https://www.bepal.net No.1アウトドア情報誌「ビーパル」が運営する公式情報メディア。おすすめのキャンプ場、キャンプ道具から、キャンピングカー、焚き火のコツ、野外料理、登山、自転車、サステイナブルな生活、DIY、防災の心得、フェス情報まで、自然と人生を楽しむための情報を毎日お届けします。小学館運営の公式サイトです。 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル Wed, 14 Jan 2026 23:00:00 +0000 https://www.bepal.net/wp-content/themes/bepal/assets/img/common/sitetitle.png 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル https://www.bepal.net <![CDATA[冬こそ温かい鍋料理!キャンプで楽しみたい鍋5選]]> https://www.bepal.net/archives/627617

鍋料理は冬キャンプの醍醐味

冬の鍋
加工済みの野菜を使えば鍋に入れるだけ。

冬のキャンプの大切なことといえば「いかに暖を取り、心地よい時間を過ごすか」です。食事は、身体の芯から温まる料理がおすすめ。冬は料理を作り終えた途端にすぐに冷めてしまうので、いつでもアツアツの温度で食べられるレシピが最適です。こうした冬の条件に適した料理の代表格が、鍋料理。キャンプ飯といえば焼き物が手頃で食べやすいですが、冬のアウトドアでは食材が寒さですぐに固くなってしまうので適していません。

鍋料理なら常に火にかけておけるため、スープは熱々のまま。鍋料理は、最後まで美味しさをキープできる最高の選択肢なのです。それに、キリッとした冬の世界で立ち上る湯気とグツグツという音は、冬キャンプならではの醍醐味。身体が熱を帯びていく感覚は唯一無二の感覚なのです。

冬こそ鍋料理の理由

みんなであったか鍋料理

グループやファミリーキャンプにおいて、一つの鍋を囲み会話を弾ませながら箸を進める時間は、フィールドという環境も相まって日常では味わえない一体感を生みます。ひとつの鍋からみんなで同じものを味わい、温まる感覚を共有できることが鍋料理の魅力。絆を深め、キャンプだからこそ得られる思い出を作るのに、鍋料理はおすすめのレシピです。

ソロでも楽しめる鍋料理

鍋の素
鍋の素は手軽で持ち運びやすい。

一人用の小さなクッカーを使った、ソロで楽しむ鍋もアリです。冬のソロキャンプでは、複数の料理を作るのは身体が上手く動かず手間がかかるので、工程はシンプルで短いものが最適です。鍋なら好きな具材を入れて煮込むだけなので、具材の準備さえできれば動かずに食事を楽しめます。また焚き火と同じく、鍋をぼんやり見つめながら突いて食べる時間は、冬キャンプならではです。

食材が豊富に持ち込める

冬のキャンプは、食材の管理が夏場に比べて圧倒的に楽です。クーラーボックスがまったく必要ないわけではありませんが、食材が傷むリスクが減るのが大きなポイント。夏場なら缶詰や乾燥食材など保存性の高いものも好まれますが、冬なら生の食材も積極的に持ち込めます(だからといって管理に気を抜いてはいけません!)。野菜も気温が低ければ豊富に持ち込めることが、鍋料理が冬キャンプにおすすめであることの理由でもあります。

新鮮な食材を鍋に入れ、旨味を最大限に引き出しましょう。

時短ですぐに身体が温まる

冬キャンプの課題はなんといっても、その寒さ。キャンプ場に到着し、設営を終える頃には身体が冷え切ってしまいテントで寝袋から出てこられない、なんてことも。凝った料理を作るとき、「寒い中で……」と思うと一苦労ですが、鍋なら食材を切って煮るだけ。 市販の「鍋の素」も活用すれば、味付けに失敗することもありません。火にかけてから短時間で完成し、一口食べれば内側からポカポカと温まる。この即効性こそが、冬キャンプにおける鍋のメリットです。

冬におすすめの鍋料理5選

豆乳鍋:なめらかで味わいでどんな食材にも

豆乳鍋
幅広い食材と合う。

食べやすい味付けで多くの食材と相性が良いのが豆乳鍋。冬キャンプで挑戦する鍋料理のひとつとして、おすすめしたいレシピです。和風から洋風までアレンジもしやすいので、好みの食材を入れて楽しめます。今回の豆乳鍋は、すぐに火が通って食べられる白菜などを中心に、お豆腐を入れてアツアツの鍋にしています。

