中華の定番きのこ「キクラゲ」は梅雨が旬。意外に身近で採れるキクラゲの仲間たち。

2019.06.29

キノコを採って&撮って30年!マッシュ柳澤の知れば知るほど深みにハマる野生菌ワールドへようこそ!

雨上がりの日差しが透ける、梅の小枝に生えたキクラゲ。

妙にキクラゲが好きだ。コリコリした歯ざわりとニュルンとした舌触り、ツルンとした喉越し。メインの食材にはならないキクラゲだけども、特別な風味が無く、ほとんど味も香りも無いからこそ、どんな料理にも合う名脇役だ。

キクラゲの旬は梅雨時。たっぷり雨を吸い込んで、肉厚でプルプルの野生のキクラゲは、販売されている乾燥品を戻したものとは一線を画す美味さがある。

ジメジメして鬱陶しい季節だが、悪いことばかりではない。雨の多いこの時期は、秋雨前線の頃とならんで、枯れ木や倒木に生えるキノコが最も活発に活動する季節だ。キクラゲも梅雨時に旬を迎えるキノコ、木材腐朽菌の一つだ。

実はキクラゲや近縁のアラゲキクラゲは、春から秋まで、ほぼ一年中生えているが、雨の少ない乾燥した時期は、小さく硬く縮こまり、キノコというよりは、まるでコケ(地衣類)のような見た目になっている。

しかし、雨が降って十分水分を吸収すると、もとの新鮮でプリプリしたキクラゲに戻る。これは、スーパーなどで販売されている乾燥キクラゲと同じ。

天然のキクラゲも天日乾燥をすれば、長期保存が可能だ。

冬(11月撮影)、乾燥して固く縮んだアラゲキクラゲ。しっかり木に固着していて、採取し辛い。水に浸すともとに戻るが、乾燥前の鮮度が悪いと美味くはない。

キクラゲ採りの狙い目はどんな森?

キクラゲは、主に広葉樹の枯れ木の倒木や、切り株に発生する木材腐朽菌の仲間だ。気をつけて見ていれば、公園や街路樹の切り株でも見つけることができる。

深山でなければ出会えない珍しいキノコではない。意外に狙い目なのは、都市部郊外に点在する小さな里山。それも手入れの行き届かない、放置されたうっそうとした森だ。

管理された森なら片付けられて切り出されているはずの、倒木や枯れ木がそのまま放置され、キクラゲをはじめ木材腐朽菌にとって絶好の発生環境になっている。

本来、薪炭林として、あるいは農用林として適切に利用されることで、樹木と共生する菌根菌やさまざまな生き物のゆりかごになるはずの森が、皮肉なことだが、荒れ果てることでキクラゲなど腐朽菌の天国になっている。

手入れされず放置された里山の倒木に群生するアラゲキクラゲ。こういう木を見つけておけばキクラゲは当分買う必要が無い。

何故かつい最近まで下火だったキクラゲの国内生産の不思議。

日本でキクラゲを食用にした歴史は古く、室町時代には食べられていたという。栽培も江戸時代の本草学者、儒学者「貝原益軒」が宝永元年(1704)に表した「菜譜」に栽培法が記されている。

『木耳(きくらげ)諸木に生ず。木の性によって良毒の性かわる。又米泔(しろみず)と粥を煮て、桑塊などの木にかけ、こもを以ておほれば生ず』

古くから知られていた割には、日本でのキクラゲ栽培はつい最近まで本当に微々たるものだった。

現代よりずっと自然度の高かった時代、わざわざ栽培するほどのものでもない身近なキノコだったのかもしれない。

スーパーなどで販売されている、乾燥キクラゲのほとんどは中国からの輸入品。日本産のものはほんの僅かだ。

ところが、ここ数年、日本のキノコ栽培農家の中に、国産キクラゲの栽培ブームが巻き起こっているという。

菌類を食べて体調を整える、いわゆる菌活ブームの影響だ。特に生キクラゲの生産は、九州から始まり、日本全国に広がり生産量も年々増大している。

中華料理の定番食材のキクラゲ、医食同源の思想の中で、不老長寿の薬効があると考えられている。実際に、鉄分やカルシウムの含有量が高く、中でもビタミンDの含有量は全食品中最高で健康食品としても注目されている。

ところで、販売されているキクラゲは乾燥品も生も含めて、本当はキクラゲではない。実は近縁のアラゲキクラゲが栽培品の大部分を締めている。

●キクラゲ(食)

学名:Auricularia auricula-judae (Fr.) Quél.

