
ファッションアイテムの定番「ジーンズ」。丈夫で耐久性にすぐれ、大切にすれば何年も履くことができます。せっかくなら正しいお手入れ方法を知って、より長く愛用しませんか?
国産ジーンズ発祥の地・岡山県の老舗メーカー『Johnbull(ジョンブル)』取締役副社長・菅野伸哉さんに、ジーンズと長く付き合うコツを教えていただきました。
長持ちさせたければ、こまめに洗おう
タテ糸をインディゴ染めの綿糸、ヨコ糸を未染色の綿糸で織った、綾織物「デニム」から仕立てられる「ジーンズ」。そのルーツは、ゴールドラッシュに沸く19世紀なかばのアメリカ西部で誕生した、労働者のための作業着です。
なかでも戦時中に作られた『Levi’s(リーバイス)』は非常に高値で、洗ってはいけないイメージもありますが……。ジーンズは、家庭で洗濯してもいいのでしょうか?

「もちろん! デニムの繊維は皮脂でダメージを受けてしまうので、基本的には2〜3回履いたら中性洗剤を使って洗濯機で洗うことをおすすめします。きれいな状態を保つと、10年、20年と、長く履き続けられますよ」(以下「」内、すべて『Johnbull(ジョンブル)』取締役副社長・菅野伸哉さん)

古い時代の希少なジーンズを洗ってはいけないという説が囁かれるのは、当時の状況を二度と再現できないから。
「デニムは色落ちへの堅牢度が低い素材です。それがよさであり、デメリットでもあるんですけれどね。
たとえば濃い色のジーンズは、履き込む中で、その人独自の個性が出るのがいちばんの魅力です。ただ、そこで生まれた唯一無二の色落ちが、洗濯によって全体的に薄れてボヤ〜ッとしてしまう。だから気に入った色落ちの状態を保ちたいのであれば、洗濯はなるべくしないほうがいいんです。でも、長く履き続けたければこまめに洗濯するほうがいい。履く方がジーンズに求める価値で、取り扱い方は変わります」
「ジーンズ」の洗い方
基本的には「こまめに洗う」ことが、ジーンズの長持ちの秘訣。生地が擦れにくく、色落ちも緩和できる「手洗い」もありますが、菅野さんのおすすめは洗濯機。「もとを辿れば作業着の、丈夫でラフなアイテムです。あまり気負いすぎないでください」。
用意するもの
・中性洗剤

「ドラッグストアなどで売っている、市販のものでOKです。蛍光漂白剤入りのものは避け、できれば無香料がいいですね。ジーンズは天然素材でできているので、なるべく香りもついていないほうが望ましいです」
・洗濯ネット

「色落ち、色移り、ジーンズの傷みを予防できるほか、ボタンが裏になることで洗濯機を傷つけてしまう可能性をなくします」
ジーンズの洗い方
1.ボタンとファスナーを閉める

「このひと手間で、洗濯中の型崩れや生地の傷つきを防ぎます」
2.そのまま裏返して洗濯ネットに入れる


「小さくたたみすぎると折りジワが増えてしまうので注意しましょう」
3.すすぎは1回、脱水はできる限り短い設定(1〜3分)で洗う

「通常モードで洗濯したら、すすぎは1回。シワを防ぐために1〜3分ほど脱水したらOKです」
4.裏返しで陰干しする

「洗濯が終わったらすぐに、叩きながらシワを伸ばしてから陰干しします。裏返したまま干すことで、日焼けがよりおさえられます。裾を上にして逆さに吊るすと、生地の重みでシワを伸ばすこともできますよ。
ちなみに冬場、ストーブの近くで衣類を乾かす方もいらっしゃいますが、ジーンズは避けてください。急激な乾燥で縮んでしまいます」
洗い上がりは……?

じゃん! 室内乾燥機も使って、ポケットの部分などもよーく乾かすこと半日。洗濯機で中性洗剤を使い、ぐるんぐるんと洗った結果がこちらです。
筆者がぱっと見る限り、洗う前より色落ちしたり、変にシワがよったりもしていない。
大切なジーンズを洗濯機で洗ってよいの?とソワソワしていたけれど、その心配は杞憂に終わったようです。
濡れたときの取り扱いに注意!
「デニムは色落ちへの堅牢度が低い素材」という菅野さんの言葉にもあるように、ジーンズは濡れたときの取り扱いに注意が必要です。とくに気を付けるべきシチュエーションは「洗濯」と「雨や汗などで濡れたとき」。注意すべきポイントは?
- 淡い色の衣類と一緒に洗わない
「ジーンズは履き込んでいても色落ちします。色移りを防ぐためにも、白をはじめとする淡い色の衣類と一緒に洗うのは避けましょう」
- 浸け置き洗いはしない
「長時間、水やお湯に浸けると色落ちの原因になります。洗濯する場合も、洗い終えたら時間を置かずに干すなど、なるべく濡れた状態は短時間ですませます」
- 部分洗いはしない
「泥跳ねやシミなど、部分的に汚れが気になるからと、そこだけ集中的に洗うと変に色落ちしてしまいます。洗う場合は全体を洗ってください。もし、絵の具や化学薬品などがついた場合は、クリーニング店に持ち込むとよいです」
- 雨や汗などで濡れたまましまわない
「梅雨時や夏場など、雨に濡れたり汗をかきやすいシチュエーションは、仕方がない。でも、濡れたまましまうと、色落ちだけでなく、カビや臭いの原因にもなります」
焚き火のにおいにも洗濯がベター

キャンプでジーンズを履くと、焚き火臭がつく場合がありますよね。その場合も、いわゆる消臭スプレーをかけるのはおすすめしない、とも。
「ジーンズは天然素材からできています。それもあって変質や変色の原因にならないとは言い切れないので、残念ながらおすすめはできないですね。
焚き火のにおいが気になる場合は、いつも通り洗濯機で洗ってみてください。それでも気になる場合は、クリーニング店を頼るのも手です」
保管は「吊るし」が理想的。長期保管の前は洗濯をしてから
ジーンズはたたみジワがつきやすいため、吊るし保管が理想的なのだとか。「長期でしまう際はもちろん、日頃からパンツハンガーやS字フックなどで吊るすことをおすすめします。もしスペースの都合などで難しい場合は、クルクルと巻くのもいいですよ」。

また、衣替えなどで長期間履かずに収納する場合は、一度洗ってからしまうこと。夏場にかいた汗や皮脂が残っていると、虫食いやカビの原因になるそうです。
「防虫剤を入れる場合は、直接ジーンズに触れないように。布に包んで置くか、吊るすタイプを使用します」
季節や性別、年齢を問わず、わたしたちの身近なアイテム「ジーンズ」。正しい洗い方や扱い方を知って、これからも長く愛用しましょう!








