47年でノグソ経験0! 編集 オーシタ(右)
ウォシュレットで洗い、ダブルエンボス加工の紙で拭きあげ続けて47年。「会社のトレペさえ使いたくない」とのたまうデリケートホールの主。
50年間ほぼすべての排泄をノグソ化! 糞土師 伊沢正名さん(左)
キノコの写真家として活動するうちに自然界のなかでの「分解者」の重要さに開眼。1974年に開始して以来、16,500回の排泄をノグソ化。
ノグソは自然の役に立つのだ
編集・オーシタ
聞くところによると、伊沢さんは50年間、ウンコを野山に返し続けているとか……!?
はい。きっかけは屎尿処理施設の建設反対運動を知ったことでした。自分はウンコをするのに、その処理施設が近くにできるのは嫌だなんて、身勝手ですよね。私は憤りましたが、そんな自分もトイレでウンコをしていた。そこで根本的な問題解決をはかるためにノグソを始めたのです。1974年に開始し、21世紀に入って24年間でトイレにしたのは、わずか17回!
糞土師・伊沢さん
編集・オーシタ
ほとんどノグソ!
ノグソをするために家の裏山を買い上げ、そこを「プープランド(POOP=ウンコ)」と名付けました。50年ノグソを続けるうちに、プープランドにはウンコを食べる虫や菌類などの分解者が増え、今では半月ほどでウンコが分解され、林は見違えるほど元気になりました。ところでオーシタさん、ふだんの生活のなかで、自然に良いことって何かしていますか?
糞土師・伊沢さん
編集・オーシタ
ゴミの分別とか節電?くらいでしょうか……。
そんなことよりもっと深く自然の役に立つ方法がある。それこそが、ノグソなんです。
糞土師・伊沢さん
編集・オーシタ
!? !? !?
考えてみてください。人が生み出す工業製品で自然の役に立つものがひとつでもありますか? 自然にとって、それらはゴミです。ところが、人が生み出すウンコはほかの生き物にとってごちそうです。「ヒトがつくりだすもっとも価値あるもの、それはウンコ。人間にできるもっとも尊い行為、それはノグソ」。私の座右の銘です。
糞土師・伊沢さん
編集・オーシタ
!!!
トイレに流したウンコは下水処理場で分解されますが、汚泥は燃やされて灰になり、最後はコンクリートに固められます。食べ物になって自分を生かしてくれた多くの生き物に対して、申し訳ないじゃないですか。私たちはほかの生き物の命を奪わずには生きられない。だからウンコの処理には責任がある。「食は権利。ウンコは責任。ノグソは命の返しかた」。これが私のもうひとつの座右の銘です。今後、真の共生社会を実現するうえで、命を循環の輪に返すのは大切だと思いませんか?
糞土師・伊沢さん
編集・オーシタ
はい。私も命を返します!
1 極上の尻ざわりを探せ!野外で葉っぱを調達!
トレペを持参したオーシタを葉っぱで制する伊沢さん。「漂白された紙はなかなか分解されない。今日から葉っぱで拭きましょう!
野外には紙以上に気持ちの良い葉っぱがたくさんありますよ!」
事故を防ぐ2枚重ね
肌ざわりは良いが1枚では心許ない場合は、別の葉っぱを裏当てにする。不幸な事故を未然に防げる。
NG!
葉っぱに穴が!?
枯れ葉もチェック!
生葉ではイマイチでも、枯れたあとに質感が向上するものもある。林床のほどよく湿った枯れ葉もチェックする。
糞土師の厳選ノグソギア
シロップ剤の入っていたスクリューボトルで水を携行。葉っぱは数日分を採集して保存し、ほどよく水気を抜いて尻ざわりをよくしておく。ハッカ油は虫除けがわりに使う。
2 スマート&ジェントリー!伊沢流インド式ノグソ法
まずは葉隠れ
周囲を確認できて、しゃがめば体が隠れる茂みを探す。
↓
浅く穴掘り
落ち葉をどかし、靴のつま先で5〜10㎝ほど掘り下げる。
↓
中心にDO!
人はしゃがむとかかとを結んだ線上に肛門がくる。中心を狙ってDO!
↓
葉っぱで拭きあげ
用意した葉っぱで残り物を拭きあげる。
↓
葉っぱで封
拭いた葉っぱはひらりと穴のなかへ。証拠を覆う。
↓
水と指で洗う
指先を軽く濡らしてから、指先に水を出して肛門を繰り返し洗う。
水洗が快適!
↓
枝で封印
土を寄せて覆土。枝で目印を立てて封印する。
おしりで感じた葉っぱ図鑑
【快!】
キウイ(左)
師匠推薦。葉裏の柔らかな毛が実直にブツをこそげ取る。安心感のある厚みもgood! 採集後しんなりすると最良。
ギンドロ(右)
師匠推薦。テラっと光る葉表に警戒するも、葉裏を見れば繊細な綿毛が密生。柔らかで湿りを帯びたベルベットが尻を愛撫。
【可】
ヨモギの仲間
「春のヨモギを束にしたものは一級品」とは師匠。しかし成長したヨモギはやわ尻にはややストロングだった。香りは爽やか。
【難】
ヤブミョウガ
柔らかで大判! と手にしてみたが、両面ともに滑らかすぎてブツをのばすばかり。拭いさるにはグリップ力も必要だと教わる。
【死!】
アレチウリ
特定外来種を「拭いて駆除!」と思ったが葉脈には棘が密生。危うく出口を荒地にするところだった。肛門デストロイヤー。
トイレの呪縛からの卒業!
講義後、初めてのノグソを敢行。「私は自然を祝福し、自然も私を祝福した」とオーシタ。
伊沢さんも登場。全国を巡回中!
本誌連載陣の関野吉晴さんが監督を務める映画『うんこと死体の復権』は、ウンコと死体を土に返す分解者たちに注目。分解の重要性をひもとき共生社会の可能性を問う。
さいごにオーシタより……
デビューに備え、映画『うんこと死体の復権』を観てイメージトレーニングをしました。ノグソと自然界の蜜月ぶりは必見!でも、伊沢さんや関野吉晴さんのノグソがドアップで何度も映り、熟成ノグソを食べ比べて感想を言い合うシーンは衝撃でした……。
※構成/藤原祥弘 撮影/矢島慎一
(BE-PAL 2024年10月号より)