「地理院地図」と「今昔マップ」で時空を超えた旅に出る

2020.05.01

私が書きました!
ライター、編集者
高木義人
札幌と福島を行き来する”IT方面”の会社員兼ライター、編集者。趣味は旧版地形図を眺めながら自転車で田舎道や山道を徘徊すること、キャンプ、酒類全般、おき火づくり。そして呑み鉄。https://www.panologue.com

こんな時こそ地図の世界を探検しよう

国土地理院の「地理院地図」で奈良県生駒市と大阪府東大阪市を結ぶ旧奈良街道にある暗(くらがり)峠付近を表示した例

国土地理院の「地理院地図」で奈良県生駒市と大阪府東大阪市を結ぶ旧奈良街道にある暗(くらがり)峠付近を表示した例。急坂が続く峠道として知られるが、画面からも等高線の間隔が狭く難所であることが想像できる。麓(ふもと)の豊浦町と峠の頂上を結んだ断面図を見ると直線距離で約2.5kmの間に標高差が400mあることがわかる

国土地理院が発行する「地形図」は登山をはじめアウトドアでの活動に欠かすことのできない存在だ。この地形図をデジタル化し無償でウェブサイトに公開しているのが「地理院地図」である。店舗名や施設名の記載もナビゲーションの機能もなく、読み解くには等高線や地図記号といった独特のルールを理解する必要があるなど、 Googleマップなどの地図サービスに比べると街なかでは使いにくい印象があるかもしれない。でも地理院地図にはこれらの便利な地図や地形図にはないさまざまな情報と機能が盛り込まれている。「地理院地図」を見ながら自宅でのんびり時間と空間を超えた旅に出てみよう。

地理院地図

https://maps.gsi.go.jp/
※「地理院地図」画面の出典は国土地理院ウェブサイトより

地理院地図初期画面

地理院地図の初期画面で左上にある「地図」アイコンをタップし、メニューを開いた状態。メニューは閉じることもできるので、画面の小さなスマートフォンでは必要な時にだけ表示すると使いやすい。また画面右上の「ツール」メニュー(スマートフォンの場合はメニューアイコン内)から「並べて比較」を選択すると、画面を分割して表示することができる。

左右で年代の異なる写真を表示すれば、時間の経過による地形や街並みの変化をより詳しく比較できる。また写真と地形図を表示すれば実際の地形がどのように地形図上に表されるのかを理解しやすい。拡大・縮小や位置を移動しても左右の地図の表示が連動する機能もある。1点目の図版で使用した断面図もツールメニューから利用できる。

昔の風景を空から眺める

旧狩勝峠の地形図

旧国鉄時代に日本三大車窓のひとつといわれた北海道の旧狩勝峠(根室本線の富良野~帯広間にある旧線)を最新の地形図と1960年代の写真で比較してみた。特徴的なS字カーブが最新の地形図でもかろうじて確認できる

まず最初に試してみたいのが「年代別の写真」メニューだ。航空機や衛星から撮影された写真が8つの年代1936年~現在)に分類、公開されている。地域によっては該当する写真がない年代があるものの、自分が小学生だった頃の学校周辺の風景や廃線前の鉄道路線など、今では見ることのできない風景を空から眺めることができる。家族と一緒に当時の思い出を語りあったり、ビデオ会議システムを使った友人たちとの「宅飲み」の際に画面を共有すると盛り上がりそうだ。

いざという時に役に立つ防災情報も

地理院地図にはさまざまな防災情報も掲載されている。各地に残る災害伝承の碑の位置と解説、近年の災害(地震、台風・水害、火山)の状況などを参考に、自分の住む街が過去どのような災害に見舞われてきたかを知っておこう。避難場所の位置と豪雨による浸水エリアといった複数の情報を重ねて表示することもできるので、災害時の避難経路シミュレーションなどに役立てたい。

2019年10月の台風19号(令和元年東日本台風)の被災状況

2019年10月12日に伊豆半島に上陸し列島各地に大きな被害をもたらした台風19号(令和元年東日本台風)の情報から福島県郡山市付近を表示。国土地理院が被災直後に河川の氾濫状況を航空機から撮影した写真と、撮影データを元に作成した実際の浸水エリアを表す「浸水推定段彩図」、これらの2つの情報に洪水時の避難所の場所を重ねて表示してみた

過去の災害の記録としてぜひ見ておきたいのが年代別写真メニューにある「東日本大震災後正射画像」だ。2011年3月の震災直後から2年9ヶ月後の2013年12月まで4回にわたって撮影された三陸沿岸の写真である。最新の写真や今昔マップの「東北地方太平洋岸」にある2011年以前の地形図と比べると、津波に襲われる前の街の様子や当時の被害の大きさ、その後の復興の足跡が見えてくる。

