2019年10月10日、ららぽーと豊洲(東京都江東区)で初開催となる「ソロキャンプ女王決定戦」が行われた。ソロキャンプの女王? なにが勝敗を分けるんだ? たくさんの疑問符を浮かべたまま、観戦しに行ってきた。
いまソロキャンプが、とにかく熱い!
昨今のキャンプブームの勢いはいまだ健在だ。キャンプを題材にしたマンガも多く、グループキャンプ、グランピング、さまざまな形態が出現してますます多様化している。そのなかで、いま一番注目されているのが「ソロキャンプ」。
読んで字の如く、ソロ=ひとり。ひとりで楽しむキャンプだ。まったく誰とも会わずひとりですることもあれば、数名のソロキャンパー同士で集まり、思い思いに過ごしつつも食事(作るのは別々)の時間を共有したりすることもある。いまや平日のキャンプ場はソロキャンプを楽しむ「おじさま」がたくさんいるとかいないとか…。
このソロキャンプ人気は、「自分でなんでもできる自由さ」が何より受け入れられているのかもしれない。誰に気兼ねすることもなく、食べたいときに食べ、眠りたいときに寝る。静かな自然のなかで気ままに過ごす時間は格別だ。
さらにソロキャンプ用の道具が増えたことも人気を後押ししている。テントをはじめ、小さなテーブルやダッジオーブン、焚き火台も! ソロ用となれば焚き火台も手のひらサイズから存在する。デザイン性やカラーリングも多種多様なものが販売されているのだ。そして既存のキャンプ道具だけでなく100円ショップやホームセンターなどの雑貨で、使えそうなものを見つけ出したり、うまく活用したりするのも楽しみのひとつとなっている。
道具が扱いやすくなり、キャンプのハードルも下がったいま、男性に限らず多くの女性がキャンプを楽しんでいるのもここ最近の特徴だ。テントを可愛らしく飾り付けたり、野外で女子会を開いたり、アクティブにソロキャンプを楽しむ女性が増えている。
そんな高まりを受けて、ソロキャンプ女王決定戦は開催される運びとなった。
おんなの熱き戦い! 気になる5名の女性キャンパーとは?
初開催の「ソロキャンプ女王決定戦」は、アウトドア好きにはお馴染みのショップL-Breath(株式会社ヴィクトリア)主催のもと行われた。キャンプの楽しさをもっと多くの人びとに! と、このイベントを発案企画、前代未聞の決定戦開催となった。
決戦の場は、ららぽーと豊洲。海を間近にのぞむシーサイドテラスに特設会場が用意された。秋晴れの下、朝から早くも観客らしき皆さんがちらほらスタンバイ…。それもそのはず、出場の女性ソロキャンパーは人気のインスタグラマーやYouTuberたち。ファンにとっては絶好のチャンスだ。しかも、競技の様子を彼女たちはライブ配信するというから、会場以外の場所でイベントを楽しんだ人は多かったことだろう。
さっそく出場キャンパーをご紹介しよう(五十音順)。
あらなみさん
ファミリーキャンプからキャンプにハマり、ソロキャンプもするようになった3児の母。 YouTubeチャンネル「あらなみ.Filmes」にてキャンプの様子や購入品紹介などを配信中。
山登り芸人 桜花(おうか) さん
富士山の山小屋アルバイトの経験を持つ、山登り大好き芸人。泊まりがけの山登りでは山小屋泊がほとんどだが、ときどきテント泊も。昨今山でもソロテントがブーム。そのブームに乗って参戦!
