本誌はみ出し情報


「地球のうたを聴こう」番外編第3回スコットランド
ロバート・バーンズの夜
ヒースの丘
Photo by 廣瀬孝一
羊の内臓を使った伝統料理「ハギス」

ブレアソール蒸留所
の美女
 スコットランドの伝統料理にハギスという料理がある。
 羊の内臓(肝臓や心臓、肺など)をタマネギと一緒にミンチにし、それにオートミールと牛脂を加え、ソルト&ペッパーで味つけしたもの。これを羊の胃袋の中に詰めて、茹でて食べる。
 胃袋のままサーブされることはなく、中身を皿に盛り分け、マッシュド・ポテト、マッシュド・ターニップ(蕪の一種を茹でてつぶしたもの)を添えて出されることが多い。
 このハギスがシングル・モルトウイスキーにぴったりなのだ。ことにスモーキーなタイプのものがいい。
 スコットランド人にとって、ハギスは彼らのアイデンティティーをかたちづくる、特別な食べ物なのだ。

ラフロイグ蒸留所のポットスチル
熟成用の樽づくり

ブナハーベン蒸留所

20時間目の発酵槽
ウォッシュバック発酵槽
酒と女、そして祖国を愛した偉大な詩人
 酒と女を、そして、何よりスコットランドを愛したロバート・バーンズ(1759〜96)は、今もスコットランドの人たちから「国民詩人」として愛されていて、毎年、彼の誕生日である1月25日前後には、スコットランドの其処此処で、バーンズ・サパーと呼ばれる宴会(サパー)が開かれる。

バグパイプ&キルト
 バーンズは貧しい小作人の7人兄弟の長男として生まれ、幼い頃から父の農作業を手伝って育った。15歳のときに、初めて詩をつくったが、それは農作業を手伝いに来ていた女の子に捧げた恋のうただった。
 27歳で出版した処女詩集がヒット、翌年の2作目も好評を博し、一躍スコットランドの都・エジンバラの社交界で有名人になった。
 バーンズはイングランド人からは馬鹿にされていたスコットランドの言葉を堂々と使って、雄大な自然や日々の労働、恋愛、酒などをうたった。
 当時のスコットランドは、1707年にイングランドに併合され、バグパイプやキルトを着ることも禁じられ、人々の間にはイングランドに対する敗北主義的なコンプレックスが蔓延していた。そんな時代に、バーンズがスコットランド弁で詩をつくった意義はとても大きかった。
 バーンズの反抗と独立自尊の精神。それが、今も気骨ある人々から愛される理由だ。

花時計
エジンバラ・コックバーンストリート

エジンバラ城
エジンバラ・プリンセスストリート庭園
ハギスはコロッケの具のような懐かしい味

タリスカーを注ぐ

かきまぜる
 さて、そのバーンズ・サパー。
 メインの料理はバーンズが愛したハギス。飲み物はモルト・ウイスキー。
 ウイスキーを飲みながら、ハギスを食べ、飲み会に参加した人たちはバーンズの詩を次々と朗読していく。
 そして、サパーの締めはバーンズの『AULD LANG SYNE(遠き昔)』(日本では『蛍の光』として知られている)。過日、そのハギスを食べられる店を東京・南青山で発見した。
 その店は日赤通りにある「ヘルムズデール」
 マッシュド・ポテトとミンチをぐちゃぐちゃ混ぜて食すと、少年の日に母からいわれてポテトと玉葱とミンチでつくったコロッケの中身を食べているようで、スコットランドの食べ物なのになぜか懐かしい。
 店の人がハギスにシングルモルトのタリスカーを少し垂らしてくれた。タリスカー(スカイ島の酒)の塩味の効いたスモーキーさが、また、ハギスにぴったりなのだ。
 モツがミンチになって入っているので、クセのある味かと思われるかもしれないが、食べてみると意外に淡泊。プチプチ感とクリーミーさが混ざって、食感もいい。美味すぎて、おもわず2皿も食べてしまったほど。
 ぐちゃぐちゃ混ぜるというのも、韓国のビビンバやカレーライスのご飯とカレーを混ぜているようで、これがまた、たまらない。
 混ぜて食べるものは、どうしてこんなに美味いのだろう。文化というもの自体、いろんな要素が混ざり合ったものだからだろうか。

ヘルムズデール店内

ハギス
バーンズの詩にもなった、「国民食」
最後に、バーンズ・サパーでよく朗読されるバーンズの詩「ハギスのために」の一節を。
 


兵士の像
 正直なおまえの笑顔に幸いあれ!
 腸詰め一族の偉大な王よ、
 おまえはその連中の上にどっかと腰をおろしている、
 胃袋や腸や内臓の上に。
 おまえはおれの長い腕くらい
 長ったらしい食前の祈りにふさわしい立派な食べ物だ。
 
 皿せましとどっさりと山のように盛られているおまえ、
 おまえの尻はまるで遠くに見える山のようだ。
 おまえの焼き串、まさかのときには、
 粉挽き機の修繕に大活躍だ。
 やがて、おまえの毛穴から滴がしたたり落ちる、
 琥珀色の玉のような滴が。
 
 見ろ! 田舎者労働者がナイフをぬぐい、
 器用におまえを切り刻んでいく。
 切り込みを入れるたんびに、
 鮮やかな中身がどっとあふれ出る、
 まるでどこかの溝のように。
 そして、その時、おお、なんという神々しい姿か、 
 もうもうと湯気が立ちのぼり、なんという
 豪勢なことか。
 (中略)
 天使様、あなたが感謝の祈りをお望みなら、
 スコットランドに与えたまえ、ハギスを!

ヒースの草原
 

ベンネイビス山

湖に浮かぶ城

アイラ島・アスケイヴ港

ネス湖
番外編の番外編 おすすめの一枚

CD『ロバート・バーンズを想う』のエディ・リーダーが以前在籍していたフェアーグラウンド・アトラクションのCDが再発されています。ぜひ、ご一聴を!
■フェアーグラウンド・アトラクション
『ファースト・キッス』(BVCM37432)BMGファンハウス
膨全英2位になった1988年のアルバム。シングルでは「パーフェクト」が全英1位。エディ・リーダーの艶のあるヴォーカルとノスタルジックな香り漂うアコースティック・サウンド。'80年代を代表する名盤。
■フェアーグラウンドとは、町から町へと巡回する移動遊園地のこと。アトラクションとはその出し物や乗り物のこと。人々の共感を誘う手づくりエンターテインメント・バンドが、フェアーグラウンド・アトラクションだった。
『ファーストキッス』は、以下のサイトから購入できます。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00005EI0D/qid=1076244436/sr=1-6/ref=sr_1_10_6/250-2855890-7568246


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