Welcome back to SLC! 今年からアウトドアリテーラーショーがソルトレイクシティに戻ってきた。コロナ禍が落ち着いて心機一転、どんなギアが登場したのか覗いてみよう!
5年ぶりに米ソルトレイクシティで開催された、世界最大級アウトドアショーの注目ギアをリポート!
日本ではまだ正月気分が抜けきらない2023年1月10日〜12日の3日間にわたり、世界中のアウトドアブランドや関連企業が待ちに待った「アウトドアリテーラースノーショー(以下OR)」が開催された。
会場は、2020年1月まで使われていたユタ州ソルトレイクシティのダウンタウン中心部にあるソルトパレスコンベンションセンター。新たに26階建てという高層のホテルが併設され、遠目に見るとかなり新鮮なイメージだ。
昨年まで会場として使われていたコロラド・コンベンション・センターに比べるとかなり広い。また、フロアが上下階に分かれていないのでとても見やすくなり、出展社をはじめ、会場を訪れたバイヤーなどからの評判も上々。
今回のORはスノーショーとの併催ということもあり、キャンプギアの発表は多くなかったが、とにかく目立ったのは「持続可能性」をアピールするアイテムが多かったこと。これは数年前からの傾向ではあるが、今年は“爆増”した印象が強かった。
中でも、フットウェア関連ブランドの“持続可能性化”傾向が顕著で、シューズが丸ごと生分解性素材──というモデルも目白押し状態。
また、植物由来の「ミンソライト」やアルパカ繊維の「パカフィル」など、持続可能性を意識した新しいインサレーション素材も注目度が高い。ダウンの牙城は崩せないまでも、近い将来、ダウン以外のインサレーションを使った防寒着がスタンダードになっていきそうな、そんな勢いを感じた。
ちょっと変わった存在としては、プロダクト・オブ・ザ・イヤーを受賞した「ウールエイド」のメリノウール製絆創膏。たかが絆創膏なれど、4か月ほどで土中分解するというエコな機能性が高く評価された。
今回は、話題性のある注目アイテムを集めた「第5回エディターズ・チョイス」と、OR2日目に発表された「イノベーション・アワード」受賞アイテムに絞ってご紹介。
アワード受賞ギアのなかには、すでに日本でも発売されているモノもある。
興味があれば、ぜひ試して性能の素晴らしさを感じてほしい。
BE-PALが選んだ注目アイテムはこちら!
いまや持続可能性を追求したモノ作りは、アウトドア業界にとって必要不可欠。そんな課題に挑戦しているブランドを中心に、ユニークな発想から生まれたギアをご紹介。
唐綿を原料とした新保温材を提案
MONARCH FLYWAY/MinsoLite INSULATED CLOTHING
中空で断熱性に優れた唐綿繊維の研究から生まれた、まったく新しい衣類用インサレーション「ミンソライト」。化繊綿20%を含むものの、合成廃棄物を88%以上削減できるという。現在ブランドパートナーを募集中!
どこでも手軽に味わえる極上コーヒー
STEEPED COFFEE×PEAK STATE/Guatemala Medium Roast
完全に堆肥化するティーバッグ式コーヒーで、アウトドアでも湯さえあれば手軽にコーヒーがいれられる。今回受賞したのは、とくに免疫力を高める効果をもつキノコをブレンドしたフレーバーだ。
植物由来素材100%のスニーカー
SANÜK/VEG OUT
アッパーはヘンプとコットンのブレンドで、フットベッドはジュート製、さらにコルクと天然ゴムを用いたアウトソールを装備。環境への影響が少ない素材だけで作られている。
世界初の完全生分解性シューズ
BLUEVIEW/PACIFIC
6年以上を費やして開発したポリウレタンフォームをイン&アウトソールに、植物由来で機械編み可能なシューズアッパーを採用。どちらも完全に生分解する素材だ。
吸水システムで世界初のWリザーバー
MXXY OUTDOOR/CORE
1.5ℓと0.75ℓのリザーバーがあり、水と栄養補助飲料を同時に携行できるハイドレーションシステム。どちらを飲むか、あるいは2種を混合して飲むかも、ダイヤルで自在に操作できる。
長時間使用に対応するソーラー充電式
GARMIN/EDGE 1040 SOLAR
一度の充電で約35時間、ソーラー充電を使えばさらに10時間稼動する、ロングライド対応型のサイクルコンピューター。従来のように別付けバッテリーを使わずに、長距離ツーリングが楽しめる。
廃棄物ゼロを目指したフォーム素材
OrthoLite/Cirql
プラスチックフリーで、発泡プロセスはケミカルフリー、そしてリサイクル&堆肥化可能など、持続可能性と循環性を追求した新フォームが「Cirql」。目標は廃棄物ゼロのフットウェアだ。
話題を呼んだ革新的アイテムも紹介!
