネルギー補給をしっかりとしよう。
08:10
北アルプスらしい絶景ポイントへ到着
サンジロ(三白平)を越えると、一気に景色が北アルプスらしくなる。雲の間に美しい稜線が現われることも。ご褒美のような景色に元気が湧く。
発見! 強アルカリ性温泉の源だ~
マグネシウムや鉄を多く含む岩石「蛇紋岩(じゃもんがん)」。
08:40
杓子沢の岩場を経由
ここからはいくつかの沢を渡るので、足元に注意しながら速やかに歩こう。山小屋の営業期間中は、沢に木製の橋を架けてくれているので安心。
高山植物が美しい!
最後の上り坂は高山植物の宝庫。
山野草の女王「シラネアオイ」
試験管ブラシに似た「サラシナショウマ」
雨に濡れると透明になる「サンカヨウ」。
ユニークな道標。ゴールまでわずか!
小屋の手前の道標(上)と滝(左)!?。実は、これ、源泉から溢れたお湯の滝。「ゴールまでもうすぐだ!」と、テンションMAX。
Goal!
9:30
標高2,100mの露天風呂は最高!
白馬鑓温泉小屋到着! 山の稜線や雲海を見下ろせる眺望は想像を絶するスケールで、至福の入浴時間を満喫できる。今年の営業は9月30日まで。宿泊料金などはHPで要確認。
徒歩2時間の「おびなたの湯」コースもあり!
鑓温泉まで行く自信のない方は小日向コルから登山口まで引き返し、付近の「おびなたの湯」へ訪れるのも◎。pH11.2の強アルカリ性。今年の営業は10月中旬まで。
詳細はhttps://hakuba-happo-onsen.jp/obinatanoyu/
秘湯ハイクの楽しみ方
1 天気やルートを事前に確認のこと
2 道中、花や動物など自然を楽しむ
3 混浴が多いので湯浴み着の準備も!
白馬鑓温泉小屋の詳細 https://www.hakuba-sanso.co.jp/yamagoya/yarionsengoya.html
※構成・写真/渡辺裕美 協力/白馬山案内人組合
(BE-PAL 2023年9月号より)