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2024.09.28

我が人生の宝 熊本・天草の波について

我が人生の宝 熊本・天草の波について
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サーファーでシンガーソングライターの東田トモヒロさんの不定期エッセイ。今回は地元熊本でのサーフィンのお話です。

熊本サーファーのルーティーン

暑かった夏も少しずつ遠ざかりね、秋の気配が風の中に漂う今日この頃、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
僕はチェット・ベイカーの晩年の作品を小さめの音量で聴きながら、特別な喜びを胸に文章をしたためております。何が特別かって?それはね、ようやく我が地元熊本の天草でのサーフィンについてお話しできる機会に恵まれたからであります、はい。

サーファー

天草の海を楽しむ東田トモヒロ。

とある夏の平日に、久しぶりに天草の波を心ゆくまで楽しめた日があったのでご報告します。20年以上前の話になりますが、僕が初めてサーフィンを体験した海は、友人に連れて行ってもらった宮崎は日向市にある金ヶ浜というビーチでした。

熊本に住む多くのサーファー達において、主たるゲレンデは当然のことのように波のコンディションが安定している太平洋側の聖地、お隣の宮崎の海になります。ですから熊本のサーファーにとって波乗りは、毎回ちょっとした越境的サーフトリップになるのです。

朝一番の海に入りたい場合は、夜中の3時ごろに家を出て、2時間半ほどかけて宮崎の海を目指します。そして1ラウンドサーフィンしたらね、御多分に漏れずチキン南蛮定食を近くの食堂に求めつつ休憩して、午後からもう1ラウンド。

夕方帰宅の途につき晩ご飯時に自宅に戻るみたいな、そんなルーティンが僕らにとっては一般的です。そして我々の立場はいつでも純度100パーセントのビジターです。それは宮崎のローカルサーファーの方々を最大限尊重すべき立ち位置であることを意味します。

夕日と海と仲間

海から上がり、東シナ海の夕日に照らされる仲間たち。

しかしながらこのルーティンを根本から覆し、真夜中自宅でサーフボードを積んだ車のハンドルを逆サイドに切らせてくれる存在が、東シナ海を湛える「天草の海」なわけです。

県内とはいえ熊本市からだと天草のサーフポイントまでたどり着くためには、宮崎のそれと同じくらいの時間を必要としますし、天草在住のリアルローカルサーファーの方々の存在が優先されるべきですから似たような部分もあるのですが。それでも同じ県内であるという居心地の良さや安心感がね、なんとなくあるのです、僕らにとって天草の海には。

静かに大切に守られてほしい至宝のサーフエリア

以前五島列島のお話をした回で東シナ海の波について語らせていただきましたが、天草もまさしくあの通り。九州にかかる梅雨前線に吹き込む南西の風によってウネリが生まれ、普段は割と穏やかな沿岸部に、サーフィンにも適した波が現れるというストラクチャーになっています。

それとはまた別種で、台風が東シナ海側を上手いこと北上、あるいはより西へと進み、中国大陸方面に抜けてゆくタイミングでもやはり南西のウネリがもたらされます。この時のね、この台風のウネリのキャッチ具合が結構ヤバいことになるんです、波のクオリティが。

ただ、これってほんとに波を当てるのが難しいのですよ、現地から離れた所に住む者にとっては特に。たとえ熊本県内に住んでいたとしてもです、はい。

天草の海

台風のウネリでクローズアウト寸前の天草のポイント。

「この天気図ならばきっとまだ波あるだろうな」って思って行ってみると、到着する頃には波は終わってしまって、ローカルサーファーの友達に「昨日は波あったんだけどねー」とか言われたり。

逆にそろそろウネリが届いているだろうなと思って行ってみると、海面はシーンと静まりかえったままだったりね。まるで不用意なタイミングで上司から親父ギャグを浴びせられた新入社員のように。

幻のような僻地の貴重な波である上にキャパシティも限られていますのでね、ここでは無責任に是非天草に波乗りに行ってみてくださいとはあえて申しません。どちらかといえばこのひっそりとしたこの幻のサーフエリアが、地元のサーファーを中心としてこれからも守られていく事を願いつつ記したいと思います、はい。

そのくらい僕にとっても思いの深いポイントなのです、天草って、なんせ阿蘇と同じように熊本の宝ですから。

海との付き合いで変化した自分自身の心持ち

宮崎の海に波があり、天草にも波がある。この場合僕はサイズが小さかったとしても迷う事なく天草を選ぶでしょう。天草市の南西部、そして苓北(れいほく)町あたりには、シークレット的なポイントも含めて僕らが大切に思っているサーフポイントが点在しています。

ネットやかつて発刊されていた全国のサーフポイントガイド雑誌などで情報は掲載されていると思いますが、ここでは今回も例によってポイント名は伏せさせていただきます。

とにかくね、海が綺麗なんです、天草のサーフポイントはどこも。近くに大きな街などがなく、近隣の山や森などにおいても昔からの自然の地形が残されていますから、水質やその透明度においては九州の海の中でもかなりレベルの高さを誇っていると思います。僕が天草を好む理由はまさにそこにあるのです。