さばいどる かほ さん
登山とキャンプをこよなく愛する女子キャンパー。キャンプ好きの父の影響で幼い頃からキャンプ好き。大人になり、登山とキャンプ料理にハマる。普段はアイドル。
natsu camp(なつ きゃんぷ) さん
大阪府出身の女子ソロキャンパー。YouTubeにてソロキャンプの様子や簡単アウトドア飯レシピ紹介、食べ飲みグルメ動画など公開中。無類の酒好きで、自身で日本酒の会を立ち上げ会長を務める。夢は無人島でサバイバルキャンプ。
森風美(もりふうみ)さん
0歳でキャンプを始め、大学2年生の時に家族から独立してソロキャンパーとなる。在学中からキャンプライターとして活動。雑誌・テレビなど様々なメディアに出演している。
いずれもどっぷりキャンプの魅力にはまり、多くのファンを抱える。第1回目に相応しい顔ぶれとなった。
ソロキャンプを総合的に競うルール
出場キャンパーは、制限時間60分以内にテントサイトの設営と食事作りを完成させる。どんなキャンプサイトにするか、食事メニューはどんなものにするかも出場者が考える。使用するキャンプ道具は、すべて愛用品だ。食事メニューは、主菜、副菜、デザートの3品で構成。事前の下ごしらえは、いつもキャンプでやっている方法であればOKというものだった。
競技にともなって彼女たちに与えられたお題は、「初心者でも真似できる!ソロキャンプスタイル」。キャンプをやってみたい!そんな風に思わせ、かつ簡単な要素が組み込めているか? が大きなポイントとなる。
競技中の60分間は審査員が様子を見て回り、実用性、手際(スピード)、スタイリング、独自性、料理の味、といった項目で採点する。
審査員は、弊誌ビーパルにも馴染みのあるアウトドアコーディネータの小雀陣二さんやスタイリストの平健一さん。そして、公益社団法人日本キャンプ協会の五月女真弓さん、インフルエンサー YURIE (@yuriexx67)さんの4名が務めた。
初めての競技だけに、審査員の皆さんも緊張の面持ちだ。
いよいよ決戦のとき。栄えある初代女王は…?
カウントダウンの合図とともに、いよいよ競技スタート! 設営と調理はどちらから始めても手を付けても構わないなので、時間をうまく使うマネジメント力も必要だ。
5人とも同じような動きになるのかと思いきや、5人5通りでバラバラ!
ゆっくりマイペースに荷解きをはじめた、あらなみさん。設営ではなく先に調理をはじめた、natsucampさん。のっけからテキパキと手際よくテントを設営しはじめた、さばいどるかほさん。まずは、ギャグを飛ばす(さすがです!)桜花さん。使い慣れたキャリーバッグを開けて素早くテントを広げる、森風美さん。
合図とともに、並んでいっせいにテント設営にとりかかる姿は、全国高校総合体育大会(インターハイ)の登山大会での「幕営」を彷彿とさせる。ちなみにインターハイはチーム戦。
競技といえども、そこはキャンプ。黙々淡々とやるというよりは、それぞれにライブ配信の実況しながらであったり、MCからの質問に答えたり。出場者全員が笑顔で楽しく取り組んでいたのが印象的だ。
審査員もあちこち歩きまわり、覗き込んでみたり、質問をしたり、真剣そのもの!
制限時間の前に完了した場合は、その時点で審査がはじまる。最初に終えたのは、natsucampさん。半分近くの時間を残しての素早さだった!
制限時間の60分を迎え、ひとりずつアピールポイントなどのプレゼンタイムに移る。
あらなみさん
さばいどるかほさん
山登り芸人 桜花さん
natsucampさん
森風美さん
審査員の審議がはじまり、しばし、休憩。結果待ちの時間も5人とも円を作ってキャンプ談義に花が咲いていた。
さて結果は…
ソロキャンプ女王 natsucampさん
2位 森風美さん
3位 さばいどるかほさん
審査員特別賞 桜花さん
審査員特別賞 あらなみさん
という結果になった。
本来キャンプは順位がつくものではないものの、出場者も審査員も観客も全員が笑顔で楽しめるイベントだった。
YouTubeでキャンプを配信する新たな風
ひと昔前では考えもつかなかったキャンプのライブ配信。いまやアウトドアやキャンプをテーマにしたチャンネルは数多あり群雄割拠の状況。「え〜、人のキャンプなんか見て面白いの〜?」と斜めに構えつつ、いくつか覗いてみたが、これが案外と面白い(笑)。これいいなぁ!と道具の参考になることもあれば、週末キャンプ行こうかなぁ、そんな気にもなる。キャンプをしたことがない人にとってみれば、「キャンプってこうやってやるのか」という学びがあるのかも知れない。
お笑いタレントのヒロシは、いまや日本一有名なソロキャンパー。自身が運営する「ヒロシちゃんねる」のチャンネル登録者数は53万人にのぼる人気ぶりだ。
ソロキャンプ女王決定戦の出場キャンパーたちも、数千人から数万人のフォロワーを抱えている。その数には、アウトドアやキャンプに興味がない人たちにも多く含まれていることだろう。目まぐるしく多様化するキャンプやアウトドアの世界。今回出場者である彼女たちが繰り広げるソロキャンプスタイルを目の当たりにし、次はなにが来るのだろうか、と今後が少し楽しみになった。
※構成/須藤ナオミ 撮影/小倉雄一郎、須藤ナオミ