うっかりハラスメントを回避!「山ガール」という言葉に潜む、ジェンダー問題とは? | 本 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

うっかりハラスメントを回避!「山ガール」という言葉に潜む、ジェンダー問題とは?

2022.03.22

数年前に大流行した言葉、「山ガール」。キャンプブームに押されて最近めっきり見かけなくなり、徐々に落ち着いてきたのかなと思われます。実はこの言葉、ジェンダーの視点からみると、けっこう根深い問題を含んでいるのをご存じでしょうか。

「山ガール」といえば、ピンク色で表現されがちです。

「山ガール」は「おしゃれな格好で山に登る若い女性」を表現した新語です。古くからある「山女」だと魚のヤマメと区別がつかなくなってしまいますし、うまい表現だなと思った人も少なくないでしょう。最近はジェンダーバランスを意識してか、おしゃれな男性登山者を指す「山ボーイ」なんて言い方も出てきていますが、根本的な問題はそこではありません。

論点を明確にするためにヒントになるのが、3月22日発売の新刊「失敗しないためのジェンダー表現ガイドブック」。少し引用してみると……。

――女性の人数が少ない学科や職業について「珍しい」「希少価値がある」「面白い」という意味で「○〇ガール」「〇〇女子」と名付けて取り上げたり、そうした企画・商品を紹介したりすることも。「女性」という性別が「価値」を持つものと印象付けてしまう事例だと言えるでしょう。その上、こうした用語を使い、「女性」や「女子」に注目すると、どうしても偏見の塊になりがちです。

「珍しくて面白い」男の世界に女が入ってきた

「山ガール」という言葉には、登山する若い女性は「珍しくて面白い」という意図が込められてはいないでしょうか。おしゃれで新しげな語感の裏には、「登山は(そもそも)男性のもの」という古い偏見が潜んでいそうです。「リケジョ(理系女子)」「歴(歴史)女」「女子鉄(鉄道ファン)」といった言葉も、たとえ揶揄する意図はなかったとしても、「男の世界に女が入ってきた」という無意識の偏見から生み出されたとも言えそうです。

逆に男性を強調した「イクメン」「家事男子」といった言葉にも、「男は仕事、女は家庭」という古来の性別役割分業の価値観が無意識のうちに反映されていないか、よく考えてみる必要がありそうです。「○○は男性がやること」「女性なら○○がいい」と物事を性別で決めつけてしまうことは、自分自身の自由な選択肢も狭めてしまいます。

説明が遅れましたが、ジェンダー平等とは、ひとりひとりの人間が性別にかかわらず、平等に責任や権利や機会を分かちあい、あらゆる物事を一緒に決めることができることを意味しています。ジェンダー平等の実現は、2015年に国連が採択したSDGs(持続可能な開発目標)の一つ。毎年、世相を反映した言葉に贈られる「ユーキャン新語・流行語大賞」(「現代用語の基礎知識」選)では2021年、ノミネートされた30語の一つがジェンダー平等でした。企業が次々とジェンダー平等の観点を意識するようになってきています。

さて、アニメ『ゆるキャン△』のヒットもあって、昨今は女性のキャンパーが増えているようです。ただ、「キャンプガール」といった言葉はあまり広まっていません。キャンプグッズは性別を意識しない質実剛健な物が多いためかもしれませんが、ジェンダー表現について考えるようになってきたのだとしたら、良い傾向かもしれません。

ソロキャンをする女性も増えています。

教えたがりさんは「マンスプ」注意!

ただ、表現とは別の話になりますが、「流行りだからキャンプを始めたばかりの女の子は何も知らないでしょ。教えてあげるよ」的な態度をとる男性に悩まされている人も。

キャンプに限りませんが、「女は男よりモノを知らない」という偏見を持ち、上から目線な態度で何かを解説したり知識をひけらかしたりする行為のことを、「マンスプレイニング」と言います。日本では2020年、辞書を編集する専門家らが選ぶ「今年の新語」のベスト10に入りました。略して「マンスプ」。

これは、「man(男性)」と「explaining(説明する)」を組み合わせた造語です。米国のノンフィクション作家レベッカ・ソルニットさんの「Men Explain Things to Me」(『説教したがる男たち』、左右社)がもとになっています。#MeToo運動の下地になったとも言われています。

こうしたある種の「見下し」を無意識にしていないか、一人一人が自覚し、女性も男性も安心して気持ちよくキャンプできる言葉と環境を整えていきたいものです。

そう言えば、キャンプのバーベキューになると「男の仕事」と言い出す人もいませんか。それも何か変ですよね。男とか女とか言わずに、盛り上がりを見せるアウトドア界にもジェンダー平等の風を吹かせましょう。そのための「お伴」として、様々な事例を考察した新刊「失敗しないためのジェンダー表現ガイドブック」(新聞労連ジェンダー表現ガイドブック編集チーム著、小学館)はぴったりです。これまで自分では見えていなかった「性差による偏見」に気付くきっかけになるはずです。3月22日発売。

『失敗しないためのジェンダー表現ガイドブック』

(筆者・新聞労連ジェンダー表現ガイドブック編集チーム)

 

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