ソファーに寝転がって『小さな江戸を歩く 西国路編』(馬渕公介)を読む[読者投稿記事] | 本 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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  • 2020.08.19

    ソファーに寝転がって『小さな江戸を歩く 西国路編』(馬渕公介)を読む[読者投稿記事]

    2020年の世界は新型コロナウィルス禍の中である。2011年の原発事故による放射能の拡散も途方に暮れかけたが、今回は、ちょっとその様相が歪で質が悪そうだ。キャンペーンなどに唆されず、帰省もせず、グッと堪えて本を紐解く。

    去年の夏,古本店で買ってそのまま本棚に置いていた。早速読んでみる。第1章出石は去年行ったばかりだ。つい作者にその角を右に曲がれば・・・などと俄か解説などしてしまいそうになる(注1)。

    第3章姫路は故郷だ(注2)。隣町の第4章龍野には何度も出向いた。しかし、よく知っている街なのに、こちらの求めている街の姿とはまったく違った捉え方をしていて、その裏切られ方が心地良く、逆に魅了されてしまう。そのような、今までに経験したことのない読書体験となった。なんとも痛快だ。

    第5章からの、倉吉・美作勝山・吹屋・津山・松江などは中国地方の迷宮に入ってしまったような気分になり、不思議な時間を彷徨うことになる。第11章津和野,第13章萩も,観光化された町の光景ではない、今と過去が融合し、時間的感覚を繫げてくれる感覚、とでもいえばいいのか。思わず江戸時代の空気を吸い込んでしまったような気分にさせられる。そしてその香りを懐かしい、と素直に思えるのだ。

    四国・九州と続いて行くが、第28章での知覧の街が、鹿児島の軽井沢だ、などという土地の人の言葉に出会い、特攻記念館だけに行き、それが知覧という街のすべてだと勝手に思い込んでいたわが身に気付き、こりゃあまた行かないと・・・という思いに掻き立てられてしまった。

    第30章竹富島に至っては、リゾート化される前にどうして行かなかったのか、と悔やまれたが、それも引き受けて,しっかり歩いてみたいなぁ~・・・と思いを馳せた。

    東国路編を手に入れて,もう少しソファーでの旅を続けることにしよう!

    ところでー。
    題名にある「小さな江戸」という言い方だけど、「小江戸・川越」などという時に使う言葉で、小京都とかリトルスイス、なんていう呼び方と同類である。敢えて「小さな江戸」としたところに作者の矜持があるのだろうか。

    個人的感想としては,ここに出てくる街から、「あぁ,江戸みたいだなぁ~」と思わせられるようなところはないンジャないか、と思う。その街々の風情や趣きがきちんと独立して醸し出されている。だから、これは馬渕氏の、ある種の逆説かもしれない。そして江戸の良さを、取り上げた街から感じ取ってもらいたかったのかもしれない。

    こういう本は、一気に読んでしまわないで、10日間くらいかけてじっくりページを捲っていくと情景がさらに深まるのではないだろうか。地図を傍らに置いて,その場所への行き方などにも思いを巡らし、泊まる宿や、もしくはテント泊ならどの辺にするか・・・なんてこともイメージすると、旅の醍醐味は倍増するように思う。旅立つ季節も重要だ。作者が描いている時期に合わせるのも一興だが、ついオリジナルな時期を工夫してみたくなるのが旅人ではなかろうか。

    竹富島へは船に乗らないと行けないけど、あとは自転車でもヒッチハイクでも、究極歩いてでも行ける場所ばかりだ。伊計島も、沖縄本島へは飛行機か船の旅で行くしかないけど,海中道路を通って平安座島、宮城島への橋を経由して伊計大橋を渡れば辿り着ける。本島うるま市からならバスも出ている。県道10号線をてくてくトボトボ進んで行けば、歩いてでも行けるんじゃないか。浜比嘉島へも平安座島からの橋が架かり、簡単に行けるようになったので、かなり自由にこの辺は往来することができる。

    種村季弘氏の『雨の日はソファーで散歩』をもじって、「コロナの日々はソファーに寝転がって・・・」と題してみた。でも、馬渕氏の本のページを繰っていると、こうしちゃいられない、という気分にさせられてしまう。ソファーから立ち上がって,直ちに旅支度をして出かけたい。そんな衝動にかられてしまう。そいつを、グッと堪えて寝返りなど打って態勢を変えながら・・・。

    アマゾンから届いた東国路編のページを開き、早速また1ページ、もう1ページと捲って行く次第なのだ。

    (注1)
    出石城旧三の丸大手門脇の櫓台にあり、日本最古と伝わる時計台である。辰の刻(朝7時から9時)に城主登城を、太鼓を打って知らせていたことから、辰鼓楼(しんころう)と呼ばれた。明治4年(1871)、時を知らせる楼閣が建てられ、蘭方医・池口忠恕(いけぐちただひろ)が大病を患い、その願掛けからオランダ製の時計を取り寄せて街に寄贈し、今のような時計台になった。明治14年(1881)のことである。以来3代目となり、旧宿場町の時を刻み続けている。
    (章全部をこんな感じで、一つずつ説明したくなる・・・最初の出石とそのあとの姫路だけでやめておく)

    (注2)
    姫路城天守閣の小窓から見た、駅に向かっての光景。馬渕氏もこのショットを捉えている。〝戦災の後、大規模な区画整理がなされたため、街は碁盤目を描いている。〟と添え書きされていた。そんなことを一度も意識したことがなかったので、そうやったんやぁ~・・・、という思いしきりだった。京都や札幌の碁盤目はよく理解していたのに、わが街のことはスッポリと抜け落ちてしまっていた(笑)


    ※こちらの記事は過去の読者投稿によるものです。

    ベッカム隊長さん

      2009年から“てくてくトボトボ歩き旅”と称して、旧街道を中心に、日本全国を歩いて繋ぐ徒歩旅行を慣行中!
     旅の様子は、
    https://plaza.rakuten.co.jp/kaionn20/
    にてお楽しみいただけます!
     竜飛岬から桜島まで一本に繋がったが、途中、熊との遭遇で、
    「あわや!?」
    というようなことにも(笑)・・・旅は続く!

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