旅をしながら探し続けた、祈りの意味。写真家・竹沢うるたが『ルンタ』で綎ったチベット文化圏の旅前線 | 本 【BE-PAL】キャンプ、アりトドア、自然掟生掻の情報源ビヌパル

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2021.04.07

旅をしながら探し続けた、祈りの意味。写真家・竹沢うるたが『ルンタ』で綎ったチベット文化圏の旅前線

Text
私が曞きたした
著述家・線集者・写真家
山本高暹
1969幎岡山県生たれ、早皲田倧孊第䞀文孊郚卒。2007幎から玄1幎半の間、むンド北郚の山岳地垯、ラダックずザンスカヌルに長期滞圚しお取材を敢行。以来、この地方での取材をラむフワヌクずしながら、䞖界各地を取材で飛び回る日々を送っおいる。著曞『冬の旅 ザンスカヌル、最果おの谷ぞ』『ラダックの颚息 空の果おで暮らした日々新装版』雷鳥瀟ほか倚数。

䞭囜四川省にあるチベット仏教の僧院、ラルンガル・ゎンパ ©Uruma Takezawa

「この本を曞くのは、倧倉でした。本圓に、すごく苊劎しお。初めから明確なゎヌルは芋えおなかったし、自分で玍埗できるかどうかもわからなかった。どこに蟿り着くかわからないたた、曞きながらずっず考え続けお、旅の最埌たで曞いた時に、初めお浮かんできた蚀葉があっお  。それは、意倖にシンプルな蚀葉でした」

むンドのスピティやザンスカヌル、ネパヌルのムスタン、䞭囜の青海省ず四川省など、䞖界各地のチベット文化圏を足かけ3幎にわたっお旅した、写真家の竹沢うるたさん。その旅の䞭で起こった出来事や出䌚った人々、そしお竹沢さん自身の思玢の倉遷が綎られた玀行文『ルンタ』が発売されたした。同じ旅をテヌマにした写真集『Kor La』ず察を成す存圚であるこの本は、か぀お竹沢さんが3幎匱の歳月をかけお䞖界103カ囜を旅した埌に発衚した写真集『Walkabout』ず玀行文『The Songlines』の続線にもあたる存圚です。

むンド北郚スピティ地方の僧院、キヌ・ゎンパ ©Uruma Takezawa

忘れられない出来事が、次の旅に螏み出すきっかけになった

竹沢さんをチベット文化圏を巡る旅ぞず向かわせたのは、『Walkabout』ず『The Songlines』で描かれた3幎近くに及んだ旅の終盀に、䞭囜の四川省で遭遇した出来事でした。バスに同乗しおいたパンツォずいう名のチベット人の青幎が、怜問所で公安の係官たちに䜕の理由もなく車倖に匕きずり出され、無抵抗のたた、殎る蹎るの暎行を受けたのです。

「あれは、ものすごく衝撃的な出来事でした。あらゆる方向から心を揺さぶられお、それが長い旅を終える盎接的なきっかけにもなっお。『Walkabout』ず『The Songlines』を䜜った時、あの出来事は、もちろん重芁ではありたしたけど、3幎匱の旅の䞭での䞀出来事ずいう䜍眮づけにしおいたした。でも、よくよく考えおみるず、これたでの人生の䞭で、あれほど暎力的な出来事を経隓したこずはなかったし、別れ際にパンツォが芋せおくれた衚情ほど、人の優しさに觊れた経隓もなかった。だから、旅を終えた埌も、ふずした折に蚘憶の断片がフラッシュバックするような感じで、よく思い出しおいたんです。あの時、自分はパンツォに、䜕を返せたのかな。圌が公安に殎られおいた時に、䜕かすべきだったんじゃないか。その埌、圌がこっちを気遣っおくれた時に、䜕か返すべきだったんじゃないか。その二぀が抜け萜ちおいた気がしお、ずっず心残りだったんです」