ゆず塩鍋:独特の香りとさっぱりスープで食材の旨味を楽しむ

ゆず塩鍋
さっぱりして食べやすい。

柚子の香りで華やかな鍋を楽しめるのがゆず塩鍋です。さっぱりで食べやすく、かつ深い味わい鍋が完成します。個人的には鶏肉との相性が良く、つみれを入れるのがおすすめです。

坦々ごま鍋:辛味で身も心も温まる

坦々ごま鍋
程良い辛味で箸が止まらない。

濃厚な味わいと舌に感じる刺激が堪らないのが坦々ごま鍋です。個性のある食材との相性が良く、ニラやネギなどの香りが強いものに加え、餃子などを入れてみるのもアリです。グループで楽しむも良いですが、ソロで楽しむ鍋としても最適です。

カレー鍋:親しみある味で最後の一滴まで美味しい

カレー鍋
トロミで熱々が長持ち。

日本人なら誰でも親しみのあるカレーを鍋にしてみました。カレールーだけでも完成された味わいですが、ここにきのこ類を加えて旨味をプラスすると、より美味しいカレー鍋に仕上がります。具材はじゃがいもや人参などのカレーならではのものに加え、葉物を入れても。

シチュー鍋:パンや餅などアレンジ多彩の鍋料理

シチュー鍋
餅とシチューの相性は病みつきになるほど。

温かいシチューをずっと食べられたら。そんな願いを実現したのがシチュー鍋です。シチューで使う食材を使えば失敗することはなく、持ち込みやすいバケットと合わせれば、ずっと食べ続けていられます。ベーシックなシチュー鍋を楽しむのも良いですが、切り餅を加えて和風シチュー鍋にするもおすすめです。シチューが絡んだお餅は絶品です。

冬の鍋料理であったかキャンプを

冬のキャンプにおすすめの鍋料理は、寒さ対策だけでなく、料理を通して仲間との絆を深めたり、自然にゆっくり溶け込む時間を提供してくれます。キリッとした空気と透き通った景色の中で堪能する鍋料理。ぜひ挑戦してください。

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BE-PAL Wed, 14 Jan 2026 23:00:00 +0900
<![CDATA[“黒い賢者”ワタリガラス。アメリカのアウトドア好きに親しまれる神話の鳥とは?]]> https://www.bepal.net/archives/628982
知恵者として名高い「ワタリガラス(英名:Raven/Common Raven)」です。神話に登場し、アメリカのアウトドア好きの間では“黒い賢者”と表現されることもあります。

そこで今回は、ワタリガラスの魅力を4択クイズ形式でご紹介します。旅先でふわりと影が横切ったとき、ちょっと得意げになれる豆知識を楽しんでください!

【動物ドッキリクイズ・その34】 ワタリガラスがもっと好きになる4問です!

第1問 ワタリガラスが飛んでいるとき、尾羽の形が特徴的です。どんな形?

a) ふんわり丸いボール型
b) V字型のくさび形
c) まっすぐ一直線
d) ハート型

人の生活圏内で頻繁に見かける鳥に、ワタリガラスによく似た、カラス(英名:Crow)がいます。最も分かりやすい違いは体の大きさで、ワタリガラスの方が一回り大きく、カラスは少し小柄な印象です。ただ、実際のフィールドでこの2羽が並んで飛ぶ場面に出会うことは、なかなかありません。

そこでユタの空を黒い影が横切ったとき、見分けるヒントになるのが尾羽の形です。さて、ワタリガラスの尾羽は、どんな形をしているのでしょうか?

駐車場に立ち、がっしりした体と力強そうな足で、歩道を歩く人を静かに見つめるワタリガラス。

答えは「b)V字型のくさび形」。ワタリガラスの尾羽は、飛ぶときにアルファベットの「V」を少し開いたような、くさび形になります。今回は尾羽がはっきり映る写真を撮影することはできませんでしたが、知っておくと観察がぐっと楽しくなりますよ。

第2問 ワタリガラスが神話の中で“創造の神”として語られている文化は?

a) 北米の先住民文化
b) 日本の北アルプスの山岳信仰
c) エジプト文明
d) スイスの民話

神話とは、自然と向き合って生きてきた人々が、世界の成り立ちや出来事を物語として伝えてきたもの。ワタリガラスの神話も、研究者によって民俗学資料として残されています。さて、どの地域の文化でしょうか?

