「おりゃ!」ザシュッ。
打ち込む場所によって、しっかり入ったりあまり入らなかったり。もちろん相手は氷なので、カーンと跳ね返されることもしばしば。コツがいりますね。
そして半分過ぎたあたりに現れる、垂直のカベを前にかなりひるみます。
そりゃ、ひるみますよ。
恐る恐る足を蹴り込み、アイスアックスを打ち込んでみるも、垂直の壁なので力を入れにくい。自分の体重を支えているので精一杯。早々に気持ちが折れてしまい、恐怖感もあって
「降ろしてくださーい」
と降参の合図を送る。
しかし、降りる気になっていた私に「いやいや! いける!! 大丈夫! やれる!」
と意外な言葉が下から聞こえてきます。
ええええ~! 無理無理無理!! と叫んでみるも、
「いや大丈夫ですって!行けますって!」
と、降ろしてくれない!
ええ~、、、ええ~、、、。
ええい、わかったよもう! と半ばヤケクソで再チャレンジ。
ふたたびアイスアックスを打ち込み、氷を蹴りこむ! 何度か打ち込む場所を変えたりして、うまく入ったら次の一歩を出す。もう文字通り必死です! ロープで確保されているので滑ったりしても大丈夫にはなっていますが、脳内にすごい汗をかいている気分。もう食らいつくしかない!
握りしめたアイスアックスをグググググ・・・・と引き寄せ、また一歩進む!
「ナイスクライミーング!」下で見ていたみんなの声が聞こえます。なんだ、やれたじゃん! 登れたよ!!!
目の前がパーっと明るくなって、今まで味わったことのない種類の感動が、一気に登りの労苦と恐怖を洗い流します。
できないと思っていたさっきまでの自分の常識を軽々と打ち破ってくれた瞬間の気持ちよさ。もうなんとも言えません。
振り返るとすごい高度感です。
アイスクライミングは、クライミングの経験がなくても登山インストラクターのもとでチャレンジできますが、先にクライミングの経験をしておいた方が、よりアイスクライミングを楽しむゆとりができます。
今年の春~秋はクライミングにチャレンジして、冬のアイスデビューを目指してみるのもイイと思います! 赤岳鉱泉や岩根山荘など、人口壁のゲレンデでもセミナーやツアーがたくさん開催されていますのでチェックしてみましょう!
この日お世話になったのは・・・Kuri Adventures(クリアドベンチャース) https://www.kuri-adventures.com/
◎イラスト・写真・文/コタロー
旅行・冒険が好きなイラストレーター。長野県出身。ブログhttp://blog.livedoor.jp/kota1022/