東日本大震災当時と2年後の気仙沼の様子

震災直後の写真(左)には津波によって気仙沼漁港から北に500mほど離れたJR鹿折唐桑駅(ししおりからくわえき・JR大船渡線)付近まで流された第18共徳丸がそのままの姿で写っている。2年後の9~12月の写真では船体の解体が進んでいる。※実際の解体作業は10月末に終了。現在は更地になり、BRT(バス高速輸送システム)の鹿折唐桑駅が付近に移設された。Googleストリートビューなら最新の現地の様子を地上から眺めることができるので、ぜひ見比べてみよう

苦手な等高線も3D表示で一目瞭然

登山道や自転車での峠越えの際に気になるのがルートの勾配だ。「等高線の間隔が狭い=勾配が急」というルールは頭では分かっていても、地図から実際の地形を理解するには経験が必要だ。しかし地理院地図には3D表示という便利なツールがある。
※一部の環境では表示できない場合あり

ウインドウに立体化したいエリアを表示し、ツールメニューから「3D」を選択するだけ。表示されたモデルをグルグル回して東西南北自由な方向から眺められるだけでなく、上空から見下ろすことも地中(?)から見上げることも、拡大・縮小もできる。山の尾根筋や谷と等高線の関係も、火山の噴火でできたカルデラ湖などの特徴的な地形も、3D表示なら一目瞭然である。立体感が乏しい場合は、高さ方向を強調すれば地形の特徴を把握しやすくなる。山だけでなく扇状地や河岸段丘、断層や入り組んだリアス式海岸なども”立体映え”する地形である。

表示しているデータのダウンロードも可能なので(無償)、3Dプリンター出力サービスに持ち込めばお気に入りの地形のミニチュアモデルを製作することもできる。

猪苗代湖東岸からの磐梯山の眺め

福島県の猪苗代湖(いなわしろこ)東岸から眺めた磐梯山(ばんだいさん)。高さ方向の強調は2倍に設定。地形図ではなく写真を表示している状態で立体化すればよりリアルな景観となる。湖周辺のキャンプ場から磐梯山がどのように見えるかをシミュレーションするのも楽しい

年代別の地形図を集めた「今昔マップ」

今昔マップ初期画面

「今昔マップ on the web」。掲載エリアは県庁所在などの都市部が中心だが、年々表示エリア(収録地形図数)が拡大しつつあり、関東や中京、京阪神ではほぼエリア全域をカバー、東北地方の太平洋沿岸も福島県から青森県の八戸付近まで海岸線を辿って移動できるようになった

地理院地図にはさまざまな情報が用意されているが、残念ながら過去に発行された地形図は図郭(区画)ごとに1枚ずつしか表示できない。そこで活用したいのが「今昔マップ on the web」だ。埼玉大学教育学部人文地理学研究室(谷謙二教授)が公開しているもので、同じ年代・同じエリアの地形図がシームレスにつなぎ合わされた状態で表示される。明治時代以降の地形図(全国41地域、4,028枚)を収録しているので、地理院地図の写真(昭和10年代以降)より古い国土の姿を知ることもできる。

明治から令和へ。街の変化を比較する

明治42年(測図、発行は大正2年)と現在の世田谷区高井戸付近の比較

明治42年(測図、発行は大正2年)と現在の世田谷区高井戸付近の比較。玉川上水が暗渠(地下に設けた水路)となり、その上に首都高速4号線が建設されたことや、神田川(当時は神田上水)の河川敷が広かったこと、その場所が現在はグラウンドとして利用されていることなどがよくわかる

地理院地図の写真で自分が住む街の昔の風景を空から眺めるのも面白いが、今昔マップなら地名や道路の変遷、地図記号から土地の使われ方や植生の変化などを知ることができる。廃線となった鉄道や廃道となった国道、廃止された炭鉱や学校など、昔の地形図にはかつてそこに暮らしていた人々の様子も記録されているのだ。

地理院地図と2画面表示で真価を発揮

今昔マップは該当エリアを開くと画面が分割表示されるので、左右で異なる時代の地形図を表示してもいいし、片側に地理院地図の写真を表示してもいい。もしPCなど表示領域の大きなディスプレイを使えるのであれば、ブラウザのウインドウを2つ開き片方のウインドウに地理院地図の写真、もう片方に今昔マップを表示してみよう。比較できる情報が増え”タイムトラベル”が楽しくなる。

地理院地図の写真と今昔マップの地形図を比較

海岸線が大きく変化した例として浦安市の舞浜地区を表示してみた。画面左側のウインドウが地理院地図の写真で、最新のもの(2014年撮影)と1961~1969年撮影分(未撮影部分にベースの標準地図が見えている)を表示。右側のウインドウは今昔マップの地形図で1965~1968年発行のものと1975~1978年発行分を表示

今昔(こんじゃく)マップ

http://ktgis.net/kjmapw/

地図のことをもっと知りたくなったら

地理院地図と今昔マップにはまだまだ紹介しきれない情報がたくさん掲載されている。メニューやツールのアイコンの先にある奥深い世界を探検してみよう。またTwitterの「国土地理院応用地理部」アカウントでは「在宅教育支援」や「地形がよくわかる」などためになる情報を発信しているので、ぜひフォローして地図の楽しさにハマってほしい。

Twitter 国土地理院応用地理部 @gsi_oyochiri

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