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畳一畳分のスペースでできる、気持ちよくて快適な大地の再生流「風の縄文トイレ」

2019.11.08

穴と溝を掘って、屋根付きの簡易小屋を設えるだけ。この究極的にシンプルなアウトドアトイレが「風の縄文トイレ」だ。トイレットペーパーも使えて、匂いもほとんどなく、常に快適に使えるとのウワサを聞きつけ、ワークショップに参加してきた。自然の摂理に沿ったこのトイレは、自然災害が多くなると言われるこれからの時代、あらゆる意味で注目され、また必要とされることになるだろう。

土地の水、空気の通り道である“水脈環境”を見立て、整えるのが「大地の再生」

自然が好きでフィールドに出て何かしらの活動をしている人なら、おそらく理屈ではなく体感として理解している共通の認識があると思う。それは、地球も私たちと同じように「呼吸をして生きている」という感触。

そんな感覚を土木という技術を通して具現化させ、全国各地で環境再生に取り組んでいるのが、造園技師で一般社団法人大地の再生の顧問、矢野智徳さん。

土地の中には、水と空気の通り道である“水脈環境”がある。その流れが滞ることなく巡っていれば良いのだが、現代社会では人間の利便性と効率性と経済性を求め、山を切り崩して地形を壊し、コンクリートやアスファルトで土に“ふた”をしてしまった。
すると、どうなるだろう? 今まで流れていた水や空気は行き場を失い、やがてその土地の植生を変え、本来の自然の姿が失われてしまうことになる。

地形図、標高図、水脈図など、その土地を知るための様々な地図を見てみるとよくわかるのだが、水脈というものは、まるで人体の血管のように、土地を隈なく巡っている。この地球と人間の体がフラクタル(相似形)だとしたら、水脈=血管が詰まってしまったその結果のことは、容易に想像がつくだろう。

矢野さんは、長年の経験と実績から、“水脈環境”を見立てる術を身につけ、その土地本来の姿を取り戻し、自然(そこに暮らす動植物すべて)と人とが共存する環境を再生させるべく、技術と施工を日々、研究し現場で実践を続けている。
大地の再生のことを書き始めたら一冊の本になるほどなので、それは後日に譲るとして、今回のテーマは「トイレ」に絞った。

穴を掘って、溝をつくって屋根をつけたら、はい、風の縄文トイレが1日で完成!

2019年、夏。神奈川県の某所にて、「風の縄文トイレ」を作るワークショップが開催された。「風の縄文トイレ」とは、矢野さんが実践する大地の再生の視点から誕生した、土坑式のトイレだ。講師は、大地の再生の佐藤俊さんと、実際に岡山県で「風の縄文トイレ」を作って活用している杉本圭子さん。

一般社団法人大地の再生 佐藤俊さん

一般社団法人大地の再生 杉本圭子さん

ワークショップが開催された場所は、海と山が見渡せる高台にある住宅地の一角。この土地を購入したKさんは、敷地の急斜面部分に大地の再生による植栽土木を行い、(通常であればコンクリートで固めて杭を打って迫り出させ、平地面積を広げるのだろうけれど)、森のような庭を作っている。建物はまだ建っていない。が、「風の縄文トイレ」のことを知り、まずは平地にトイレを作ることを決意。そして、可能な限り大地の再生や自然に対する想いを同じくする人たちと共創をしたいと、ワークショップ形式での「風の縄文トイレと小屋作り」と相成った。

トイレの構造はいたってシンプル。穴を掘り、風を通す溝を作り、そこに落ち葉と炭を入れるだけ。ポイントは、風の通り道を探して設置すること。その見立てが必要になる。風が通ることで驚くほど分解が早くなり、臭いもなく、常に快適。トイレットペーパーもそのまま土に還すことができるというから驚きだ。屋根付きの簡易小屋を作るのは、穴に水が溜まらない方が良いとの理由から(もちろん、私有地とはいえ住宅地なので、目隠しも必須)。

しかし、どうして臭いがなく快適に使えるのだろうか。一般的には、大と小が合わさると臭いの元となってしまうと考えられていて、大と小を分けるようにデザインされているコンポストトイレもある。
大小を分けなくても風の縄文トイレが臭わない理由は、やはり空気と水の通り道にあるようだ。
「穴に炭と落ち葉を入れるので、空気の層ができ、小は自然に地下浸透し、大は落ち葉の上に残ります。つまり、自然に大と小が分かれるので、臭いが発生しません。大の上におがくずを被せると、虫も寄ってきません」(杉本さん)
「植物も土の中の微生物なども、土の中に新鮮な空気があるから元気に生きていけます。水脈を作ることで土の中に新鮮な空気がたくさん送り込まれ、微生物が活発に働き、糞尿を分解してくれます。また、炭の脱臭効果もありますし、足元の風通しが確保されているため、ハエなどの虫もわきにくいのです」(佐藤さん)

では、でき上がりまでのプロセスを写真で追ってみよう。

1. 風の通り道を探し、場所を決める。目印の杭が打ってあるところに穴を掘り、その前後に溝を作る。

2. 穴と溝を掘る場所の草を刈る。

3. トイレの便器となる深さ50cm以上の穴を掘る。

4. その穴の両サイドから伸びる深さ20〜30cmほどの溝を掘る。この溝は糞尿を流すものではなく、風の通り道となる。

5. 溝の途中に、溝の深さと幅の1.5倍ほどの「点穴」を作る。点穴は、土の中の空気と水の流れをより良くするためのもの。

6. 穴と溝に炭と落ち葉を入れる。

7. 溝に刈った草を戻す。茎が太いものを下に、細いものは上に。風の流れる方向に草先をそろえる。

8. 穴の上に板を設置する。

9. できるだけそこにある資材(今回は流木が中心)で小屋を建てる。

10. 完成! トタン屋根には、土を盛り草花の苗を植えて「草屋根」に。壁には草を這わせて、風通しを良くしている。あとは、葦簀などで目隠しをする予定。

中はこんな感じ。使用後は、炭と落ち葉を投入。微生物が活性化してきたら、おが屑だけでもOKとのこと。

「Simple is best」を象徴するトイレで、自然とのつながりを取り戻す

すべては土に還る。
「風の縄文トイレ」は、そんな自然界の理(ことわり)を改めて思い出させてくれた。あまりにも利便性を追求しすぎて複雑な世の中になってしまった現代社会に、まさに“風穴”を開けてくれる存在になるのではないか。
それは、縄文時代に戻ろうとか、便利な世の中を否定しようということではなく、一人ひとりが自分の足元を見つめ直し、暮らし方や在り方、生き方と向き合うためのきっかけを与えてくれる。
排泄という生き物としての基本的な生理現象を通せば、自らも自然の一部であることが、シンプルに腑に落ちる。

また、気候変動等に伴い、これからますます自然災害が増えていくと言われている。被災地でのトイレ事情が常に課題に上がるのは、周知のとおり。コンクリートとアスファルトで固められた都会では難しいけれど、土と風と炭と落ち葉さえあれば、このシンプルな構造の「風の縄文トイレ」が救世主となることも考えられる。

さて、肝心の使い心地はどんなものなのだろうか。
残念ながら(?)、ワークショップでの試用はなかったから分からないけれど、大方の想像はつく。フィールドであの“気持ちよさ”を経験したことのある御同輩なら、おそらくご察しいただけるだろう。

構成・文・撮影/神﨑典子

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