ユタ州モアブに広がるデッドホースポイント州立公園。太古から変わらない風景は、ワタリガラスが神話の中で特別な存在とされた理由を想像させる。

答えは「a)北米の先住民文化」。北米の先住民文化では、ワタリガラスは単なる鳥ではなく、世界の始まりにかかわる特別な存在として語られてきました。高い知能と大胆な行動力を持つワタリガラスが、光や火を人間にもたらしたという神話が残っています。

ずる賢く、ときに失敗もする。それでも一つひとつの行動が積み重なり、結果として世界の流れを変えていく。そんな姿がワタリガラスの創造の物語と重ねられているのです。

第3問 とても頭のいいワタリガラス。実際に観察された行動として正しいのは?

a) クルミを道路に落として、車に殻を割らせる
b) バーベキューの火を器用に起こす
c) 人間の長い会話を再現する
d) 旅人のリュックを背負って飛べるほど力持ち

ワタリガラスを含むカラス類が、都市環境に適応する中で身につけた、人間顔負けの知恵。そのちゃっかりした知恵とは何でしょうか?

道路標識の上に堂々ととまり、行き交う観光客を静かに見下ろすワタリガラス。

答えは「a)クルミを道路に落として、車に殻を割らせる」。ユタの荒野に立つ標識の上で身じろぎもせず、視線だけを動かしながら周囲を眺める姿。通り過ぎる人の流れを把握しているのか、それとも次の行動を考えているのか?その落ち着いたたたずまいは、ワタリガラスが「知恵者」と呼ばれてきた理由を、そっと伝えているようです。

第4問 ワタリガラスの代表的な“渋い鳴き声”はどれ?

a) ピョエー
b) グロッ、グロッ
c) チュルルル
d) ビビビビビ

日本でおなじみのカラスの「カーカー」という澄んだ声に対し、ワタリガラスの鳴き声は低く、喉の奥で転がるような響きです。さて、どんな鳴き声でしょう?

駐車場で見せた大きなあくびのようなしぐさ。喉の奥から声を出そうとしている瞬間かもしれない。

答えは「b)グロッ、グロッ」。ワタリガラスの鳴き声は、「グロッ」と低く、渋く落ち着いた響きです。ユタの荒野の静けさに響く低く濁った一声が、存在感を高めます。

ユタ州の市街地や農地など、人の生活圏内でよく見られるカラス。

今回ご紹介したワタリガラスを含むカラス類の知恵は、日本でも身近に感じられます。

私の故郷・沖縄のやんばるで、父が道路の真ん中で飛び立たないカラスに出会ったことがありました。様子を見ると、小さな缶詰の中身を食べている最中。父が車に戻ろうとした瞬間、そのカラスは飛び立ち、頭上から缶詰をぽとり……。食事を邪魔された仕返しだったのかもしれません。

ところで、最後のカラスの写真以外はすべて、以前BE-PAL.netでご紹介したモアブの旅で訪れた、デッドホースポイント州立公園で撮影したものです。

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赤い岩の大地がどこまでも続くこの場所では、ワタリガラスが風に乗って、悠々と上空を舞う姿に出会えることがあります。

日本から気軽に行ける場所ではありませんが、もし旅のバケットリストに「ユタ」が加わったなら、空を見上げてみてくださいね。黒い影が静かに横切ったとき、尾羽の形や低く響く声に目と耳を向けることで、荒野の風景が、より立体的に心に残るはずです。

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BE-PAL Wed, 14 Jan 2026 21:00:00 +0900
<![CDATA[松本明子さんが甲州市で山へ! キャンピングカー事業の活用術も公開]]> https://www.bepal.net/archives/619972

松本明子のアポなし軽キャン日記|第19回 頼まれてもいないけど、アムズの事務所大公開

レンタカー業の開業認可申請を行なうためには、事務所を設ける必要があります。場所も駐車場の位置が事務所から直線で2km以内、というルールがあるんです。
 
ではその事務所、レンタカー稼業にどれだけ必要か、というと、ほとんど必要ありません! 
 