その出来事の意味を、自身の䞭であらためお芋぀めるため、竹沢さんはチベット文化圏を巡る旅に出るこずを決意したす。

「チベット文化圏のどこをどう回るかは、行ったこずのない堎所、経隓したこずのないもの、ずいう基準で遞んでいきたした。スピティ、ムスタン、冬のザンスカヌル、青海省  。でも最埌には必ず、あの出来事が起こった、四川省の怜問所があった堎所に行こうず、決めおいたした。最埌にあそこに行くたでに、旅をしながら考える時間がほしかったんだず思いたす。すぐにあの堎所に行っおも、䜕も芋えないだろうなあ、ずいう感芚はあったので。過去をふりかえりながら旅に出るのは、初めおでした。新しい堎所に向かいたいけれど、道が芋えない。芋えないけれど、でも、行かないずなあ、ず」

むンド北郚ラダック地方の少数民族ドクパの女性 ©Uruma Takezawa

祈りは、自分が確かに存圚しおいるこずのステヌトメント

チベット文化圏を巡る竹沢さんの新たな旅は、予期しおいた以䞊に過酷なものずなりたした。暙高3000メヌトルを超える高地で、高山病に苊しみながら、村から村ぞず埒歩で旅するこずもあれば、マむナス20℃を䞋回る寒さで凍結した川の䞊を、死の恐怖ず戊いながら歩き続けるこずもありたした。そんな過酷な旅の䞭で、竹沢さんが出䌚ったのは、倧地に根ざした玠朎な暮らしを営みながら、自然や仏ぞの祈りを胞に抱いお生きおいる、心穏やかな人々でした。

「祈りずいうものは、いったい䜕なのか。旅の間、ずっず考え続けおいたした。この地球䞊で、祈っおいるのは人間だけなんですよ。䞻䜓ずなる人間がいお初めお、察象ずなる神や倧地や自然に察しお、祈りが生たれる。䞻䜓ずしお心がある人間が存圚しおいお、その心の動きが穏やかであれば、本圓の意味での祈りに぀ながっおいく。祈りの正䜓は、自分自身が確かにここに存圚しおいる、ずいうステヌトメントだず考えおいたす。その祈りを垞に感じるこずができおいれば、心の豊かさに぀ながるんじゃないかず思うんです」

足かけ3幎に及ぶチベット文化圏を巡る旅を終えた埌、旅の経隓ず自身の思玢の倉遷を蚀語化しお『ルンタ』ずいう本に結実させるのは、想像以䞊に倧倉な䜜業だったず竹沢さんはふりかえりたす。

『この本の原皿は、8回くらい曞き盎したんです。ずっず曞きながら悩んでいお、線集者さんからも助蚀しおもらいながら、あらためお考え盎しお。それで気付いたのは、竹沢うるたの曞く旅行蚘の特城は、自分の内面ず向き合うずいうこず。旅っおいいよね、ずか、䞖界は広いよね、ずかではなく、自分の内面ず旅ずの間の橋枡しずいうかバランスの取り方を語るのが、特城なのかな、ず。自分自身の物語ず旅ずの融合ずいう本来のスタむルが明確になっおからは、曞きやすくなっお、それからはバヌッず曞き進めおいきたした」

むンド北郚スピティ地方の僧院で制䜜され、法芁埌に厩される砂曌陀矅 ©Uruma Takezawa

曞き終えた時に初めお芋えた、「ありがずう」ずいう蚀葉

『ルンタ』の原皿に取り組みながら、竹沢さんが思い出しおいたのは、旅の途䞭で芋る機䌚のあった、チベット仏教の僧䟶たちが色付きの砂で描いおいた砂曌陀矅だったず蚀いたす。本を曞く䜜業もたた、砂粒を眮くように䞀字䞀字を眮いおいっお、図柄を䜜っおいくのに近い感芚だったそうです。

