リビングには何足ものビーンブーツが並ぶ。まだ「メインハンティングシュー」と呼ばれていた頃のモデルだ。
アトリエの梁にはケルティ/タイオガやグレゴリー/カシンが下がる。’70年代後半のモデルだが今も現役だ。
氏の家には20年、30年と修理を繰り返しながら使っている道具がたくさんある。登山靴は何度もビブラムソールを張り替えたし、フィルソンのリュックは、革のハーネスがもげて本社で修理不能といわれたものを、仲間の革職人に頼んで直してもらった。
「こうやって手直ししながら使っていると、そのモノの仕組みというか、成り立ちがよくわかるんです。そしてそれがわかると自分とモノとの距離がぐっと縮まるんですよね。友情と同じです」
つがおかさんは道具を買うときには徹底的に吟味するというが、そのモノ選びの基準はなんだろう?
「うーん……。僕の場合は“絵になるかどうか”でしょうか。眺めていて気持ちのいいモノ、 思わず鉛筆を手にとって描きたくなるようなモノが好きですね。僕は最新の機能を備えているからといって何かを買うことはありません。一生付き合っていけるモノかどうかを見定めますね」
廊下にはヴィンテージのコールマンがさりげなく置かれていた。左は1941年製の「242B」、右は珍しいグリーンの「200A」。