アムズレンタカーでは、車の配車場所を事務所の近くの駐車場、もしくは事務所のある東京・杉並区の方南町駅、はたまた新宿駅西口付近の3か所と決めておりまして。受け渡しの際の注意事項から、返却時の料金のお支払いまで。すべて駐車場で完結できるんです。いまは、スマートフォン1台あればお会計までできちゃいますからね。
 
そうなると事務所は、業務部長の廣田さんがお客様の予約状況を管理したり、事務作業をする以外、自ずと倉庫の様相を呈してきます。アムズではキャンプ道具などのレンタルも行なっているので、その保管場所です。毎月赤字続きで、倉庫を別に借りる余裕なんてないのです。開業してもうすぐ4年になりますが、お客様で事務所にいらっしゃったのはひとりかふたり。それだって(以前書きましたが)、自称前職警察官のおじさんが、事務所行こう、行こうって食い下がるので、断わり切れずに案内しただけなんです。

事務所内、片付け禁止

 
今回は、そんな連載の中にもたびたび登場するアムズレンタカーの事務所を大公開! 私、松本が、リポーターに扮してお届けします。
 
玄関の扉を開けると、おーっと、なんの変哲もない、6畳1間のワンルームです! 冷蔵庫の横から飛び出ているのは、溜め込まれた段ボールや新聞紙。これが相談役青倉さんのいうところの、リスの溜め込みです!!
キッチンのシンクの縁には、小さくなった石鹸が何枚も重ねられています。これは何に使うのでしょうかーーー!! 棚の下には噂に聞く梱包用のプチプチが! 青倉さんの目を逃れて隠れていた模様です。
 
そして、1畳ほどの廊下の先が事務所です〜。まず目に入るのは、窓辺に並べられた真っ黒なペットボトル。決して水が腐ったわけではありません。“太陽光温水システム”で、ペットボトルを黒く塗って日光の光を吸収し、お湯を作ろうというわけです。これを車の掃除などに使います。松本明子のケチ道がここに生きているわけです!
 
壁はこれまた噂どおり、メモ用紙とホワイトボードで埋め尽くされております。パソコンの使い方から車両サイズ、近所のラーメン店の電話番号まで。大事なマニュアルがすべて手書きで集約されております! パソコンを立ち上げなくても予定が一目瞭然。アナログも捨てたものではありません!
 
壁の二面を占めているのはレンタルグッズです。布団からクーラーボックス、ファニチャー、ランタンまで山のように積み上げられております。廣田さんにお話を伺ってみましょう。

「いつもここからレンタル品を貸し出すのですか?」

「前の日に準備して、床に並べておきます。以前きれい好きな青倉さんが、出しておいたクーラーボックスを片付けてしまい、お客様に持っていくのを忘れる、ということがありました。車を運んでいる途中で気づいたので、何とか取りに戻って事なきを得ましたが、きれい好きも考えようだな、と思いました」

「なるほど〜。たしかに、物が見えるところにないと忘れてしまう松本と廣田さんには、厳しいかもしれませんね」

「はい。いつも松本さんと青倉さんは、捨てる捨てないで口喧嘩してます。いたちごっこです」
 
冬用のスタッドレスタイヤはソファの下に入れ、所在がわかるようにしてあったり、車の掃除グッズも、ベランダの一角にズラッと並べられております。これなら探し下手なふたりでも見失うことがありません。

「でも廣田さん、事務作業中に松本が話しかけると、“僕が考えてるときに話しかけないでください”って怒るそうですね」

「そうすると、ピンポンピンポンLINEが来て、なんだろうと思って見ると“廣田さんありがとう”って。明日の出発時間を送っておいたことへの返事なんですけど、目の前にいるのにLINEで送ってくるんです」
 
常に感謝してるってことです。

物であふれていようが 住めば都というもの

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廣田さんは出たり入ったりが基本、18時まで事務所番。芸能の仕事がないときはふたりで作業。

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駐車場の割れたコーンは、ガムテープを愛する廣田さんが補修。

元祖・ケチ道からのリス道

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温水器は黒いガムテープを貼っていたが、劣化するので黒ペンで塗ることに。段ボールは掃除したあと運転席の下に敷き、プチプチは割れ物を包むのに使う。

大事な情報はアナログ保存

レンタカーの予約情報はホワイトボードにバックアップを取る。予約時間や支払い方法などはノートに記載。

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重要事項が貼られたメモボード。PCの操作方法からキャンセル料、近所の行きつけの飲食店の電話番号まで。

隙間活用術、教えます!