切り株に折り重なって発生。温帯に分布する。キクラゲ科。

【形状】

背面(上側)の一部で枯れた樹木に着き、柄はない。円形~耳状~逆椀状。数個が癒着して不定形になることがある。黄土色~淡褐色~褐色。

【肉】

薄くゼラチン質で、雨などで濡れた時、透明感がある。無味、無臭。

【環境】

春~秋、稀に冬。主に広葉樹の枯れ木に発生する。

アラゲキクラゲは、キクラゲに比べると温暖な地域に発生し、温帯に分布するキクラゲに対して、熱帯から温帯にかけて分布する。

関東地方のシイなどが交じる里山では、むしろアラゲキクラゲのほうが普通だ。北に行くほどキクラゲの比率が増える。

アラゲキクラゲはキクラゲより肉厚で、食感もツルン、プルプルのキクラゲより硬く、コリコリとした歯ざわりの良さが身上だ。

●アラゲキクラゲ(食)

学名:Auricularia polytricha (Mont.) Sacc.

キクラゲより暖地に発生する。キクラゲ科。

【形状】

幼菌の時、盃状で短い柄があるが、成熟すると無柄。背面の一部で枯れ木に着き、下向きの椀状~耳状。ときに数個が癒着する。

背面(上側)は微毛に覆われ、フェルト状、淡灰褐色。表面(下側)は平滑で、褐色~暗褐色。緩やかな皺がある。

【肉】

やや硬いゼラチン質で表面と同色。無味、無臭。

【環境】

広葉樹の枯れ木上に発生。

キャンプでも作れる、超らくちん、キクラゲ料理の作り方。

●アラゲキクラゲと春雨の中華サラダ

【材料】

  • アラゲキクラゲ数個
  • 春雨50グラム
  • ハム、ササミ肉、キュウリなど適量
  • 中華ドレッシング
  • 醤油  大さじ2
  • 酢   大さじ1
  • 砂糖  大さじ1/2
  • ごま油 大さじ1

以上を、よく混ぜ合わせておく。

【作り方】

  1. 春雨を茹で水にさらして予熱を取り、余分な水気をきって、食べやすい長さに切っておく。
  2. アラゲキクラゲを沸騰したお湯で4~5分茹で、冷水で冷やし、食感の悪い石づき(付け根)を取り除く。
  3. アラゲキクラゲを千切りにする。
  4. 好みで、ハムやキュウリの千切り、鶏のササミをほぐしたものなどをアラゲキクラゲと春雨に和え、予め作った中華ドレッシングをかける。

●キクラゲの中華風卵炒め


【材料】

  • アラゲキクラゲ数個
  • タケノコの水煮 小1/2個
  • 卵 2個
  • ニンニク 一欠け
  • たかの爪 一本
  • コショウ少々
  • サラダ油 適量
  • ごま油 適量

【合わせ調味料】

  • ガラスープの素 小さじ1(大さじ2ほどの湯で溶いておく)
  • 酒 大さじ1
  • ごま油 少々
  • 好みでオイスターソース 大さじ1/2

上記を予め混ぜ合わせておく。

【作り方】

  1. アラゲキクラゲを沸騰したお湯で4~5分茹で、食感の悪い石づき(付け根)を取り除き、食べやすい大きさに切っておく。
  2. タケノコの水煮を3~4ミリの太さの千切りにする。
  3. 薄切りにしたニンニクと、種をとったタカの爪をサラダオイル(たっぷりめ)で炒め、油に香りを移す。ニンニクとタカの爪は取り除いておく。
  4. タケノコとアラゲキクラゲを3の油で、さっと炒め、溶き卵を回し入れ、合わせ調味料を加え、卵が半熟になったら完成。

中国薬膳料理のキノコの定番、シロキクラゲも日本に自生している。

中華、薬膳料理の高級食材として知られる「シロキクラげ」銀耳(ぎんじ)いわれ、世界三大美女の一人、楊貴妃が美容のために好んで食べたといわれるキノコでもある。

シロキクラゲのゼラチン質(他のキクラゲのも)は、質の良い植物性コラーゲンで、化粧品の原料にも使われている。他の薬効は、咳、喉の痛み、胸部の痛みなど。

●シロキクラゲ(食)

学名:Tremella fuciformis Berk.

