自然の好きな子供は、いくつになっても面白いものを見つけ出すのがうまい。「これ何?」と聞く手を見ると、穴が一直線に開いた笹の葉が握られていたり、「赤い虫がいっぱいいる」というので見てみると、サクラの葉が赤くふくらんでいたりする。
これらはどれも、虫(あるいはその幼虫)によって作られたものだが、残念ながらよほどの虫好きでないと子供たちの発見の素晴らしさをフォローしてやれない。本書は、そんな“虫のしわざ”(食痕、産卵痕、巣)をたくさんの写真で紹介し、しわざの主を推理していけるように作られている。しわざから虫を知る、虫の逆引きガイドなのである。
ページをめくると、まず“虫のしわざ”が半端なく多いことに驚かされる。じつは、私たちの身の周りは“虫のしわざ”だらけなのだ。たとえば、冒頭にあげた笹の葉はヒサゴクサキリやセスジノメイガの食痕だし、赤い虫はサクラフシアブラムシが作った虫瘤だ。ところが、しわざの主を突き止めようとすると、一筋縄ではいかないものもあったりするからまたおもしろい。それを調べていくうちに、じっと観察する目や広く自然を見渡す目が養えたり、面白いものを探したり標本にするなどの行動力も養われそうだ。
本書に付け加えることがあるなら、こういう虫のしわざを見つけたとき、大人が必要以上に怖がったりそれを避けようとしたりしないこと。せっかく目の前に開かれた自然の扉を自ら閉じてはもったいない。
虫のしわざ観察ガイド
新開 孝 文・写真
文一総合出版 ¥1800+税
構成/三宅直人