今年は6月21日に夏至を迎えます。日の入りは遅く、夜明けの薄明は2時台に始まるこの季節、星空が見える時間は短くなりますが、寒くもなく暑くもなく、夜中の観察もしやすいですね。
夜明けがいちばん早い季節。早起きして夏のすばるを見よう
さて、春先から夜明けの惑星が見物でしたが、6月下旬は金星とすばる(プレアデス星団)のセットが見頃です。すばるは、おうし座に属しているので、冬の星というイメージがあるかもしれませんが、夏の夜明けのすばるもぜひ鑑賞してください。
さらに6月26には金星に細い月が接近します。月齢26の、逆三日月のかっこうです。これほど細いと、月の欠けた部分が薄ぼんやりと見えます。太陽光が地球に反射して、月の暗い部分を照らしているのです。地球照といいます。
肉眼より、カメラで撮影したようがはっきり見えるかもしれません。スマホのカメラで十分です。できれば三脚に据えて、撮影にトライしてみてください。白々としてきた東の空に、ギラギラと輝く金星、ぼんやりと地球照の見える月。さらに月の東側にはすばる。夜中の空では見られない幻想的な星空をご覧ください。
倍率7倍くらいの双眼鏡なら、金星と細い月、または、すばると月は同じ視野で見られるでしょう。ただ、すばると月と金星の3セットは入りきりません。
おすすめしたいのは、星座双眼鏡と呼ばれる低倍率の双眼鏡です。倍率は2〜3倍ですが、視野が20度〜30度もあります。通常の双眼鏡の視野は6〜7度ですから、ダントツに広いです。上の図の、すばる、月、金星、おうし座がすっぽり収まります。
3等星以下は見にくい町中で星座の線を結んでみたい、そんな希望を叶えてくれるのが星座望遠鏡です。価格も手頃なので、星空観測の入門用にも双眼鏡の入門にもおすすめです。
全天88星座が生まれて今年で100年
今年は星座が現在使われている「88星座」に統一されて100年目にあたります。
1922年に、天文学者たちの集まりである国際天文学連合の総会が開かれました。この時点では、地域によって、学者によって、数える星座はバラバラでした。もちろん、オリオン座やおおぐま座、しし座などの有名星座は共通していましたが、そうでない星座もたくさんありました。
なぜ、統一しなくてはならなかったかというと、星座は空の地図のような役割もあるからです。たとえば、「新星が、おうし座の方向に見つかった」というふうに位置を指し示すのに星座を用いるのが便利です。そのとき、おうし座のテリトリーが人によってバラバラだと困ったことになるわけです。そのため、星座の境界線をはっきり決めようということになり、星座を整理して、世界的に統一することになったのです。
このとき88星座に残れなかった星座もあります。しぶんぎ座流星群の名で残る「しぶんぎ座」も、却下されてしまった星座のひとつです。3大流星群の名をもちながら、現代では、うしかい座、ヘルクレス座、りゅう座に属しています。流星群は毎年来るのに存在しない、幻の星座です。
ねこ座という星座もありました。1922年以降は、うみへび座に吸収され、うみへびは全天でいちばんの面積を持つ、巨大な星座に成り上がっています。消えた星座、残されたけれど目立たない星座など、夜空に星座絵を広げてみるのも楽しいものです。
構成/佐藤恵菜