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壁の二面は床から天井までレンタルグッズがぎっしり。大物は取り出しやすいよう上にしまい、小物はBOXに。

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室内の隙間という隙間が収納スペース。タイヤはソファ下、洗濯機の上はチャイルドシートの指定席。

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相談役の青倉さんが設定してくれ、スマホ決済が可能に。ちなみに廣田さん専用デスクは松本さんの息子のお下がり。

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山梨県甲州市の
小倉山に
登ってきました。

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小倉山の山頂にある展望台からは、南アルプスや甲府盆地のほか、晴れていれば富士山が見えるという。

●松本明子さんのレンタカー、オフィスアムズはこちら→https://officeams.com/

松本明子さん

まつもと・あきこ 1966年生まれ。香川県出身。 ’83年に歌手デビューし、『DAISUKI!』や『進め! 電波少年』などで元祖バラドルとしての地位を確立。2021年から軽キャンのレンタカー事業(オフィスアムズ)を始める。

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※構成/大石裕美 撮影/小倉雄一郎 写真提供/オフィス アムズ

(BE-PAL 2026年1月号より)

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BE-PAL Wed, 14 Jan 2026 10:00:00 +0900
<![CDATA[かつて日本中で獲られ、食されていたボラ。各地に残る漁法からボラを“食べる”歴史をひもとく]]> https://www.bepal.net/archives/627128
※江戸時代後期の浮世絵にはウドとともに描かれ、ボラが早春の食材だったことがわかる。初代歌川広重による「魚つくし」シリーズのひとつで「ぼらにうど」(1833年)。国立国会図書館所蔵

世界に広く生息するボラと粋な江戸の若い衆の関係とは?

ボラ(Mugil cephalus)という魚をご存知だろうか。ボラはボラ科に属する、やや大型になる魚で、世界の温帯から熱帯に分布する。とくに河口や内湾の汽水域に多く生息して、幼魚のうちはしばしば大群をなして川を遡上する。ブリやスズキと同じように、成長に伴って呼び名が変わる出世魚として知られる。

バングラディシュ・クルナの魚市場に並んだボラ。クルナは世界最大のマングローブ・シュンブルドンへの陸上からの入り口にあたり、ルプシャ川の河岸に位置する。

関東では大きくなるにつれてオボコから、イナッコ、スバシリ、イナ、ボラ、トドに呼び名が変わり、関西ではハクに始まって、オボコ、スバシリ、イナ、ボラ、トドと変化する。トドは、これ以上は大きくならないことから、「とどのつまり」、すなわち「行き着くところ」、「結局のところ」という慣用句の語源となった。

また、イナは、江戸時代に若い衆の青々とした月代(さかやき)の剃り跡をイナの青灰色でざらざらした背中に見立てて「いなせ」ということばの語源になった、あるいは若い衆が粋さをみせるために跳ね上げた髷のかたちをイナの背鰭に例えて「いなせ」になったという説もある。オボコは、子どもたちの幼い様子を示すことばの語源となり、「おぼこい」という形容詞にもなっている。

2025年5月2日、東京・品川区の目黒川河口部にボラの幼魚(イナ)の群れが遡上してきた。写真/品川区

このようにさまざまな表現の語源になっていることから、かつては多くのひとたちにとってとても身近な魚であったこと、また関東と関西で多少の違いがありながらも共通のことばで表現されることから、商品として流通していたことが示唆される。身近なメダカには5000個もの地方名が存在するが、それは商品として流通しなかったために共通語が必要でなかったからである。取り引きするには、互いに通じ合う統一名称が必須だ。

