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後期の鮎釣り
鮎は1年で一生を全うする年魚です。幼魚の間を湖や河口付近の海で過ごし、春から夏にかけて川を遡上し、川底に繁茂するコケを食みながら急速に成長します。
急速な成長を遂げる鮎はシーズンの前半と後半ではまったく違う表情を見せ、最盛期では数釣りを楽しむことができます。シーズン後半になると、数は釣れないものの大きく成長した鮎を相手にダイナミックな釣りを楽しむことができるのです。
そこで今回、シーズン後半の9月に新潟県中部を流れる魚野川に鮎釣りに出かけました。
下流部の様子を見てみるも……

鮎は最盛期には河川上流の渓流域まで遡上しますが、晩秋の産卵を意識し始めた鮎は下流を目指し、ひと雨ごとに数kmずつ下るといわれています。シーズン後半の9月であれば、鮎釣りの主なフィールドは下流域。今回釣行した魚野川の鮎釣りフィールドでは最も下流部といえる小出地区にて、釣りに臨もうと計画しました。
しかし、現地に到着してみると川は残念ながら茶色に濁っていて、山間部で降った雨による濁り水がどこかの支流から入ってしまったようです。
上流部に大移動し釣りスタート

濁りを回避するため思い切って40分ほどクルマを走らせ、魚野川の中流部に位置する六日町地区に移動し、改めて釣りを始めることにしました。野鮎(野生の鮎)はコケが生えた川底の石に縄張りを持ち、侵入してくる他の鮎を追いかけて攻撃する習性があります。それを利用して、オトリ鮎を釣り人が操作し、野鮎を挑発して針に掛ける鮎釣り(友釣り)は、真夏に最盛期を迎えます。
シーズン前半、オトリ鮎を見慣れていない野鮎は素直な反応を見せ、非常に簡単に釣ることができますが、いくつものオトリ鮎を見てきた後期の野鮎は、違和感のあるオトリ鮎にはそうそう簡単に飛びついてきません。ここに野鮎がいそうという流れの筋にオトリ鮎を泳がせつつ、しばらく掛からない沈黙の時間をじっと我慢していると……。
手応えある野鮎の引き!

ビビビッ!という鮮烈なアタリがありました! 掛かった野鮎は川の流れに乗り強烈な引きを見せ、リールの無い鮎竿ではラインの送り出しもできないため、非常に手応えあるやり取りです。なんとか取り込んだ野鮎は、太く筋肉質な魚体でした。
釣れた野鮎を次のオトリ鮎とし、続けて同じ流れの筋に泳がせます。
テンポよく掛かるも……

購入した養殖もののオトリ鮎と違い、釣れたばかりの天然のオトリ鮎は野鮎を挑発しやすく、すぐさま2本目の野鮎が掛かりました。

さらに釣れた野鮎をオトリ鮎に替えて3本目の野鮎を釣ることができましたが、ここで思わぬトラブルが発生してしまいます。同じような流れの筋にオトリ鮎を泳がせていたところ、これまでの鮎とはまるで違う強烈なアタリがありました!

川の流れに乗り一気に下流へと泳いでいくその大物は、恐らく鮎ではない何かで、その場で抜き上げるのは不可能と咄嗟に感じ、追いかけるように川を下って対応しますが、惜しくも針が外れ逃がしてしまいました。
これによってオトリ鮎が弱ってしまったのか、はたまた周囲に警戒心を与えてしまったのか、コンスタントに続いていた野鮎のアタリがピタリと止まってしまいました。
気難しい大型鮎の友釣り

アタリがなくなってしまったため、歩いて行ける範囲で移動して広い範囲を探ってみましたが、続けて野鮎を釣り上げることはできませんでした。最盛期であれば30尾や40尾の釣果も珍しくない鮎釣りですが、後期の鮎たちは気難しく、少しでも警戒心を与えてしまったり弱ったオトリを使用したりすると、まるで掛からなくなってしまうようです。
今回の3尾という釣果は少し物足りなさを感じましたが、代わりに鮎の大きさという面では満足のいく釣行となりました。
しかし……ひとつ心残りが。それは不意の大物を逃がして正体不明のまま終わってしまったことです。一瞬水面から飛び出た魚体から恐らく40cm超の岩魚と思われ、鮎釣りでは外道(狙いの魚ではないこと)ですが、渓流魚も好きな私にとっては非常に惜しい相手でした。
常にそのような外道に備えるのは本末転倒といえなくもないですが、不意の大物にも対応できる余裕をもって釣りに臨みたいと感じた釣行でした。
最後に
いよいよシーズン最終盤となる鮎釣りですが、地域によっては10月いっぱい楽しめるところもあります。禁漁期間や遊漁券を購入するといったルールを守り、強烈な引きを味わえる後期の鮎釣りに挑戦してみてはいかがでしょうか?