落枝に発生したシロキクラゲ。発生量が少なく貴重なきのこだ。

【形状】

薄膜が重なり合い、花びら状。白色で透明感ありゼラチン質。表面は平滑。乾くと淡黄色で薄皮状。胞子は薄膜の両面に作られる。

【肉】

白色でゼラチン質。無味無臭。

【環境】

初夏~秋。広葉樹の枯れ木や落枝に発生。

【食毒】

薬膳料理に使われる。生食は不可

ところで、シロキクラゲは、実は厳密にいうとキクラゲの仲間では無い。キクラゲとアラゲキクラゲはキクラゲ科に属するが、シロキクラゲはシロキクラゲ科に属する。

実はキクラゲ科では無い、キクラゲの仲間たち。

シロキクラゲ科のキノコ

ハナビラニカワタケは、キクラゲやシロキクラゲよりも、深山に発生するキノコだ。湿潤時は透明で鮮やかな朱鷺色。非常に美しいキノコだ。キクラゲやシロキクラゲと同じように利用することができる。

●ハナビラニカワタケ(食)

学名:Tremella foliacea Pers.

コナラの枯れ木に発生したハナビラニカワタケ。

【形状】

淡橙色~橙肌色。不規則にたわんだ薄膜が重なりあって、子供が作るちり紙の花飾りのような形。

【肉】

薄くゼラチン質で、乾燥すると硬く縮み、暗色になるが、濡れるともとに戻る。

【環境】

春~秋、主に広葉樹の枯れ木上に発生。

【食毒】

キクラゲと同じように利用可。ただし生食は禁止

ヒメキクラゲ科のキノコ

公園やそのあたりの小さな藪、タマキクラゲは、どこにでも、普通に見られるキクラゲの仲間だ。実際目にすることが多いキノコだが、小さい上にやや不定形な形のため見過ごされている。

食用になるが、小さいためと発生環境のせいかあまり利用されない。

●タマキクラゲ(食)

学名:Exidia uvapassa Lloyd

細い落枝に発生したタマキクラゲ。

【形状】

直径、約6mm~20mmほど、球形、平板状、など様々な形。黄褐色~赤褐色。なんとなく干し葡萄に似た形のキノコ。一個ずつ別々に成長し、癒着しない。しばしば表面に小突起がある。

【肉】

ゼラチン質で表面色と同じ。無味無臭。

【環境】

広葉樹の落枝、枯れ枝上に群生する。

【食毒】

可食だが、小さいため普通食用には利用されない。

別名、「猫の舌」とてもキクラゲの仲間とは思えない形のキノコ。分類上も最近まで異論があり、現在のヒメキクラゲ科に落ち着くまでが紆余曲折があったという。

ウラジロモミなど針葉樹のやや腐朽の進んだ倒木や枯れ木に発生する。透明感がある美しいキノコだ。

●ニカワハリタケ(食)

学名:Pseudohydnum gelatinosum (Scop.) P. Karst.

ウラジロモミの倒木に発生したナカワハリタケ。別名「ネコの舌」。

【形状】

貝殻型~半円形。側生し通常無柄だが、稀に短い柄がある。上面は微毛に覆われ灰色~黒褐色。下面には白色の針状突起が密生する。

【肉】

カサ表面より淡色でゼラチン質。透明感があり水気が多い。無味無臭。

【環境】

針葉樹、やや腐朽の進んだ枯れ木上に群生。

【食毒】

茹でて、酢の物や和え物に利用する。生食は不可

前述した江戸時代の本草学者「貝原益軒」は『(発生する)木の性によって良毒の性かわる』と記している。実際には生える樹種によって食毒が変わるわけではない。

ただ、私も確認はしていないが、発生する樹種で味が変わることは十分ありえる。

栽培品と違って、自然の中で様々な樹種に生えたキクラゲ類の味を、食べて比べて見るのも興味深い。

文・写真/柳澤まきよし
参考/
「日本のキノコ262」(自著 文一総合出版)
「幸徳伸也 日本産きのこ目録2016.」
「山溪カラー名鑑 増補改訂新版 日本のきのこ」(山と渓谷社)
「北陸のきのこ図鑑」(池内良幸著 本郷次雄監修 橋本確文堂)
「中村学園大学 図書館 貝原益軒アーカイブ」

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