割れても機能は健在!? ホーボージュンも唸ったジェットボイル「新クッキングシステム」とは - 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2025.04.07

    割れても機能は健在!? ホーボージュンも唸ったジェットボイル「新クッキングシステム」とは

    割れても機能は健在!? ホーボージュンも唸ったジェットボイル「新クッキングシステム」とは
    高い熱効率、軽量、コンパクトがそろったジェットボイル。2021年に発売された「スタッシュ」は、常識を超えた名モデルだ。その魅力を別視点で語る。

    【ホーボージュンのサスライギアエッセイ・旅する道具学】第7話「別れ話の後に」

    ギア「JETBOIL / STASH」

    「私たち、もう別れましょう」と彼女はいった。

    それは長い冬が終わりに近づき、雪解けの大地から緑の新芽が顔をのぞかせる季節だった。

    「もう潮時だと思ってたの。ずっと前から」と彼女は続けた。

    満月は少しずつ痩せ始め、潮は大潮から長潮へと変わっていた。僕が気がつかないあいだに季節は巡り、潮はすっかり引いててしまっていたのだ。

    「ジェット君のことは今も好きだけど、少し距離を置きたい」

    彼女は僕の手をそっと離した。もう何年もしっかりと握り続けていた僕の手を。

    それは僕にとっては青天の霹靂だったが、彼女にとっては想定内のことらしかった。離した手をヒラヒラと顔の横で振りながら笑ってこう続けた。

    「そんな顔しないでよ。なにも二度と会えなくなるわけじゃない。だって私たちはこれからも一緒に山に登ったり、キャンプをしたりするのよ。ただこれまでみたいにお互いをガチガチに拘束し合う関係はおしまいにするの。私たちは別れたほうがうまくいくのよ。きっと」

    そういって別れ話を締めくくった。僕の名はジェット。彼女はボイル。僕らは相思相愛の恋人としてアウトドア界では広く知られていたが、その蜜月時代は幕を閉じた。それは2021年の春のことだった。

    「カップ1杯の水をわずか90秒で沸騰させる」という触れ込みで「ジェットボイル」が衝撃的なデビューを果たしたのは今から20年前のことだ。ガスストーブのバーナーとクッカー(鍋)が一体化したアバンギャルドなデザインは、当時の新しモノ好きの心を鷲摑みにした。

    僕もさっそく手に入れたのだが、使ってみてビックリ。噂どおり水は瞬く間に沸騰してしまう。まさに「瞬間湯沸かし器」という通称がぴったりだった。

    その秘密はクッカーの底に付けられたフラックスリングだ。薄いアルミ板をジグザグに細かく折り曲げたもので、これがバーナーの熱を吸収し、余すことなくクッカーに伝える。これまでのストーブは炎が横に広がって熱を無駄に放出していたが、それをすべて吸収することで沸騰時間を短縮した。この高い熱効率(80%といわれている)は燃料の節約にもつながるため、高所登山や長期山行でも大きな人気を呼んだのである。

    その後ジェットボイルはチタン製の超軽量モデル、火加減を微調整できる調理用モデル、マイナス6度Cの低温下でも使えるレギュレーター搭載モデルなど新機軸の製品を次々と発表し、アウトドアストーブの一大勢力となったのである。

    そんなジェットボイルに2021年、とんでもない事件が起こった。なんと新発売された「スタッシュ」はこれまでの一体型ではなく、バーナーとクッカーが独立した分離型デザインだったのだ。

    これは20年来のジェットボイラーである僕には衝撃だった。「こんなのJBじゃない!」とも思った。ところが実際にスタッシュを使ってみると、その合理性と使い勝手の良さには唸るしかなかった。

    まず圧倒的に軽かった。従来のモデルと比較して約40%も軽量で、総重量はたった200gしかない。これなら日本製のチタンクッカーと超小型バーナーの組み合わせにも負けていない。

    そして収納姿がとてもコンパクトだった。燃料缶やライター、スタビライザーなどのパーツがクッカー内にきっちり収まり、収納時のガタツキもない。気持ちのよいスタッキングは分離型になってもきちんと受け継がれていたのだ。

    もちろんフラックスリングによる高熱効率は変わらず、2カップ(500ml)1杯の水を2分30秒で沸騰させた。燃費も素晴らしく100g缶で24~27回も湯沸かしができた。

    そして最大のエポックがバーナーとクッカーが「わかれた」こと。これによって手持ちのクッカーやフライパン、網焼き器なんかを使えるようになり、調理の幅がグッと広がった。とくにフライパンを使えるようになったのはありがたい。おかげでベーコンエッグや生姜焼きを気軽に食べられるようになった。

    そのいっぽうで純正クッカー(元カノ)の使い勝手も良くなった。しっかりした把手がついてハンドリングがしやすいし、広口になったおかげで調理もしやすい。垂直に噴き上がる炎とその熱をすべて吸い取る連携プレーは昔のまま。かつての「身も心も溶け合うような一体感」はないが、びっくりするほど安定している。不思議に思ってよく見たら、ゴトクに切り込みが切ってあり、ここにフラックスリングがカチッとはまり込むようになっていた。このあたりの小技はさすがである。

    「私たちは別れたほうがうまくいくのよ。きっと」

    彼女にそういわれたとき僕はそんなことは絶対ないと思っていた。でも今は彼女が正しかったと思っている。最近の僕らは以前より息が合っている気がする。湯沸かし時間も短縮されたし、どんな環境にも素早く対応できるようになった。

    そしてこれは彼女には内緒なのだけど、僕はグラマラスな深鍋さんやクールビューティーなフライパンさんと出かけるキャンプが、最近はとても楽しくてしょうがないのである。

    フラックスリング

    底部に付いている「フラックスリング」は、高い熱効率を持ちながらガスの消費量を抑えることに成功した。

    五徳

    バーナのー五徳は、ジェットボイル以外のクッカーでも使えるように設計されている。※直径20cm、容量1.5Lまで。

    収納

    スタビライザー、バーナー、100gのガスカートリッジがちょうど収まる優秀設計。

    ホーボージュン

    image

    大海原から6000m峰まで世界中の大自然を旅する全天候型アウトドアライター。X(旧Twitter)アカウントは@hobojun。

    ※撮影/中村文隆

    (BE-PAL 2025年4月号より)

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