100年先もサンゴ礁と共にあるために…サンゴ礁の聖地・喜界島 | ナチュラルライフ 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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  • 100年先もサンゴ礁と共にあるために…サンゴ礁の聖地・喜界島

    2021.04.27

    私が書きました!
    イラストエッセイスト
    松鳥むう
    離島とゲストハウスと滋賀県内の民俗行事をめぐる旅がライフワーク。訪れた日本の島は107島。今までに訪れたゲストハウスは100軒以上。その土地の日常のくらしに、ちょこっとお邪魔させてもらうコトが好き。著書に『島旅ひとりっぷ』(小学館)、『ちょこ旅沖縄+離島かいてーばん』『ちょこ旅小笠原&伊豆諸島かいてーばん』(スタンダーズ)、『ちょこ旅瀬戸内』(アスペクト)、『日本てくてくゲストハウスめぐり』(ダイヤモンド社)、『あちこち島ごはん』(芳文社)、『おばあちゃんとわたし』(方丈社)、『島好き最後の聖地 トカラ列島 秘境さんぽ』(西日本出版社)等。Podcast&Radiotalk はじめました。「松鳥むう」で検索を♪http://muu-m.com/
    [caption id="attachment_151952" align="aligncenter" width="1500"] ©鈴木倫太郎[/caption]

    サンゴ礁研究者の憧れの聖地

    「喜界島は世界中のサンゴ礁研究者の聖地なんです」。

    そう話し始めたのは、喜界島サンゴ礁科学研究所(以下、研究所)理事長の渡邊剛さん。

    鹿児島と沖縄の間に連なる奄美群島。その中でも一番大きな島・奄美大島から東へ約25km先の海洋に浮かぶ島。それが喜界島だ。周囲約50km、人口約6,800人。決して大きな島とは言えないこの地が、なぜ、サンゴ礁研究者の聖地なのだろう?  そのヒントは、喜界島の成り立ちにあるという。

    喜界島の誕生は約10万年前。海の中にあったサンゴ礁が地殻変動で隆起し陸になったのがはじまり。現在、喜界島中央部分にある百乃台国立公園展望所が、その部分だ。つまり、10万年前は海の中だったサンゴ礁の上に私たちは立っているコトになる。そして、そこから海に向かって、なだらかな丘陵かと思いきや、よく見ると、なんだか少し様子がちがう。幅の広い段々とした地形になっているのだ。

    「百乃台国立公園が10万年前に海だった場所です。そこから少し下ると再び段が現れます。そこは、6万年前に隆起したサンゴ礁だから6万年前は海の中。この地形を見るコトで、いろんな時代の海の様子を陸から見るコトができる。それが、ココ喜界島なんですよ」。

    説明する渡邊さんの言葉に宿るワクワク感は、まるで、夏休みに好きなコトに没頭する少年のようだ。
    この段々の地形は「サンゴ礁段丘」と呼ばれている。世の地形好きさんには、なにやらたまらなく愛おしさが炸裂する地形だそう。語り出すと止まらない人も多いらしい。

    研究所所長・山崎敦子さんも、弾む声で語る。

    「以前、メキシコを訪れた時、少し小高い丘に登ったと思ったら、その丘はサンゴ礁の化石だったんです。何万年も前のサンゴ礁の上に立っていると分かった瞬間、鳥肌が立ちました! そして、その後に訪れた喜界島できれいなサンゴ礁段丘を一望できる“テーバルバンダ”という場所からの景色を見た時、日本にもサンゴ礁の化石をこんな風に見られる場所があるなんて……コレは日本の宝物だって思いました!」

    サンゴ礁が隆起すると、その周りは浅くなる。そこに新たにサンゴが住みつく。それを10万年の間に何度か繰り返すコトで、喜界島の周りにはサンゴ礁が広がったのだという。

    ふと、目を閉じて想像してみる。自分が、今、立っている場所は海の中。さらに深いトコロに人々が暮らしている。脳裏に浮かぶのは、もちろん昔話に登場する龍宮城。おとぎ話ではなく、浦島太郎は案外、本当の龍宮城を喜界島で見たのかもしれない。(喜界島に浦島太郎伝説はないけれども……)

    喜界島の生活に点在するサンゴ石

    ところで、渡邊さんと山崎さんが所属する喜界島サンゴ礁科学研究所とは、どんなトコロだろうか?