INNOVATION AWARD WINNER & FINALIST
ショー2日目に発表された今年のイノベーションアワード。29社のファイナリストから14社のギアや素材が選出された。その中から注目度の高いモノをピックアップした。
PRODUCT OF THE YEAR
世界初のメリノウール製絆創膏
Wool Aid/Adhesive Bandages
ニュージーランド生まれの山岳ガイド、ルーカス・スミスが開発。通気性が高いメリノウール生地はキズとその周囲の皮膚の湿気と温度調節を可能にし、低刺激性で肌にやさしいのが特徴だ。生地はイタリアで織られている。
土壌に放置したウールエイドの絆創膏(右)は、5か月後には見事消滅!
1 着につき20mものテープを削減
Jack Wolfskin/Tapeless Jacket
防水透湿素材を使ったウェアに付きものだったシームテープを使わずに作られたジャケット。もちろん防水、防風、透湿性を損なうことはなく、むしろ通気性は高まっている。テープが剥がれる心配がないので、製品寿命もアップ。
テープレス技術は通気性とソフトな着心地、耐久性、堅牢性をも高めてくれる。
ワイルドさ満点な野宿ギアが誕生!
BORN OUTDOOR/BADGER BED
かつてカウボーイが野宿するときに使っていた「ベッドロール」を現代風にアレンジしたギア。外側は耐久撥水加工の丈夫な素材が使われ、内部にはマットを固定するバンドを装備。寝袋ごと丸めて持ち運べる。
好みの一着がオーダーメイドできる!
MADE Apparel/Custom Made-to-Measure Hard Shell Jacket
色やサイズはもちろん、スタイル、素材やジッパーの種類、溶着かシームか…などのディテールまで指定できるサービス。試しにいろいろ設定してみたら8万円超! 少々高めだが、世界に1着だけのウェアが作れるのは魅力だ。
アルパカ繊維の中綿「パカフィル」
PAKA/PAKAFILL
南米ペルーへの旅でアルパカに魅了された自然愛好家クリス・コーディが創設。毛糸だけでなく、中綿として使えるパカフィルを開発して注目を集めた。アルパカ繊維は羊毛より暖かく、吸湿発散性に優れているという。
ダウンの半分のボリュームで、一般的な化繊インサレーションより圧倒的に暖かいという。
機内持ち込み、トランク収納可能!
SPLIT SKIS/Freetour
なんと、板を2分割できるスキー板が登場。分割すれば175㎝の板を約100㎝の長さで持ち運べるのだ。板を背負ってのハイクアップがとても楽になる。また、車のトランクにも収納できるので、"2分割式"のメリットは絶大だ。
業界初の持続可能な素材製
Opolis/Stoked Snow Goggles
rPET(リサイクルPET)を100%使用した特許出願中のStokedPlasticという、持続可能な素材を使用。捨てられたPETボトル10本で1個のスノーゴーグル(ストラップを含む)ができる。多層表面仕上げの偏光レンズ搭載。
医療レベルの高機能ベースレイヤー
Stoko/K1 Summit
タイツ内に約27mもの高強度ケーブルが埋め込まれ、ひざからふくらはぎをしっかりサポートしてくれる。しかも、着用時の状態に合わせたフィッティングができる。ケガ予防だけでなく、傷めたひざのサポートや安定性向上にも効果を発揮。
ウエスト後部にある2つのダイヤルで、左右の脚それぞれのサポート力を自分で調節できるようになっている。
「ゲレンデデビュー」支援ブーツ
FISCHER/TWO
大人用を小型化しただけの従来の子供用スキーブーツとは一線を画す仕様。ゲートルは正面中央が大きく開き、子供でも着脱が楽にできる。最適なフィット感が得られる構造で安全性、快適性に優れたモデルだ。
気軽に使えるコミュニケーションツールも続々!
最大1㎞の範囲で15人と接続可能
Cardo Systems/Packtalk Outdoor
トレッキングやカヌー、バイクなど、グループで活動するときのコミュニケーションに便利なインターコム(無線通信システム)。JBLの協力で実現したハイクオリティーな音質が自慢だ。
グループでの音声会話ができる!
Loose Cannon Systems/Milo
歪みの少ない6個のマイクと高度なノイズリダクション技術により、クリアなグループチャットを可能にした。特許取得済みの独自ネットワーク技術を搭載し、グループ内の全員が同時に話せる。
※構成/坂本りえ
(BE-PAL 2023年4月号より)