タイの首都バンコクから北に80キロほどの場所にあるアユタヤーは、14世紀から18世紀頃まで、アユタヤー王国の都として隆盛を極めた街です。幾度にもわたるビルマ軍との戦いの後、多くの建造物や仏像は破壊されてしまいましたが、その栄華の名残は、今も街のあちこちに数多く残されています。
クメール様式のプラーンが印象的な寺院、ワット・ラーチャブーラナ。外壁の損傷が著しかったため、ここ数年の間、ずっと修復作業が続けられていましたが、ようやくその美しい姿を取り戻しました。アユタヤーには、このようなクメール様式のプラーンを持つ寺院が他にもたくさんあります。
アユタヤーでもっとも重要と考えられている寺院の一つ、ワット・マハータート。今残されているのは、レンガで造られていた建物や仏塔の基部と、ビルマ軍によって首を落とされた仏像など。頭部が残っている仏像は後に修復されたものです。
ワット・マハータートの境内には、ビルマ軍に切り落とされた後、長い年月を経るうちに木の根に深く取り込まれてしまった仏像の頭部があります。神秘的としか言いようのない奇跡のようなその姿は、今も多くの参拝者に篤く敬われています。
アユタヤー王朝の王室寺院、ワット・プラ・シー・サンペット。現在残されているのは、15世紀頃に造られたとされるスリランカ様式の3基の仏塔。それぞれの仏塔の中には、当時の王の遺骨が納められていると言われています。
ワット・ローカヤースッターは、全長約28メートルもある巨大な涅槃仏。1956年にタイ芸術局によって復元されました。どことなくおおらかなその佇まいは、悠久の時間の流れの中に身を置きながら、私たち人間の生き様を、そっと見守ってくださっているかのようでした。
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夕方6時頃にタイで撮影した写真だけで構成した写真展「Thailand 6 P.M.」が、東京・三鷹で現在開催中です。会期は5月27日(日)まで。ご興味をお持ちいただける方は、ぜひよろしくお願いします。
山本高樹 写真展「Thailand 6 P.M.」
太陽が西に傾き、昼間のうだるような暑さが消えて、暮れ色の空に夜のとばりが下りてくる頃。タイの街は、その素顔を僕たちに見せてくれる。ささやかな電球の灯りの下で交わされる笑顔と、にぎわいと、ちょっぴりの寂しさと。写真家・山本高樹が5度にわたる取材で撮影した作品を展示する写真展。
会期 2018年3月20日(火)〜5月27日(日)
会場 リトルスターレストラン
東京都三鷹市下連雀3-33-6 三京ユニオンビル3F
TEL 0422-45-3331 http://www.little-star.ws/
時間 12:00〜14:30、18:00〜23:00
定休 月曜日(臨時休業や貸切の日もあるため、同店のサイトをご確認ください)
料金 無料(会場が飲食店なので、オーダーをお願い致します)
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◎文/写真=山本高樹 Takaki Yamamoto
著述家・編集者・写真家。インド北部のラダック地方の取材がライフワーク。著書『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]』(雷鳥社)『ラダック ザンスカール スピティ 北インドのリトル・チベット[増補改訂版]』ほか多数。
http://ymtk.jp/ladakh/