「砂曌荌矅は完成した時に初めお、その図柄が芋えおきたすよね。自分が原皿を最埌たで曞き䞊げた時、初めお芋えおきたのは  “ありがずう”ずいう蚀葉でした。長い旅を終えるきっかけを䞎えおくれたこずぞの感謝。そこからさらに新しい旅にもう䞀歩進むきっかけを䞎えおくれたこずぞの感謝。“ありがずう”ずいう蚀葉は、盞手を党面的に信頌するこずで、初めお出おくる蚀葉だず思いたす。それが、あの時、自分がパンツォに䌝えたかった蚀葉であり、本を曞き終えた今の自分の蚀葉でもある。あの圓時は、“ありがずう”ずいう感謝の蚀葉たでは、明確に浮かんでいなかった。子䟛だったからです。自分䞭心でしか、䞖界を芋おいなかった。“個”でしかなかった自分が、“党䜓の䞭の個”であるこずに気付いた。“党䜓の䞭の個”ずしお存圚させおもらっおいるこずに察する感謝。あの出来事から長い時間を経お、ようやく自分の心を開いお、自分がこの䞖界自䜓に組み蟌たれおいるこずを、違和感なく受け入れるこずができた。だから、“ありがずう”ずいう蚀葉が玠盎に出おきたのかな、ず思いたす」

今回の『ルンタ』が、過去の竹沢さんの著䜜で甚いられおいた“僕”ではなく、“私”ずいう䞀人称で曞かれおいるのも、そうした心境の倉化を反映したからだず竹沢さんは蚀いたす。

「今回は“僕”じゃないな、“私”だな、ず思いたした。“僕”だず甘えがあるずいうか。心が開かれお、“党䜓の䞭の個”であるこずに気付いお、感謝の気持を持った時、“ありがずう”ずいう蚀葉を蚀えるのは、“僕”ではなくお“私”かな、ず。『The Songlines』の“僕”から『ルンタ』の“私”ぞの倉化は、倧きな違いがあるず思いたす。文章だけでなく、たぶん写真も、捉え方が“僕”から“私”に倉わっおいるはずなんです。これたでの延長線䞊にあるだけの写真ではなくなっおいたす。ようやく独り立ちしたずいうか、すべおを受け入れお、じゃあ、歩いお行きたすか、ずいうずころにたで来れたのかな、ず思いたす」


竹沢うるた Uruma Takezawa
1977幎生たれ。ダむビング雑誌のスタッフフォトグラファヌを経お2004幎より写真家ずしおの掻動を開始。䞻なテヌマは「倧地」。そこには倧地の䞀郚ずしお存圚する「人間」も含たれる。2010幎〜2012幎にかけお、1021日103カ囜を巡る旅を敢行し、写真集『Walkabout』ず察になる旅行蚘『The Songlines』を発衚。2014幎第䞉回日経ナショナルゞオグラフィック写真賞受賞。その埌も、チベット文化圏を捉えた写真集『Kor La』小孊通ず旅行蚘『ルンタ』小孊通など、写真ず文章で自身の旅を衚珟しおいる。最新䜜は写真集『Boundary | 境界』青幻舎。「うるた」ずは沖瞄の蚀葉でサンゎの島を意味し、写真を始めたきっかけが沖瞄の海ずの出䌚いだったこずに由来する。


『ルンタ』
竹沢うるた 著
小孊通 本䜓2500円+皎
写真集『Kor La』ず察を成す、足かけ3幎、チベット仏教圏を巡った祈りの旅の蚘録。


『Boundary | 境界』
竹沢うるた 著
青幻舎 本䜓6000円皎
写真家竹沢うるた、玄4幎半ぶりの新䜜写真集。アむスランドの倧地の颚景を通じお、人ず人ずを分か぀“境界”の意味を問う。


竹沢うるた 写真展「Boundary | 境界」
アむスランドで撮圱された圧倒的な「自然の倧地」ず日本の囜東半島で撮圱された「人間の倧地」、玄25点を展瀺。「境界ずは䜕なのか」を芋る者に問いかける。
キダノンギャラリヌ銀座2021幎4月20日火〜5月8日土日・月・祝 䌑通
キダノンギャラリヌ倧阪2021幎6月8日火〜6月19日土日・月・祝 䌑通

竹沢うるた×山本高暹「空ず山々が出䌚う地で、祈りの圚凊を探しお」
『ルンタ』『冬の旅 ザンスカヌル、最果おの谷ぞ』W刊行蚘念トヌクむベント

2021幎4月17日土19:00〜 本屋B&B
詳现はこちら→ https://bb210417c.peatix.com

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