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    2021.01.02

    「現代アイヌの肖像」池田宏写真展が開催! 

    2020年12月18日から東京都人権プラザで「現代アイヌの肖像 池田宏写真展」が始まりました。
    写真家の池田宏さんは、2008年からアイヌ民族をテーマに作品を撮り続けています。2019年に発表した写真集『AINU』が話題となりました。現代を生きるアイヌの人たちの姿を真摯に捉えています。昨年BE-PAL本誌に掲載した池田さんのインタビューをお届けします。

    アイヌ民族について

    北海道を中心に樺太、千島列島などに住んでいる民族。信仰は自然界のすべてを神とするアニミズムで、独自の文化芸術、言語、口頭伝承を持つ。狩猟採集+原始的農耕の生活を長く守ってきたが、中世以降は船による交易なども行なった。江戸時代から本土政権の強い干渉を受け、明治に入ると同化政策がとられた。差別的な扱いの歴史は今も続くが、’97年に旧土人保護法が廃止されアイヌ文化振興法が制定された。ただし先住権を認める文言がなく、’19年にはじめてアイヌを先住民族と明記する新法が閣議決定された。現代はアイヌにルーツを持つ人たちが全国各地に暮らしている。

    現代アイヌの肖像、写真集『AINU』が話題!

    写真集『AINU』池田宏(リトルモア)2,900円+税。 2008年から2018年まで、アイヌの血を引く人々を北海道で撮影。民族の誇り、生活者としての息づかいを写真に収めている。巻末には、「現代アイヌの肖像」と題し、様々な境遇で生きる5人のインタビューを収録。

    表紙の写真は、きれいに整えられていながらも眉やヒゲの濃さがはっきりわかる若い男性の顔半分。ページをめくると、彫りが深く目ヂカラの強い老若男女が次々に登場する。『AINU』(リトル・モア刊)は、現代を生きるアイヌの日常を切り取った写真集だ。

    著者の池田宏さん(38歳)は、大学在学中からバックパッカーとして放浪旅を続け、その後写真の世界へ入った。

    「沢木耕太郎の影響です。自分の知らないものを見てみようと世界中を旅したんですよ。あるとき、日本にも自分のまだ知らない場所があるなと気づいた。すごく単純な理由でカメラを持ち、青春18きっぷで行ったのが北海道の二風谷でした」

    平取町にある二風谷は、アイヌ文化の普及啓発を観光と連動させることに成功した集落だ。
    「伝統織りを実演していた女性がいて。気さくな方だったので、好奇心でこう尋ねたんです。今も純粋なアイヌっているんですかね、と。そしたら急に顔色が変わり、こういわれたんです。じゃあ純粋な日本人ってなんですか、と。

    その剣幕にショックを受けました。そして気づきました。僕は九州出身で薄い顔立ちですが、遺伝的に何者なのかなんて自分でもわかりません。すごく失礼なことを無意識でいってしまった。こういう無知や想像力のなさが根底で差別に結びついていることに気づき、とても苦い思いをしました」

    道内の温泉やスナックへ行くと、なにをしに来たのかとよく聞かれた。アイヌの写真を撮りに来たというと、瞬間的に場の空気が冷めていく経験をした。二風谷で純粋な日本人とはなにかと切り返されたとき、その空気感の意味がわかった。

    北海道には日常会話の中でアイヌに触れることが憚られるムードがある。このモヤモヤした感じは和人、つまり本州から入ってきた人たちの子孫の間にも、先住民であるアイヌの末裔たちの側にもある。池田さんはいう。
    「簡単に写真など撮れない。それがわかって、とにかく理解することから始めました。東京にいるアイヌの人が里帰りするときに一緒についていったりしながら、人とのつながりをたどって通い始めました」

    最初はアイヌ文化の継承活動をしている人たちを訪ねていた。取材には比較的慣れている。だが、そうした人たちに会うだけではアイヌのことがわかったことにはならないと感じるように。

    撮らせてくれるのは皆アイヌであることをカミングアウトしている人たちだが、自分がアイヌであることへの思いは人それぞれであることも見えてきた。そして、民族衣装も着ず儀式にも参加しない、現代日本の生活者として普通に暮らすアイヌのほうが多数派であることも。

    「自分はカメラマンで、あなたを撮りたいというんですよ。でも、しばらくは撮りません。一緒に飲みに行ったり冗談を言い合えるような関係が築けたとき、タイミングを見てお願いしてみる。友達になって、その人の個性、生い立ち、仕事、趣味、悩みまで理解して許しをもらったとき、最初の1シャッターに集中します。なので、写真集に漕ぎつけるまでに11年もかかってしまいました」

    印象的な写真がある。上半身が裸の若い男性だ。濃い胸毛が印象的だが、体毛にフォーカスした写真は近年の社会的忖度のなかではタブーに近い。

    「彼は大の仲よしなんです。あるとき彼がふざけて、ヒロシ、俺の胸にはフェニックスがいるんだわ、といって見せてくれたんです。その堂々とした姿がかっこよくて撮らせてもらった1枚。彼の胸毛、不死鳥みたいな形で自慢なんですよ。最近は崩れてフクロウっぽくなってきたって笑うんですが」

    厩務員。農家。漁師。ハンター。木彫家。ミュージシャン。指に伝統のシヌイェ(イレズミ)を入れている女性…。花見。結婚式。卒業式。成人式。葬送…。カラオケでのデュエット姿もあれば、厳かなカムイノミ(神への祈り)の儀式もある。すべて現代アイヌの肖像だ。
    「僕はアイヌを通じて、人間社会はそもそも個の集まりなんだということを教えられました最近は多様性社会といった言葉がいわれるようになってきました。心を傷つけられてきた側からすれば、今ごろなんだという思いもあるはず。相互理解の基準は、あくまでアイヌの人々の側にあるべきだと思います」

    アイヌといえば漫画の『ゴールデンカムイ』が人気。若いアイヌの間にもファンが多いという。アイヌ新法が制定され、2020年には国立のアイヌ民族博物館も誕生する。池田さんは、自分の写真集がアイヌの今を理解するチャンネルのひとつに加わればうれしいと語る。

    池田宏プロフィール
    写真家。1981年佐賀県小城市生まれ。大阪外国語大学外国語学部スワヒリ語科卒。スタジオ勤務を経て2009年よりフリーランス。

    現代アイヌの肖像 池田宏写真展

    新たに撮り下ろされた写真とインタビューで構成された写真展。写真に添えられたひとつひとつのインタビューは短いものだが、印象深い言葉の数々が綴られている。ぜひ、足を運んで欲しい!

    2020年12月18日(金)〜2021年3月30日(火)
    会場/東京都人権プラザ1階企画展示室(東京都港区芝256 スクエアビル)
    時間/9時30分〜17時30分
    休館日/日曜日、年末年始(2020年12月24日(木)から2021年1月11日(月・祝)まで(予定))
    入場無料

     

    構成/鹿熊 勤 
    ※インタビュー記事はBE-PAL2019年5月号より転載。記事内容の情報は2019年5月時点のものです。

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