子どものポテンシャルを伸ばす!デジタル写真を活用した「自然写真絵本づくり」

2020.04.07

私が書きました!
ライター/カメラマン/編集者
藤川満

札幌の情報誌編集長を経て独立。現在は神戸と高知に拠点を設け、アウトドア・旅行・グルメなどをテーマに雑誌、Web等で取材、撮影、編集を行っている。四万十川・仁淀川をはじめとするカヌーキャンプ、六甲山でトレッキング後の茶屋酒などを楽しみとする。河原で適当に調理する手抜きキャンプ飯を得意とするが、なぜか「山メシの達人」としてTV出演もあり。

デジタル写真の特性を活かしたリアルなものづくり体験

デジカルカメラやスマートフォンの普及で、フィルム時代より写真は身近な存在になった。PCやスマートフォンを立ち上げれば、楽しかった思い出の一枚をいつでも見ることができ、簡単に誰とでもシェアできる。さらにある程度のスペックのプリンターを持っていれば、家庭でもすぐに写真をプリントできる。あるいはネット注文でポチッと済ませることだって可能だ。

そんなデジタル写真の特性を活かし、「自然写真絵本づくり」という手法で、子どもたちに自然や写真の魅力を伝える活動を続けているのが小寺卓矢さん。同氏は、北海道阿寒地方や東北地方の森を主題にした自然写真家としての顔を持つ一方で、「森のいのち」「だって春だもん」「いっしょだよ」(いずれもアリス館発行)などの著書がある写真絵本作家でもある。

小寺卓矢さん。1971年神奈川県生まれ。北海道芽室町在住。日大農獣医学部卒業後、カナダ、アラスカへと渡る。帰国後、北海道を拠点に写真家として活動を開始。雑誌等への作品発表のほか、個展やスライドショー、ワークショップを全国各地で開催している。https://photokodera.com/

小寺さんが主な撮影フィールドにしている北海道阿寒地方の森。「アカエゾマツ林のミズバショウ群落(雌阿寒岳山麓/6月)」(写真:小寺卓矢さん)

「自然写真絵本」とは、読んで字のごとく、絵ではなく自然の写真を使った絵本のこと。同氏が取り組む「自然写真絵本づくり」とは、参加者である子どもたち自らがデジタルカメラを手に撮影を行い、その写真を使って一編の物語をつくりあげるワークショップだ。私自身も同ワークショップに参加し、子どもたちの作品に触れ、何度も目からウロコのような体験をさせていただいている。今回はその詳しい内容を小寺さんの話と共にお伝えしたい。

小寺さんの主な著書である自然写真絵本(すべてアリス館発行)。「いっしょだよ」(左から3番目)は第59回青少年読書感想全国コンクール課題図書に選ばれている。

身近にある「当たり前の自然」を見つめ直す面白さ

カメラを持って自然の中を駆け回る子どもたち。何を撮るかは子どもの自由な発想に任せている。(写真:小寺卓矢さん)

「自然写真絵本の出版という経験から”自然の中で何かを感じ、それについて考え、自分なりに物語ってみること”の楽しさを実感しました。それを子どもたちとぜひ共有したかった」。2006年、自身初の自然写真絵本「森のいのち」の発表を通じ、ワークショップ開催の発想に至った小寺さん。それ以降現在に至るまで、北海道を中心に、東京、大阪はもとより四国、九州まで依頼があれば全国どこへでも駆けつけ、ワークショップを精力的に開催している。

参加対象は小学生が中心。ワークショップの流れとしては、子どもたちにカメラの基本操作のレクチャーした後、各自持参したデジタルカメラを手に身近な森林公園などに出て、自由に撮影してもらう。その後、撮った写真データを室内の会場でプリントアウト。画用紙に貼り付け、物語をつくっていく。

撮影に使用するのは、基本的に参加者が持参したデジタルカメラ。スマートフォンではなく「カメラで写真を撮る」ことで、撮影や写真と真摯に向き合う狙いもあるが、近年ではデジタルカメラを保有していない家庭も少なからずあるため、一部スマートフォンなどの携帯端末での参加も可能だ。

小寺さんから子どもたちに伝える撮影時のポイントのひとつは「じっくりゆっくり歩いて観察すること」。被写体を見つけたら夢中になってカメラを構える子どもたちの姿が印象的だ。(写真:小寺卓矢さん)

最近では、あえて自然が乏しい市街地を開催場所として選ぶことも少なくない。「身近な足元にある“当たり前の自然”に目を向けてみることの面白さもあります。それはつまり、”特別な自然の貴さ”だけでなく、”あまりに身近すぎて気がつかなかった自然の美しさに気づくきっかけ”にもなるのです」