震災にも倒壊を免れた能登の袋網漁の櫓

穴水湾のボラ待ち櫓。江戸時代から伝わる漁法で、高さ7〜8mに丸太を組んで建てた櫓の上から、海底に張った袋網に入るボラの群れを見張る(石川県穴水町)。

かつては多くの河口や内湾で、ボラ漁がたいへん盛んであった。能登半島の穴水湾(石川県穴水町)では、春と秋の2回、ボラ待ち櫓(やぐら)を使った袋網漁が盛んであった。4月から梅雨のころには小ぶりだが大群でボラが回遊し、秋にはそれほど数が多くないが大きなボラがやってくる。魚の活動が盛んなナドキとよばれる時間帯になると見張りが櫓に上がって、ボラの群れがやってくるのをじっと待つ。ボラは敏感な魚で水面に影が映ると逃げてしまうので、静かに待たなければならない。

見張りが櫓の上からボラの群れが仕掛けておいた袋網に入ったのを確認して、海底に張った網の口を縛ってから網を引き上げて一網打尽にする。いまでも2012年に16年ぶりに櫓漁を復活させた松村政揮さん(昭和22年生まれ)たちの中居七浦七入会というグループがわずかに伝統漁法を伝えている。2024年正月に能登半島を襲った能登半島地震に、幸いにも3基のボラ待ち櫓は倒壊を免れたという。

夕陽百選に選ばれた香川県の海岸も、かつてはボラ漁で賑わった

仁尾の名所、父母ヶ浜(ちちぶがはま)。約1kmに渡り砂浜が続き、「日本の夕陽百選」にも選ばれた夕焼けの名所だ。写真/三豊市観光交流局 https://www.mitoyo-kanko.com

瀬戸内海でも燧灘に突き出る荘内半島の仁尾(香川県三豊市)では、戦前まで地曳網で冬場の寒ボラを捕っていた。冬場になると、仁尾と大蔦島、小蔦島に囲まれたマエカタとよばれる地先の漁場にボラが集まり始め、寒くなるほどに群れが大きくなり、3月の彼岸ごろにはいなくなる。その間、ボラの群れを散らさないように、この漁場は禁漁となり、船舶の侵入も禁止したという。

密漁を防ぐために番船に自炊道具を持ち込んで、昼夜監視を行っていた。地曳網は全長約1,200m、網地は木綿で細かい網目だった。動きの早いボラが網目を抜けないように工夫したとのこと。ちょうどよい時期に地曳網を入れ、4時間ほどかけて引き上げた。潮が満ちるまで網を曳き続けられるだけの広さと勾配のある砂浜が必要であり、最も適していたのが小蔦島の砂浜だったようだ。

淡路島に残る絵馬はボラ地曳網の歴史の長さを物語る

明治10(1877)年に出版された『大日本物産図会』に収められた淡路島の漁業。図はタイ漁。「天下の台所」大坂に近く、江戸時代には淡路島の漁業は大発展した。錦絵は3代目歌川広重による。兵庫県立歴史博物館蔵 https://rekihaku.pref.hyogo.lg.jp
淡路島・湊の湊口神社(兵庫県南あわじ市)。https://minatoguchijinja.or.jp

淡路島の湊(兵庫県南あわじ市)もボラ網漁の盛んな場所であった。三原川河口の近くには、速秋津比古神(はやあきつひこのかみ)と速秋津比売神(はやあきつひめのかみ)を主祭神とする湊口神社という延喜式内社がある。この神社には、天保5(1834)年に奉納された地曳網漁を描いた絵馬が残っている。

湊口神社に奉納された絵馬。ボラ漁の様子が描かれている(兵庫県南あわじ市)。
絵馬に描かれた地曳網。中央に見張り用の櫓がみえる(兵庫県南あわじ市)。
船上で手網をかまえる漁師の図(兵庫県南あわじ市)。
昭和30年代の淡路島での地曳網漁。写真/南あわじ市

いまでも県道25号・阿万福良湊線に沿って長大な海岸線が延びているが、かつてはこの浜でボラの地曳網漁が行われていたようだ。絵馬は退色がやや激しく、すべてが鮮明には見えるわけではないのだが、浜で網を曳くひとたちと見張り櫓のような構造物、そして船上で手網をかまえる漁師が読み取れる。ボラ漁の時期になると遠目が効くひとがボラの回遊を見張っていて、群れを見つけたらみんなに号令をかけて網を入れたと聞いた。