天倉の海

天草の西海岸の海は場所によってはコバルトブルー。とても美しいのです。

サーフィンを始めて間もない頃は波だけを追いかけていましたが、いつからか僕はより美しい海も併せて求め始めていました。天草に波がある場合は、その海は両方を見事なまでに満たしてくれるのです。

余談ですが、ある時僕は自分が生活の中で流す水、例えば台所の排水口などを、海の入り口と捉えるようになりました。そして波乗りの時に入る海が少しでもきれいに保たれるようにと思い、ほとんどの洗剤を使わなくなったのです。食器ばかりでなく体や頭もお湯や水で洗いだけで済ませますし、衣類の洗濯においてもまた然り。

これはなんと言いますか、海のためにと勝手に一人で続けている運動みたいのものです。効果は期待できないかも知れませんが、海という友をなるべく傷つけないように、なんてね。

台風のウネリ到来、最高のコンディションに

さてさて今回は友人のミュージシャンでありサーファーのハンちゃんと、新曲の映像撮影も含めて天草を一日だけトリップしました。そしてなんとも幸運なことに、僕らが天草を旅した日、台風のウネリがバッチリ届いているではありませんか。

というわけで撮影はほどほどにね、僕らは自分たちにフィットするブレイクを探して、海沿いの道をひたすら走りました。と言いますかそもそもサーフトリップそれ自体をカメラにおさめる目的の撮影でしたので、最高のコンディションに恵まれたというわけなのです。

夜明け前から車を走らせて、ようやく到着して最初にチェックしたビーチブレイクには、台風らしいとても大きなウネリが入って来ていました。しかしサイズがデカすぎるのと、波の間隔が短いのでアウトに出るのが厳しそうに見えます。

海へ入る筆者

友人のミュージシャン、ハンちゃんと海に入ります。二人だけの貸し切り。

僕ら二人はミッドレングス以上のサイズのボードですから、大きすぎる波のビーチブレイクには不向きです。従って別のポイントを目指し、天草市の南西部から苓北エリアへ舵を切りました。

するとどうでしょう、たまたま誰も入っていない皆さんノーチェックのポイントで、クセはありそうな感じですがかなり良い波が割れているではありませんか。僕とハンちゃんは迷うことなく、早速ウエットスーツに着替えてパドルアウトしました。

沖合いに出てみると、印象としては岸辺で観察していた時よりも太いウネリが入って来ています。人がいなかった上に岸からだいぶ離れているところでブレイクしていた波だったので、遠目では気がつきませんでしたが。

これって波乗りあるあるとでも申しましょうか、入ってみると意外とデカいみたいな、そんなことがよく起こりますので気をつけなければなりません。ちっちゃく見えているけど、入ってみると意外といい波、みたいなね。

「ジン」とくる、台風のウネリ

それから台風のウネリの場合はほんの少しの時間の推移で、海の表情があっという間に変わってしまうのも要注意です。入った当初はおとなしめのミニチュアダックスフンドのような可愛らしい小波だったのが、1時間もしないうちにドーベルマンが如き荒々しいオーバーヘッドクラスの大波に変わってしまうってこともあるくらいです。

サーフィンを始めてまだ日が浅い方は、台風のウネリがポイントに入っている時は、ある程度安全性が保たれているエリアで、経験値の高い方と一緒にトライされる方が無難かと思います。

沖で波を待つ

波待ちの時間。海の上でサーフィンや音楽について語り合います。

話を戻しましょう。そのポイントでのサーフィンはロングライドができるような波ではなかったものの、しっかりとしたウネリに一定の緊張感を持ってチャージしつつ、広いフェイスを気持ちよく走ることができました。そして有難いことに僕ら二人の貸切りだったので、海の上でこれ以上無い開放感にどっぷりと浸ることができたのです。

波のボトムやフェイスを走る時、台風のウネリは他の風で生み出された波と比べて、パワーというか質感が全く違うと思います。

波に乗る筆者

サイズもパワーもなかなか手応えのある波でした。東田トモヒロライディング。

大自然の豪快なエネルギーが波の一本一本に凝縮されていてね、テイクオフした瞬間足元から伝わってくるなんとも言えない「ジン」とくる感触があるのです。そしてその感触は、しばらく自分の体に忘れ難い記憶として刻まれるのです。まるで名小説家が時々書き記す見事な比喩のように。

天草に来たら外せないもう一つの楽しみ

さて天草といえば豊富な海産物に恵まれた地域として愛されていますが、お昼ともなるとやはりここでしか味わえないものをお腹いっぱい頂きたくなります。それがサーフィンの後となればなおの事。僕がたまに訪ねるお店の一つ「幸寿司(さいわいずし)」 は、いつもそんな僕の心と体をフル満タンにしてくれるのです。