時には同伴した親たちも写真絵本づくりに参加することも提案する。「大人が取り組むことにより、大人自身にとっても”自然と向き合う姿勢”、”感性や表現”、また”子どもが持つ可能性”について学ぶいい機会となっていますね」。

時には寝転がって被写体に接近!ワークショップの主な対象は小学生だが、保育園児や大人向けにアレンジして開催することもある。(写真:小寺卓矢さん)

「”映える写真”の撮り方などを指導することもありましたが、最近は、子どもたち自身がトライ&エラーで最適な撮影方法を見つけだすように促しています」

そんな思いから、子どもたちが小寺さんに撮影方法を質問することがあっても、あえて細かいアドバイスはしない。それでも子どもたちにとって”プロの自然写真家”との遭遇自体がおそらく人生初。その輝く表情から小寺さんとの触れ合いが刺激になっているのが見て取れる。

写真データの取捨選択が子どもの判断力や責任感を生み出す

撮影を終えたら室内の会場に戻り、小寺さんから配布された「アイディアシート」であらすじを考えていく。(写真:小寺卓矢さん)

ポイントとなるのは写真選び。約8pの絵本に仕上げるため、撮影した膨大な写真データの中から物語に則したものを7枚ほどに取捨選択するのだ。

「このプロセスは、”自分で判断する”、”判断の責任と結果を自分自身(の作品)が負うこと”に繋がります。“自ら捨てる”という実作業を経ることを通してこそ、その作品が子どもたち自身にとっての”真の作品”や”価値ある大切なもの”になるのです。またそれが”自己肯定・自己尊厳”の萌芽ともなりうることがわかってきました」

写真選びが終わり、それを画用紙に貼り付けたら、カラーマジックや色鉛筆などでセリフや文章を添え、物語を編んでいく。意外にも、ここまで来れば子どもたちは柔軟な発想力を発揮して、スムーズに作業を進める。

一方この段階で、頭から湯気を上げて苦悶し、なかなか筆を進められないのが一緒に参加した親たち。社会通念に凝り固まった脳ミソでの「物語づくり」は、かなりの難作業だ。さらに「下手な作品は見せられない」という見栄も邪魔する。そんな大人に対して、子どもたちの”自由な表現者”としてのポテンシャルが浮き彫りになるのも面白い。

子どもたちの作品。左から時計回りに「ふゆのきせつ」「雨っておもしろい」「自然」「こんちゅうの本」「ものしりな石」。タイトルを見るだけでも楽しそうな内容が伝わってくる。今回は個人情報の観点から消去しているが、作者名を入れることで「自分の作品」という意識付けにもなっている。

制作が終わると、希望者による発表に続き、全ての作品をテーブルなどに並べ参加者全員で閲覧する。ここで毎回恒例となるのが、会場のあちこちで上がる大人たちの驚きの声。大人では思いつかないアングルの写真や奇想天外な展開、あるいは大人顔負けの社会性を含ませたストーリーなどを目にすれば、まさに小寺さんの言う「大人自身の学び」に繋がっていることが分かる。子どもたちにとっても「作品を見てもらう」という行為は自信を深めることにもなる。

せっかくなのでここで一つの作品を紹介したい。タイトルは「広い森と小さな世界」。写真のクオリティの高さに驚かされ、その写真から連想した言葉選びが実に楽しい。

最後に小寺さんはこのワークショップについて次のように語ってくれた。「いまの子どもたちが置かれている社会状況を省みると、”自然にリアルに触れ、向き合うこと”、”内発的な動機や判断で何かに取り組み、何かを完成させてみること”、”身体や心を自らの意思で駆動させること”を経験する機会が、これからますます損なわれて行くのではないかという危機感もあります。だからこそこのワークショップが果たし得る役割はますます大きくなるのかなと思います」

なにもかもがデジタルで疑似体験できる時代だからこそ、それをうまく使いこなし、「自然に触れ、写真や紙を切り貼りし絵本をつくる」というアナログな作業が、子どもの成長にプラスになるのではないだろうか。

自然の中で子どもの写真を撮る人も多いだろう。せっかくならこの休日には、そのカメラを子どもたちに手渡し「自然写真絵本づくり」に取り組んでみてほしい。子どもも親も発見と成長を体験できるいい機会になるはずだ。

【2020年自然写真絵本づくりワークショップ開催予定】

6月27日(土)北海道帯広市
7月下旬〜8月上旬 北海道道北地方、帯広市など
8月30日(日)北海道旭川市
9月中下旬 広島県、岡山県、京都府など予定
11月中旬 宮城県石巻市

【2020年小寺卓矢さん写真展】

10月30日(金)〜11月23日(月・祝)東京都八王子市

※新型コロナウィルスの今後の状況によっては、開催日時が変更になる可能性があります。

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