最終回となる今回は、大自然の神秘を感じられる神秘的な現象をご紹介します!
「澎湖藍(ポンフー・ブルー)」に異変?!
澎湖の海は、浅瀬のターコイズブルーから深海のコバルトブルーまで美しいグラデーションが形作られており、その美しさは「澎湖藍(ポンフー・ブルー)」と讃えられるほど。澎湖湾は台湾で唯一「世界で最も美しい湾クラブ」に加盟している湾であり、その美しさは折り紙つきです。
そんな澎湖の海で見られる、とても神秘的な現象が。それは5月頃から7月頃の満月の夜前後に起こるといわれています。普段はコバルトブルーの海が、この現象が起こると一面コーラルピンクに染まります。そう、「コーラル」ピンクに…もうおわかりでしょうか。
海がピンク色になる現象、それは「珊瑚の産卵」でした。一見、これは合成写真か?!と疑ってしまうほど、広範囲に広がる美しいピンク色。思わず見とれてしまいますが…じつはとっても生臭い!思わず心の中で「この色だったら、薔薇のようなフローラルな香りを連想しちゃうけどな…。完全に思ったのと違う」とつぶやいてしまいます。この現象が起こると、地元の人たちは視覚よりもまず嗅覚で気がつくんだそうですよ。あまりの生臭さに、地元の人たちはこの現象を「鯨の分娩」と呼んでいるとか…。
媽祖様のバースデイパーティー?
台湾で「航海守護の神」として知られている、非常に人気の高い神様がいます。その名は「媽祖」様。道教の神様です。
媽祖は、10世紀後半に福建省沿岸部に実在した女性だといわれています。中国福建省の莆田(ほでん)市に生まれた媽祖は幼い頃から特殊な力を持っており、成長してからは巫女として、海難事故から多くの人々を救ったそうです。この伝承が地方の船乗りの信仰を集め、媽祖は航海守護の神として各地で祀られるようになりました。
媽祖の誕生日は旧暦3月23日。さすがは実在した女性をモデルとしている神様だけあって、誕生日もずいぶん具体的ですね。そして珊瑚の産卵は、媽祖の誕生日(西暦にすると2024年は5月3日)頃から始まり、旧暦の5月末頃まで続きます。
産卵は夜に行われますが、夜の間に産み落とされた珊瑚の赤ちゃんによりピンク色になった海面を見ることができるのは、朝になってから。南からの海流に乗って陸地まで運ばれてくるので、澎湖諸島最南端の七美や澎湖本島の一部の地域などで見ることができます。天気に恵まれれば1週間程度は見られる現象なのだとか。
「媽祖の誕生日頃から見られる」と言い伝えられているところに、台湾での媽祖人気をひしひしと感じました。みんな媽祖のことが大好きなんだな~。
珊瑚の産卵、その幻想的な色合いは、海の女神である媽祖の誕生日を祝うバースデイパーティーなのかもしれません。
旧約聖書の世界を再現!?
海で見られる神秘的な現象をもうひとつ。それは澎湖本島の東部「奎壁山(クイビーシャン)」で見られる「モーセの海割り」といわれる現象です。
満潮時には海の中に沈んでいる道が、干潮が近づくにつれて海面に浮かびあがり、潮が引くと歩いて渡れるようになります。道の長さはなんと300m、幅は最大で6mにもなります。干潮の時間帯が近づくとともに海の形が変わり、やがて道となり人々が行き交う様子は、神々が作った絵巻物を見ているよう。
この現象、高見の見物だけではもったいない。私たちも渡ってみましょう。
足元の岩がごつごつしていてちょっと歩きにくい…でも「いまこの瞬間しか渡れない道」を渡っているという特別感が嬉しい。
完全に干潮になってしまってからではただの「広い道」になってしまうので、干潮の1時間ほど前に現地に行き、海が変化する様子をしかと見届けるのがおすすめです。
この現象は日本では「エンジェルロード」や「トンボロ現象」といわれており、香川県小豆島や静岡県西伊豆町などで見ることができます。ちなみに澎湖県と西伊豆町はこの現象がご縁で友好交流協定を締結しているので、奎壁山には西伊豆のトンボロ現象を紹介するパネルがあります。
静岡県出身者としては、台湾の離島でふるさとを身近に感じられるのは嬉しい限り。
北回帰線付近だから見える、大人気のあの星座
神秘的な現象は海だけではありません。空も見上げてみましょう。澎湖諸島のほぼ中央を、北回帰線が通っています。北回帰線に近い、もしくは北回帰線以南ということは、日本ではなかなか見られない、大人気のあの星座も見られますね…?そう、南十字星です。
澎湖諸島で南十字星が観察できる時期は4月中旬から6月中旬。最も観察に適しているのは最南端にある七美島ですが、南側の視界が開けていて夜間の照明がない場所であれば、澎湖本島でも南十字星を見ることができます。シリーズの2回目で紹介した澎湖本島のジェラートショップ「大菓葉義式手工氷淇淋(ダーグオイエ イーシー ショウゴンビンチーリン)」の目の前の海からも肉眼で見られるのだとか。
日本では天体ファンをして「一生に一度は見てみたい」と言わしめる、みんなの憧れの星座ですが、澎湖人にとっては「初夏になれば、そのへんの海の上に出てくるもの」ぐらいの感覚なのかも…。羨ましい!
言葉ができなくても安心!日本人ガイドの小林さん
今回の一連の旅は、澎湖にある「玫濲璃有限公司」にアレンジをお願いしました。私たちがお世話になったのは、澎湖在住5年目の日本人ガイド小林佳子(こばやしよしこ)さん。
澎湖本島に拠点を置く小林さんは、ポジティブさと物腰の柔らかさとホスピタリティあふれる対応で、日本人観光客の心をがっちり掴んでいます。現地在住者ならではの目線で見どころをおすすめしてくれます。そして澎湖諸島の各地に台湾人の友達がたくさんいるため、離島の交通手段の手配も任せて安心。
また、小林さんはマリンアクティビティが得意。せっかく澎湖まで来たのであれば、なにかマリンアクティビティを体験したい、でも言葉が不安…というときにはサポートをお願いすることができます。私がSUPを体験したときも、小林さんがSUP体験に同行して、きめ細かなサポートをしてくれました。
浜辺でのんびりしたいからおすすめのビーチを知りたい!という場合や、子供がまだ小さくてアクティビティはできないけれど、干潟で磯遊びがしたい!などという場合にも相談に乗ってもらえますよ。澎湖に行かれる際にはぜひ頼ってみては。
玫濲璃有限公司 https://www.instagram.com/penghu445/
以上、4回にわたり澎湖諸島の魅力をお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか。台湾本島からのアクセスが良く海もグルメも満喫でき、そして天文現象や地質学までも楽しめる。運がよければ珊瑚の産卵だって見られるかも。そんな島が澎湖諸島です。
まだまだ魅力は尽きませんが…、残りの魅力はぜひご自身の五感で確かめてみてくださいね!
静岡県出身。一児の母。民間企業、国際協力団体(北京駐在)などを経て、2013年から行政機関で勤務。2023年4月から台湾駐在。夫を日本に残し、「ワーママ駐在員」として小学生の息子と共に台湾で暮らしている。帰国時は主に静岡県内でキャンプ・グランピングを楽しんでいる。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員