お店はイルカウォッチングでよく知られる天草市は五和町(いつわまち)の港のすぐ近くに立地しています。そして今回僕が迷う事なく注文したのが「大海老フライ定食」。いやほんと、お値段といい味といい、ありがとうございますをこちらから告げなければならないほどのパフォーマンスを堪能させていただきました。

お寿司屋さんなので、刺身や寿司のネタの鮮度とクオリティの高さは言うに及びません。今回の文中においてサーフポイントの名前は明かしませんが、ランチポイントは堂々と声高に発声させていただきます。ぜひ幸寿司で天草の海を感じてください。

ちなみに僕がこの世界において誰に憚る事なく大好物だと高らかに宣言できる2品、それがエビフライとアジフライです。それぞれタルタルソースがよく似合います。

つまりはタルタルソースが好きなのかも知れません。もっと言うとタルタルソースという音の響きの中には、人の食欲を刺激する言霊のようなものがあらかじめセットされているとしか思えません。

エビフライ定食

幸寿司のランチ。大海老フライの定食。

昼食後、束の間の休憩ののち僕らはもう一箇所、別のポイントでサーフィンを楽しみました。午後からはあいにく台風のウネリが強くなりすぎた上にオンショア(海風)もキツくなっていたので、どこのポイントも荒れ模様。しかしそんな中でもなんとか入れるところが見つかったのでね、せっかく来たからにはもう1ラウンドやりたいなと。

そのポイントでは数名のサーファーが入っていましたが、後から来たメンバーの中では僕が少しだけ先人を切った形で入水して、一本乗りました。すると少し入るのをためらっていた仲間や知人たちも、それを見て腰を上げたようで、気がつけば駐車場にいたほとんどみんなが海の上にいました。

美しい夕暮れ時の太陽の光が、まるで僕らのために用意された照明のように降り注いでいます。天草は西海岸ですのでね、うまくいけば水平線に沈んでゆく太陽を見ることができるのです。

仲間達も光に照らされて、キラキラとしたいい笑顔をしています。波乗りもさることながら、こんな光景を見たいから僕はこうしてなん年も天草に通っているのかも知れません。

 

今回のアウトドアにおすすめの一曲

東田トモヒロ「Everything」
天草をドライブする時は、僕の曲を聞いてください。熊本県産なので。

東田トモヒロNEWS

「FREE RIDE」が2024.8.28 Release!
キャリア20年を超えてますます精力的にライブ活動を続ける東田
トモヒロと 熊本を拠点に活躍するシンガーソングライターHandelicによる共作「FREE RIDE」。


サーフィンを愛する二人の極めてナチュラルなセッションによって生み出されたロックチューンは 音楽によって自由に解き放たれる魂を捉えた、爽快感あふれるナンバーに仕上がっている。
(なお本作は東田トモヒロパート以外はすべて Handelic により演奏とトラックメイキングが行われ さらにはミックス、マスタリング、ジャケットデザインなども Handelic による。)
こちらをチェック!
https://big-up.style/SmtWCDWyGc

Tomohiro Higashida Live in BALI 2024 2024.12.7(SAT) 
〜 LIVE Packages プラン詳細 〜
告知ポスター
【ライブ日時】2024年12月7日(土)18:00~ 開場18:30~ LIVE Start
☆ブッフェスタイルディナー付き☆ドリンクはキャッシュオンスタイルとなります。
【ライブ会場】 スミニャックエリアのレストランにて(滞在ヴィラ内)
【滞在先ヴィラ】ライブ会場となるスミニャックのヴィラに12/7~9 の2泊3日ご滞在となります。☆朝食付き☆専用バスルーム/トイレ、キッチン付き☆キングサイズまたはクイーンサイズベッド×1台
【参加費】US$ 350-含まれるものは以下となります。
・東田トモヒロ LIVE in Bali 参加費・ライブ時のディナー(ブッフェスタイル)・12月7日8日 2泊宿泊費(1名1室ご利用)・朝食2回分(ご滞在先のヴィラにて)
【ご留意事項】US$となるため、1US$=150円換算での52,500円にてお振込頂きます。・ライブ会場となる現地ヴィラ集合・解散のパッケージプランとなります。原則ヴィラまではご自身にてお越し頂きますが、送迎アレンジ等ご希望の場合は別途ご相談ください。2名1室またはご家族で宿泊ご希望の方は別途アレンジ可能ですのでご相談ください。(価格変動有り)
・ライブ会場、滞在先はスミニャク地区を予定しております。ヴィラ詳細につきましては、ご予約後に改めてご案内させて頂きます。

【お問合せ先】PLAY THE EARTH事務局
info@play-the-earth.com
03-5367-9343

Tomohiro Higashida LIVE in BALI 2024

東田 トモヒロさん

シンガーソングライター

1972年生まれ熊本市在住。ニューヨークでのレコーディングを経て2003年にメジャーデビュー。旅とサーフィン、スノーボーディングをこよなく愛し、そのオーガニックなサウンドを通して「LOVE&FREEDOM」を発信し続けるシンガーソングライター。

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