    そもそも、サンゴ礁に特化した研究所なるものは日本で唯一、喜界島にしかない。それは、喜界島を作っている隆起サンゴ礁には、何万年も前から現在に至るまでの地球環境変動の貴重な記録がギュッと詰まっているからなのだとか。喜界島は、熱帯と温帯の端境エリアにあるため、熱帯と温帯の両方のサンゴ礁が生息し、化石としても産出するという。そして、北西太平洋と東シナ海に囲まれ、モンスーンや台風等の影響を受けて来た喜界島周辺は、地球規模の海洋環境や気候変動の解明をする地球環境学研究にとって国際的に注目され続けているのだ。さらに、渡邊さんは、こうも言う。

    「海外のサンゴ礁を研究するために、発展途上国のサンゴ礁を訪ねるコトが多くあります。でも、その研究結果を発表する場は、その国ではなく、いつも先進国なんです。それは、サンゴ礁と共存している地元の人たちを放ったらかしにしているんじゃないかと、ずっと疑問に感じていました。地元の人と一緒に、100年先もサンゴ礁と共にある暮らしを考えたいって思うようになったんです」。

    そうして、2014年に誕生したのが、この研究所なのだ。

    しかも、喜界島の人々は、縄文時代からサンゴと共存していたという。それは、島から縄文時代の遺跡が発掘されているコトからもわかる。サンゴのある暮らしは“遠い昔のコト”で終わっているわけではない。今も、島内のあちこちに見るコトができる。

    [caption id="attachment_151954" align="aligncenter" width="1500"] ©WWF Japan/Rintaro SUZUKI[/caption]

    サンゴ石を利用した石垣はもちろんのコト、

    [caption id="attachment_151955" align="aligncenter" width="1500"] ©WWF Japan/Rintaro SUZUKI[/caption]

    丸いサンゴ石をくり抜いて作られた灯籠が庭にある家もある。

    [caption id="attachment_151957" align="aligncenter" width="1500"] ©WWF Japan/Rintaro SUZUKI[/caption]

    祠に祀られている神さまもサンゴ石で出来ていると言うから驚きだ。

    [caption id="attachment_151958" align="aligncenter" width="1500"] ©WWF Japan/Rintaro SUZUKI[/caption]

    石灰岩を加工して使用するために切り出していたこのソファーのような場所も、もちろんサンゴの化石。島内に転がっている石ころも、ほとんどがサンゴの化石だ。生活の端々に、当たり前のように存在するサンゴ石。

    そして、もうひとつ。サンゴは島人の生命を守った過去もある。太平洋戦争末期、米軍による空襲が激しくなり、沖縄の次は喜界島が地上戦の場となるかもしれなかった。その際、島人が逃げ込んだ防空壕。それは、大きなサンゴ礁の崖にできた隙間を利用して作られたモノだったと言う。

    [caption id="attachment_151951" align="aligncenter" width="1108"] ©WWF Japan/Rintaro SUZUKI[/caption]

    100年先もサンゴ礁と共にあるために……

    サンゴ礁の白化現象が進む昨今。このままでは、地球上からサンゴ礁が消滅してしまうかもとまで言われている。そうなると、サンゴを中心とした豊かな海で生命を育んでいる数多くの生物も絶えてしまう。

    生活の中にあるサンゴ礁文化を再発見するコトは、近代化と共に意識しなくなってしまったサンゴ礁から受ける恩恵のコトを改めて見つめ直すきっかけになる。それは、サンゴ礁を守るコトであり、サンゴ礁が存在する海を守るコトであり、果ては、海に囲まれて生きる私たちの生活をも守るコトでもある。その地球規模の動きの種が、ここ喜界島の島人と研究所スタッフによって、今、芽吹きはじめている。

    サンゴ礁に守られて来た喜界島。そして、私たち。今度は、人がサンゴ礁を守る番なのかもしれない。

    ・喜界島サンゴの島暮らし発見プロジェクト
    https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/4341.html

    ・喜界島サンゴ礁科学研究所
    https://kikaireefs.org/

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