『ドラえもん』を始め、夢あふれる児童まんがをライフワークにしていた藤子・F・不二雄先生。実は『ドラえもん』の連載開始前の1969年に、大人向けのまんが『ミノタウロスの皿』を発表。これ以前の『オバケのQ太郎』『パーマン』『ウメ星デンカ』などと絵のタッチはほとんど変えないままの挑戦は多くの読者に衝撃を与え、その後も読み切り形式での作品が発表されています。
神奈川県川崎市にある藤子・F・不二雄ミュージアムでは、2023年10月中旬までの約1年間の予定で、「SF短編シリーズ」のまんが原画をかつてない規模で特集する「藤子・F・不二雄のSF 短編原画展 ー Sukoshi・Fushigi ワールドへの招待 ー」を開催中です。
SFはサイエンス・フィクションではなく「S=すこし」「F=ふしぎ」
ミュージアム2階の展示室Ⅱを会場に展示されている「SF短編シリーズ」の作品が並んでいますが、こちらのミュージアムでは藤子・F・不二雄先生の考えに習ってSFを「サイエンス・フィクション」の略ではなく、「S=すこし F=ふしぎ」と定義しています。
先生は『SFマガジン』を愛読するなど、元々SFマニアでした。ミュージアムの担当者は、そんなファンとしての謙遜の意味もあって、自分の作品世界で描くことを「少し」と表現したのではないかと考えているそうです。
「今回は大人向けの物語やかなりダークな世界観、シリアスな社会問題を扱う作品が並んでいます。先生が描かれた当時の1960年代から70年代に主に起こっていた問題が取り入れられていますが、現在にも通ずる普遍的な物語として読んでいただける内容だと思います」
ドラえもんの連載開始前年に始まり、そこから生涯を通じてほかの子ども向けの作品とともに描き続けられてきた作品。『ドラえもん』からも「行け!ノビタマン」など「SF短編シリーズ」の題材と共通する要素が見受けられるお話を展示。子ども向けの夢溢れる作品の一方で、こういった作品も送り出していたという藤子・F・不二雄先生のあまり知られていない一面に触れられる貴重な機会となっています。
『ミノタウロスの皿』の表紙に入った写真が撮れるコーナーも
展示室入口にある鏡には、ちょっとした仕掛けが。一見すると展示名を書いたものなのですが、近づいて中に写る自分を撮ると、映し出されているのは『ミノタウロスの皿』の表紙に入り込んだ自分の姿。美術展にフォトスポットがあるのは珍しくなくなりましたが、こういう仕掛けがあるのも「少し・不思議」で楽しいですね。
ミュージアムカフェに新メニューが登場
藤子・F・不二雄ミュージアムへ訪れたならば、ぜひ入場した人のみ入店できる3階のミュージアムカフェに立ち寄って一休みを。「SF短編シリーズ」にちなんだメニュー2品とドラえもんのひみつ道具「通り抜けフープ」から顔を出すドラえもんを表現した「とおりぬけフープ de ドラらぁめん」など、目でも楽しいメニューが揃っています。
SF短編シリーズのグッズも登場
1階のミュージアムショップでは、「SF短編シリーズ」からデザインしたグッズが新たに登場。『ミノタウロスの皿』の皿や「SF短編シリーズ」からヒロイン4作品をデザインしたペンスタンドが並んでいます。
また、ミュージアム公式オンラインストア限定で『カンビュセスの籤』『ヒョンヒョロ』の扉絵をデザインしたスケートボードデッキを受注販売しています。
詳しくはオンラインストアにてご確認を。
川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム
住所:神奈川県川崎市多摩区長尾2-8-1
開館時間:10:00~18:00
休館日:火曜日 ※臨時休館、 火曜特別開館あり
料金:大人・大学生 1,000円 中学・高校生 700円 子ども(4歳以上) 500円 ※3歳以下無料
※入館は日時指定による事前予約制。入館チケットは全国のローソンにて。
ミュージアムに関する問合せ:0570-055-245(9:30~18:00)
取材・文/北本祐子