※特に表記のない写真は湯本貴和さんの撮影

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BE-PAL Wed, 14 Jan 2026 08:00:00 +0900
<![CDATA[カンヌ国際映画祭ノミネート作品も! 2026年必見の新作映画3選]]> https://www.bepal.net/archives/630140

CINEMA 01

山に暮らし、山と共に生きる。小屋番という生き方

『小屋番 八ヶ岳に生きる 劇場版』

(配給:KeyHolder Pictures) 
●監督・脚本/深澤慎也(TBS ACT)
●出演/菊池哲男(山岳写真家) 
●ナレーション/東野幸治、一双麻希 
●1/9~ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開

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ⒸTBS

多くの山小屋が点在する八ヶ岳。山を住処に、人と自然を守りながら、山と共に生きる者たちがいた――。

「TBSドキュメンタリー映画祭」で上映された作品に追加撮影、再編集を施した劇場版。登場するのは、さまざまな思いを抱えて小屋番として働く人びと。会社員を経て、「逃げ場は山しかない」と小屋番になった人、「山には興味がないけど、苔が好きで」と親から山小屋を継いで苔ガイドを続ける人、子育てとケアマネージャーをしながら山小屋を営む女性経営者。「この自然がなくなると、山小屋がある価値がなくなる」と自然を守る活動に取り組む人。彼らの姿を記録する。

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明け方2時起床、30㎏もの荷物を背負って山を登ること、えんえんと続く雪かき。水道もない山小屋での不便さのなか、自分の体と、共に働く仲間との助け合いで圧倒的な自然と対峙する日常を送る人びと。彼らに共通するのは、好きなことをして生きるからこその充実した顔。そして好きなもののために、高い志を持ってひたむきに働く姿。
 
山岳写真家が捉えた絶景に触れつつ、本当に大切なことを教えられた気になる。

CINEMA 02

大人って、子供? パパとその親友と2泊3日のキャンプ

『グッドワン』

(配給:スターキャットアルバトロス・フィルム)
●監督・脚本/インディア・ドナルドソン 
●出演/リリー・コリアス、ジェームズ・レグロス、 ダニー・マッカーシー 
●1/16~ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開

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©2024 Hey Bear LLC.

マンハッタンから車で約2時間、キャッツキル山地。17歳のサムは父とその友人とキャンプに。山を歩き、夜は焚き火を囲んだよもやま話。翌朝サムが姿を消す。
 
カンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)ノミネート作。性格が出る荷造り、焚き火を前に本音がこぼれること。キャンプの道程を追い、観客は大人をじっと見るサムの目と同化する。
 
未熟で弱くて矛盾に満ちた大人たちを前に、言葉にならないもやもやを抱くサム。思春期の揺らぎを、簡潔な表現ですくい上げる。

CINEMA 03

坊主頭の野球部員。キラキラとした記憶、理不尽な今と挫折

『郷』

(配給:マイウェイムービーズ、ポルトレ)
●監督・脚本/伊地知拓郎 
●出演/泉澤祐希(語り)、小川夏果、古矢航之介、阿部隼也、千歳ふみ 
●鹿児島ミッテ10にて先行公開中、1/9~新宿ピカデリーほか全国順次公開

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©郷2025

「夢を、見た。あのころ、何を感じていたか?」。先輩の理不尽なしごきに耐える野球部員。イチローの活躍をテレビで観ていたころ、友達と田んぼのあぜ道をチャリで駆け抜けていた――。
 
鹿児島の自然と人びと、誰かの記憶の断片みたいな美しい映像の連続から、表現は映画の定型を破壊して抽象化。感覚へダイレクトに届き、その記憶の断片が自分のそれであるかのような懐かしさを覚えることに。喪失と再生の物語、に簡単には収まらない。瞬間瞬間が奇跡みたいな映像詩。

※構成/浅見祥子

(BE-PAL 2026年2月号より)

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BE-PAL Wed, 14 Jan 2026 06:00:00 +0900